部屋には

エラは中を確認するため、部屋の扉を少しだけ開ける。中に人がいたらまずいので、慎重に音を立てないように息を止める。

隙間からかすかに見えるその部屋は、一言で言うと黒。テーブルからベットまで、全てにおいて黒としか言いようがなかった。

これまた真っ黒な椅子の上には、見覚えのある女性が優雅にティータイムをきめている。

彼女の隣にはクラシカルなメイド服を着た華奢な少女が静かに佇んでいた。

エラは「バレたらまずい」と部屋を後にしようとする。

しかし、今扉を閉めたら気付かれてしまう。エラはその場に動けずにいた。

「そんな所にいないで、こちらへいらっしゃい」

ティーカップを受け皿の上に置くと、女性は言った。隣にいる使用人と思わしき少女に言った訳ではなさそうだった。

女性はエラに言ったのだ。

エラは彼女の言葉に汗が吹き出て止まらない。この後予想されるいくつもの最悪な事態を想像して声が出ない。

エラは走って逃げようと一瞬だけ考えたが、エラにはそんな体力は残っていない。エラはここに来るまでまともな食事をとっておらず、本来の力が発揮できない。それに、走って逃げたとしても、この屋敷の間取りも何も分からないため、出口に行けるかどうかもわからない。まさに絶体絶命だ。エラは逃げることを諦め、扉を最後まで開け、女性の元へ歩いた。

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