第9話 巡る日曜日


 スケアクロウは人ではなくなったけれど、街の入り口で立ち続けた。それは人になる前と何も変わらなかった。


 そんなスケアクロウに、幼いお嬢さんは毎日毎日会いに来てくれた。


「もうお話はできないの?」

「もうあの笑顔を見せてはくれないの?」

「ねえ、スケアクロウ。声を聴かせて」


 お嬢さんの泣きそうな質問に、もうスケアクロウは心の中でしか答えてあげることが出来なかった。どれだけ返事を返しても、何一つお嬢さんには届かなかった。


 スケアクロウは、幼いお嬢さんにこんな悲しい顔をさせたくはなかった。いつものように笑っていてほしかった。それを伝えることは、やっぱり出来なかった。



 それでも会いに来続けてくれた幼いお嬢さんも、数えられないほどの日曜日がいくつもいくつも巡った頃には大人になった。あの綺麗な夕焼け色の髪は腰まで伸びて、それが風になびくのを見るのがスケアクロウは好きだった。


 好きになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る