第33話:修学旅行終了

 自由行動も何事もなく(?)無事終えた。

 また夕食の時に起きた出来事と言えば、俊哉がスマフォで写真を撮り何か打ち込んでいたことだ。


「どうしたんですか?いきなり皆集めて写真を」

「あぁコレ?実はさ、シュウ達は修学旅行行けないから送ってやってんだよ」

「え?!陵應って修学旅行無いの?!」


 質問してきた司に答える俊哉。

 すると竹下が修学旅行が無い事に驚きの声を上げる。


「ありえねぇ・・・どんだけ野球漬けなんだよ」


 明輝弘も驚きを隠せない様だ。

 そんな話をしていると俊哉のスマフォに返信が届く。


「お。向こうからも自撮り写メ届いた」


 俊哉が画像を開くと秀二や他のメンバーの他に女子生徒達が各々ポーズを取りながら映された写真が出てきた。


「おー」

「スッゲェ、陵應の選手達だ」

「女子もいるんだな」

「陵應は女子野球部もあるからね」


 写メを見ながらワイワイと話す俊哉達。

 そして続けて送られてきた文章に俊哉は“クスリ”と笑う。


「“こっちは修学旅行行けないんじゃー!”って、知らんがな」


 笑いながら話す俊哉。

 だが俊哉は秀二から送られてきた写メを見て、ある意味で羨ましいなとも感じたのであった。


 こうして楽しい自由行動が終わり、残るは最終日のみとなる。

 最終日は小樽観光。

 小樽は港湾都市であり、ガラス工芸やオルゴール、また酒蔵などが有名だ。


 この日はお昼過ぎまで自由散策となり各自自由に見て回る事になった。


「さて、俺らも行こうか」

「あれ?トシは姫野や宮原とは良いのか?」

「あぁまぁ・・・今日は竹下達と回るよ」

「まぁいいけど」


 俊哉は竹下含む男子陣と一緒に行動をする事に。

 小樽運河を眺めながら散策していき、点在する土産屋を見て回る。

 彼らはガラス細工や小物等を見ていき、気に入ったものがあれが購入するなどする。


「このコップいいな」


 俊哉は手作り感満載のコップを手に取りながら呟く。

 すると俊哉の見ていたお店に、司、ハルナ、由美の3人が入ってくる。


「あ、ほらトシ君だよ司」

「う、うん。今は止めとこうよ?」

「何言ってんのよ?!こういう時にさり気無く話すのよ!」


 ハルナがそう言いながら司の背中をグイグイ押していく。

 司は困った表情をしながらズルズルと前に少しずつ進んでいくのを、由美が止めに入る。


「余り司を困らせてはダメですよパル」

「由美・・・」

「昨日散々遊んだので、今日はゆっくりしましょう」

「うーん・・・」

「そうです。それに・・・」


 由美がそう話しながらチラリと俊哉を見ると、すぐに目線もハルナに戻す。


「俊哉さんも、お疲れでしょうし」

「そうか・・・そうだよねぇ」


 ハルナは先ほどの由美の行動に何かを感じたのか、大人しく此処は退くことを選ぶ。


「まぁ今日は私たちで楽しみましょう」

「痛たた・・・強く叩き過ぎです」

「あはは ゴメンゴメン」


 バシバシと由美の背中を叩くハルナに、由美は静かに怒る。

 そんな彼女に笑いながら謝るハルナ。


(んー・・・さっきのチラ見・・・まさかねぇ・・・)


 そんな事を考えるハルナ。

 だが彼女は今はこれ以上の詮索は止める事にした。


(まぁ今日は最終日、楽しむとしますかね。これが終わってからかな?)



 楽しい時間もあっという間に過ぎていく。

 お昼も過ぎ、生徒らは集合時間となった。


「おいトシ早く早く。そろそろ帰るぞ」

「了解ー、今いくー」


 竹下が急ぎめに話し俊哉を急かす。

 俊哉も慌ててお店から出て集合場所である小樽運河にある駐車場へと向かう。


「俊哉さん!竹下さん!遅いですわよ?!」

「ゴメンー」


 すでに他の班のメンバーが揃っており、瑠奈が怒りながら俊哉と竹下に言うと2人は申し訳なさそうに謝る。

 集合時間ギリギリになるも無事全員が揃い生徒達はバスへと乗り込み、小樽の街を後にする。


 バスを走らせ目指すのは新千歳空港。

 ここから羽田空港まで飛行機で向かう。


「ああああああ・・・・」

「うるさいぞトシ・・・」


 先ほどのテンションから一気にどん底へと落ちる俊哉。

 竹下はため息を吐きながら俊哉を見る。


「よし竹下、帰りも頼む」

「ふざけるな。宮原とか姫野に頼め!」

「そ、そんなー!!」


 行きに手を握られた竹下にとっては御免被りたい。

 俊哉は絶望感に立たされているのを、ただ竹下は見ていることしかできない。


「頼むよ竹下ー」

「ウルセェ!何が好き好んで野郎と手をつがなきゃならんのだ!」

「ひぃん・・・!!」


 結局俊哉は、1人で涙目になりながらプルプルと震えながら飛行機の座席に座っていたそうな。



「はぁー、疲れたわねー」

「楽しかったけどねー」


 俊哉の前の座席に座っている明日香とマキがそんな話をする。

 この3泊4日の修学旅行、マキにとっても明日香にとっても良い思い出になっただろう。


「ホントあっという間よね・・・楽しい事って」

「そうだねぇ〜、でもさまだまだあるよ?夏になれば海にお祭りに花火!」

「あはは マキらしいわね」

「あー、バカにしてるでしょ」

「してないわよ。でもその前に、トシの夏大会でしょ?」

「そうだね・・・応援しなきゃね」

「そうよ あっという間よ?夏までは」

「だね・・・」


 この修学旅行が終わればすぐに夏の大会が始まる。

 俊哉達にとっては二度目の夏大会。

 今年は違うんだと言う事を見せたいと彼らは思っている。


「この為に、頑張ってきたもんね」

「ホントね。応援してあげなきゃね」

「うん」


 彼女達もまた、俊哉達のこの夏快進撃を期待する。


 そんな思いを乗せながらなのか、飛行機は羽田空港へと到着した。

 俊哉は放心状態で飛行機から降りフラフラと歩いていく。


「あはは・・・もう飛行機はいいや・・・」

「そうだなー」

「飛行機、俺、無理」

「片言になってるぞー。ほら荷物」


 コンベアに流れてきた荷物を待つ竹下と俊哉。

 流れてきた荷物を持ち俊哉達は指示された場所へと向かい集合。

 時間が経ち、気持ち的にも落ち着いてきた俊哉。


「はぁ・・・しんどかった」

「もう大丈夫なのか?」

「うん、一応ね・・・。」


 ハァッと大きく息を吐きながら竹下と話す俊哉。

 生徒達が自分の荷物を持ち準備が整うと、空港を後にする。

 電車を乗り継ぎ品川駅へ到着。

 そのまま新幹線へと乗り彼らは静岡駅へと向かう。


「すー・・・」

「・・・んが・・・」


 ここまでの疲れが一気にきたのか、生徒らは電車の中で爆睡。

 俊哉も新幹線の中で静岡駅に着くまでずっと寝ていた。


『間も無く、静岡、静岡です。お降りの方は・・・』

「んー・・・んあ?もう着く?」


 約1時間ほどで、静岡駅へと到着。

 車内アナウンスが流れると俊哉が目をこすりながら起きる。


「おう起きたかトシ」

「ふあぁぁ・・・もう着いたんだ」

「ずっと寝てたな」

「飛行機で寝れなかったからね」


 寝ぼけ眼のまま荷物を持ち席を立ち上がる俊哉。

 電車がゆっくりと停車しドアが開くと生徒達はゾロゾロと静岡駅のホームへと出ていく。

 俊哉達も流れに乗るように静岡駅のホームへと出て行き改札へと向かう。

 改札を出て大きな広間に生徒たちが整列しながら集まり、教師からの話を聞き此処で解散となる。


「じゃあ気をつけて帰れよー」

『はぁい』


 これにて解散となる。

 ワイワイと話しながらバラバラに散らばる生徒達。

 そのままバス停に向かい帰る生徒や、保護者が迎えにきている生徒など様々である。

 俊哉は自分で帰ることになっており、家が近いマキと明日香の3人で帰る。


「じゃあこれにて」

「おう。お疲れー」


 俊哉が手を振りながら話すと竹下も手を振り俊哉を見送る。

 また他の生徒らも見送っている。


「次は夏大会だな!」

「だな!」


 最後にカッコよく締めようと俊哉が言うと竹下もグッと親指を立てながら笑顔で答える。

 このままカッコよく去れば修学旅行が終わり!

 そんなイメージをしていたのだが、瑠奈の言葉によって崩される。


「その前に、期末テストですわよね?」

「・・・え?」

「え?」


 瑠奈のその言葉に、その場にいた一部の生徒達の時間が止まった。

 シンとなるその場に、瑠奈は“何かマズイこと言いました?”と隣の菫に聞くと、菫は肩を竦めながら首を横に振る。


「て、テスト・・・」

「そうですわよ?期末テスト」


「委員長ー、今それ言う?」

「はい?」

「瑠奈ちゃん、ダメだよその言葉は」

「俊哉さんまで・・・」


 やれやれといった表情を見せる俊哉と竹下。

 そして俊哉はフッと笑みを浮かべると、皆を見ながら言った。


「とりあえず、この件は次回以降にしようか」


 そう言い残し俊哉は帰って行った。

 楽しかった三泊四日の修学旅行。

 今は、ただただそれだけを考えながら帰るんだ。


 そう俊哉は心に念じていた。



(テスト・・・やだ〜!!!)


 これにて修学旅行終了。


 次回へ続く。

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