第6話 夕焼色の髪


 スケアクロウは立ち続けた。スケアクロウが挨拶を返せるようになったので、最近はあまり呼ばれなくなっていた名前を口にしてくれる人が増えていった。


 嬉しかったけれど、スケアクロウはお嬢さんに会えないままだった。お嬢さんは街に帰って来なかった。


「こんにちは、スケアクロウ」

「こんにちは、クレアさん」


「おやスケアクロウ、君の声はとても綺麗なんだね」

「ありがとう、ロナウドおじさん」



 そんな日が何日も何日も続いた。



「ねえスケアクロウ知ってる? もうすぐ、新しくこの街に住む人が来るんだよ」


 街の少年と話していると、ちょうどその家族がやってきた。優しそうな夫妻と、大きな瞳の幼いお嬢さんだった。


 それはいつかの小さかったお嬢さんを見ているようだった。スケアクロウはとても驚いた。


「あなたスケアクロウっていうの? 素敵な名前ね!」


 スケアクロウは待ち続けているお嬢さんが好きだけれど、目の前にいるお嬢さんの夕焼け色した髪がとても綺麗だと思った。蜂蜜色の髪と同じくらい、綺麗だと思った。


「初めまして、お嬢さん。よろしくね」


 幼いお嬢さんは、それから毎日のようにスケアクロウに会いに来てくれた。夕焼け色の髪を揺らして、会いに来てくれた。スケアクロウに会うために来てくれるのは、幼いお嬢さんで二人目だった。

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