一章【大帝国編】

episode6「不審者現る」

ディバイン

「ん?不審者?」


クリェス宰相

「えぇ、警備をしていた人が跡地でおかしな動きをしていたらしいその不審者を見かけていたその報告を聞きました」


昨日から彼女との交際が始まり、大分賑わいを魅せた頃、元貧民街―――通称「スラムロード跡地」と呼ばれていた場所に不審な男を見つけたと言う報告を受けた。


手元にある仕事を終らせて警備をしていた当時の担当の人に話を聞きに行くことにした。


ディバイン

「成程、それで後を付けていた訳か、それで何をやっていたか分かったか?」


スラウ警備隊リーダー

「いえ、入り口付近を背にしていたので何をしているかは・・・でも周りは何か怪しい資料が山積みになっていました」


警備隊のリーダーであるスラウさんに聞いた話だと―――


外套を着た男が古びた建物の中に入り、入り口を背に向けて"何か"を研究していたと言う。


山積みの怪しい資料を見てただ事ではないと思い、こうして俺の下に報告をした―――との事。


ディバイン

「・・・分かった。取り敢えず警備隊は活動出来る人達を跡地周辺で見張りをしてくれ、建物内には俺が直接出向く」


スラウ警備隊リーダー

「分かりました!おい、誰か手の空いている奴は居ないか?緊急だ、手伝え!」


話し合いを終えて早速警備隊をリーダー含む8人程を搔き集め、一組二人ずつに分かれて

例の跡地まで足を運んだ。


ディバイン

「(・・・お前達は此処で待機しておいてくれ!)」


俺が手でジェスチャーをし、警備隊が頷くと同時に不審者が逃げやすいとされるルートを数ヶ所を確保した。


俺は足音を絶てずに内部に入り、現場の2階に行った。


事前に音を遮断して消す【消音サイレント】と言った高度な魔法を無詠唱で放ちそのまま気付かれずに行った。


ディバイン

「(・・・ドア付近以外は壁で遮断・・・か。それなら・・・!)【拘束バインド】!」


俺は瞬時に魔法で拘束を無詠唱で発動し男を取り押さえた。


同時に消音サイレントを解除して相手の魔法を封じさせ、空間から縄を取り出して用意した。


捕まった男は一瞬の事で驚き、藻掻くも魔法で拘束されている為身動きが完全に封じられた。


????

「くそッ!このガキィッ!!!」


ディバイン

「仕事終了・・・っと」


瞬時に終わらせて捕まった男を連れて建物から去る。


ディバイン

「奴隷商に売って来い。この件に関しては自分が直接父上に伝える」


警備隊達

「はッ、承知しましたッ!」


敬礼する彼らに見送られながら城に戻り父上の居る書斎に入った。


先程あった事を話し、奴隷商に突き出して貰った事も話しておいた。


グラエル

「しかし・・・押収した物を見るに・・・何かを実験していたのか?」


ディバイン

「昔、父上が壊滅させたあの血盟団の関係者でしょうか・・・後日、奴隷商に赴いて話を聞こうかごうもんをと思います」


父上から了承を貰い、次の日の夜――――、


????

「(よし、難無く入れました・・・後は仲間を捕まえた例の皇子を―――いない?!)っ!」


全身黒尽くめの格好をした―――女に対して設置型の拘束魔法を発動させ、その場で捕まえた。


俺はそのまま覆面をはぎ取り―――顔が露わになったその女に聞く事にした。


ディバイン

「全く、深夜帯に夜這いとは・・・俺の体を許して良いのは婚約者だけなんだがなぁ?」


シェノン

「・・・・っ!!はっ・・・なっ・・・せっ!このっ!!」


少し卑猥な感じに縛っておいたため彼女が藻搔けば藻掻く程その紐は徐々に食い込み――やがてその女は動かなくなった。


その女は涙目になり


シェノン

「ごめんなさい」


ディバイン

「素直でよろしい。・・・・さて詳しい事は後で聞くとして―――」


魔法でギチギチに縛られた彼女の拘束を解き、帰らせた。


翌朝―――


ディバイン

「さてと・・・視察に行ってくると父上に伝えておいてくれ・・・あー、後―――」


侍女長のカンナは頷き


カンナ侍女長

「視察と言う名の奴隷商への訪問なら昨日連絡をしておいたのでそのまま入れて貰えます」


(ウチの使用人は皆優秀だな・・・・)


そんな事を思い、城をさっさと出て奴隷商へと足を運んだ。


奴隷商の商人は昔拷問マニアの一人だったらしく―――昨日運ばれたついでに情報を聞き出そうと色々やってくれたらしい。


ガヴォン奴隷商人

「―――と言う事で見ての通り一通り拷問しましたが皇子の望む結果にはなりませんでした。」


ディバイン

「そうか、それなら仕方無い、俺の魔法で少し探ってみる事にするよ」


俺はそう言って身動きの取れないその男の頭に触れて脳内の記憶を直接見させて貰う事にした。


男は20歳後半で昨日の夜に襲って来た女の相棒バディらしい。


二人はやはり例の犯罪者組織【血盟団けつめいだん】の元幹部だった。


血盟団の犯罪履歴は父上が20代の頃まで続いていた。


一人は少年少女を洗脳し、殺戮兵器として国を滅ぼそうとした事、一人一人が血を使った魔法を戦術とし、無関係な人々を襲い続けた事。


まぁ、父上の奮闘と騎士団の圧倒的な力により【血盟団】の活動を阻止―――言わば壊滅させたのだ。


当時の洗脳されていた子供等は皆、聖女様を含む聖職者の人達に洗脳が施された魔法の残滓を打ち消して貰い―――何事も無い、いつもの子供達に戻った。


覗き終えた俺は奴隷商に例の女の子を紹介した。


実は奴隷商に向かう前に跡地に潜んでいたのを見つけて確保し、連れて来たのだ。


ディバイン

「男の方を犯罪奴隷として売っておいてくれ。ついでにこの女を奴隷にしてから弟のプレゼントにする」


ガヴォン奴隷商人

「畏まりました。取り敢えず奴隷の首輪を付けさせますね」


奴隷の首輪、犯罪奴隷や借金奴隷用の腕輪とは違い、生活の支えにさせて貰う―――言わば性奴隷専用として作られたのがその首輪だ。


腕輪と同じだが首輪の方に魔法でもう一つ付与されてあり、一つは魔法並びに魔力の一生涯の封印。


そしてもう一つが―――性欲強制向上だ。


ディバイン

「―――ってな訳でロック、お前はこれから跡地の領主としてこの奴隷を連れて行ってくれ。善行を十年間キチンと積めば彼女の首輪は解かれて自由になるから」


ロック

「分かりました。兄上の御指名とあらば」


俺は一度お城に戻って父上と母上に事情を話し、性奴隷であるその女をロックに手渡しておいた。


領主として任せればより一層スラムロードを真新しい街として発展させてくれるだろうと思い、渡したのだ。


それに、例の女はやはり当時の生き残りで何かの秘薬を口にして若返ってあの姿で活動をしていたらしい。


ロック

「それじゃ・・・よろしく頼むよ、シェノン」


シェノン

「承りました。ご主人様」


二人は俺以外にも挨拶をして城を出た。


ディバイン

「さて・・・あとはカースだな・・・・」


俺の采配により希望に見合うご令嬢の写真を幾つか持ってカースの部屋に尋ねた。


カース

「―――むぅ、私に見合う人は中々居な―――ん?兄上、こちらのご家庭が気になるんですが・・・」


カースがそう言ってゆびしたのは―――とあるご令嬢の家族写真だ。


ディバイン

「どこが気になる?」


カース

「たしか・・・こちらのご家庭って姉が居ませんでした?自分と同い年ぐらいの」


カースの言う通り、その写真には姉とされる、あるご令嬢が写真には映って無かったのだ。


もしかすると―――


ディバイン

「カース、お前の手腕に任せる。やってきな」


俺がそう言うと、カースは頷きその場からさっさと走って行った。


結論から言おう。


その御家庭、虐待していました。


カース

「―――って事でヴィーナ嬢の新しいご家庭を探すのを手伝って貰ってもよろしいですか?」


ディバイン

「お安い御用だ」


カースはその御家庭に足を運び、その御令嬢と付き合わせていただく胸の返事をした。

すると―――やはり、その家庭は再婚家庭で彼女達は異母姉妹だったと言う。

父親は全くヴィーナ嬢に関心を持たず、逆に親子揃って蹴落としていたらしい。

今現在は城の牢屋に男女別に入れておいて貰った。


ディバイン

「―――ッてな事で君は新しいご家庭が見つかるまで暫くこのお城でゆっくりとしてくれ」


ヴィーナ

「有り難うございますディバイン殿下!」


彼女の涙ながらの感謝に乗じて自分の婚約者であるリーンと顔合わせをし、挨拶を交わしていた。


リーン

「このお菓子、実は―――」


ヴィーナ

「成程・・・!!」


なんだかんだ言って仲良くなっていった。


翌朝―――


リーン

「―――って事で彼女もいっしょにアレやらせて貰って良いかしら?」


ディバイン

「構わないよ、寧ろ頑張ってくれ」


俺はそう言って午後の準備をしている。


例の3人の公開裁判だからだ。


ディバイン

「さて、そろそろあそこに行くか」


俺はその足で公開裁判となる場所に足を運んで行った。

無論、例の御一家も一緒だ。


見物客A

「今から何が始まるんだ?」


見物客B

「お前知らないのか?ほら、例の御令嬢を虐めていた家族だよ」


結構な人だかりになり、そろそろ――――


ディバイン

「では・・・・アストロメダ伯爵家の公開裁判を開廷する!」

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