少女

エラはひとしきり泣いたあと、イバラが呼んだ少別の使用人の少女に連れられ、部屋を後にした。

「家族とは言わないのね。」

イバラはティーカップの片付けをしていたツキエに言った。

「…はい。家族ではありません。」

「どうして?私は家族でも当てはまると思うけど。」

イバラがそう言うと、ツキエは片付けていた手を止める。

「…そう言ってしまうと、それが正解になってしまうからです。」

ツキエは体制を整え、イバラを見る。

「家族というものに、正しい形などありません。…あってはならないのです。」

まるでそれは、ツキエ自身に言い聞かせるように放った言葉のようにイバラは思えた。

――

「おい」

部屋を出てしばらく廊下を歩いていると、先に前を歩いていた使用人の少女が話しかけてきた。振り返った少女は、まるで百合の花のように美しく、そして可憐だった。

しかし、可愛らしい容姿とは裏腹に、振り返った少女は冷たい表情をしている。

「お前名前は?」

「え?」

「え?じゃねぇよ。名前はつってんだろうが。耳ついてねぇのか。」

…少女は口が悪かった。

今の言葉は本当にあの少女が発した言葉なのかと疑ってしまうほどに口が悪かった。

驚きはしたが、エラは少女に名前を名乗る。しかし少女はと言うと、自分から名前を聞いてきたくせに「ふーん」と心底どうでも良さそうに返す。

エラは少女が機嫌が悪いのだと思い、自分なりに気を使ってそれ以上は何も言わなかった。


数分後、少女が案内したのは、先程エラが目を覚ましたあの部屋だった。

「今日からここがお前の部屋だ。」

改めて部屋を見ると、部屋には家具以外にもシャワールームなども完備されていて、まるでホテルの一室のようだった。

エラが部屋の探索をしていると、少女はエラにとある服を渡す。

「これは?」

「見りゃわかんだろ、制服だよ。これに着替えろ。」

少女が制服と言って渡した服は、子供用の燕尾服だった。燕尾服というより、執事服と言った方がイメージしやすいだろうか。エラは制服の事をよく分かっていなかったが、聞くとまた怒られてしまうのではないかと思い、何も言わずに受け取ることにした。

「俺は部屋にいるから今すぐそれに着替えてこい。…後、風呂入ってから着替えろよ…。その…なんというか…。」

少女は非常に言いにくそうにエラに言った。

少女が何を伝えたかったのか分かったエラは、羞恥心で顔を真っ赤にすると、そのままシャワールームへ向かった。

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宝石の捨て子 @tukky777

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