イバラ

意識を手放したエラは二日も眠っていた。

その間に、屋敷の人達が交代で眠っているエラの身の回りの世話をしていたらしい。

「交代?屋敷には二人以外にいるの?」

エラはこの部屋に着くまでにしばらく廊下を歩いたが、誰とも合わなかったため、この屋敷には二人しかいないと思っていた。

「えぇ。私たち以外にもこの屋敷にはいるわ。みんな、エラくんと歳の近い子供たちよ」

イバラは紅茶を一口飲むと、エラの質問に笑顔で答えた。

エラはツキエが用意した紅茶を飲んでいいのか分からずツキエに視線を移す。

ツキエはエラの視線に気付き、軽く会釈した。

エラは紅茶を口に含む。しかし、泥水しか飲んだことのないエラの体は、紅茶を受け付けることが出来ず、紅茶を吐いてしまった。

「ご、ごめんなさい!」

エラはシャツを脱ぎ、急いでテーブルに零れた紅茶を拭こうとする。イバラは「そんなことをしなくていい」と、シャツを脱ごうとするエラを止めた。

その間にツキエは雑巾を持ってきて、零れた紅茶を拭く。

エラの顔はだんだん真っ青になる。イバラはエラに「気にしなくていい」と言うと、エラに半分脱いでしまったシャツを着直すように言った。

しかし、エラは申し訳ない気持ちでいっぱいになり、余計に心を閉ざしてしまうのだった。

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