第28話:明日はよろしくね

 司達が会議をしている頃の男子部屋。

 俊哉、竹下、堀、内田、青木の部屋に山本が来ていた。


「あれ?明輝弘とヒデは?」

「あぁ。もう一度風呂行った」

「山本は行かんの?」

「あぁ。一度で良いかな。後朝に行きたい」


 そんな会話をする俊哉。

 そんな彼らはとう言うと、男だけで円を作りながらトランプをやっている。


「よっしゃ上がりー!!!」

「えぇー!!またかよウッチー!!」

「これで何回目だよー」


 トランプゲームが強い内田のもはや独壇場なのであろう。

 いち抜けした内田に悔しがる他のメンバー。

 そしてまた黙々とトランプをやっていくが、この空気を打ち破った者がいる。


「ねぇ、、、」

「次は負けないぞー」

「ねぇ!」

「な、何さ竹下」

「なんか虚しくない!?男子だけでトランプとか!何が楽しいの!?」

「えぇー?楽しいじゃん」

「楽しねぇよアホトシ!!」

「アホとは何だ!アホとは!!」


 ドッタンバッタンと大騒ぎをする俊哉と竹下。

 いつの間にか枕投げに発展しており部屋の中はメチャクチャだ。

 時間が過ぎ疲れてきた頃になると、我に帰る竹下と俊哉。


「よし」

「どうした?」

「恋バナしよう」

『は?』

「はい1人ずつ好きな子の名前言ってどうぞ!」

『は?』


 突然始まる次なる話題。

 トランプ、枕投げときて次は恋バナである。


「はいまずは青木!」

「三次元はいない!二次元なら幾らでもいる!!」

「はい次!ウッチー!!」

「このアイドルとこのアイドルとこのアイドルー!!」

「はい次!堀君!!」

「明日香ちゃんの裸体が見たいです!!触りたいとかじゃなく、見る感じで。そう、もう隅々までこう、、、」

「はい変態!!次、岡本!!」

「山本だよ!!」


 テンポよく話を進め、山本のツッコミオチが着いた所で話が一旦途切れる。


「はぁテンポ良かったのに空気読めよ山本」

「俺のせいかよ・・・」

「んで、好きな人いるの?」

「はぁ?別に俺はそう言うの興味ないし。野球してれば良いしな。そもそも・・・」

「うわぁー。いるよねこう言うヤツ」

「いるいる。自分興味ないアピールしといて、実は一番興味あるヤツね」


 山本の話に内田と青木が話す。


「はぁ?!」


 そんな2人に山本は反論するが、青木と内田は笑いながら聞き流す。


「ほれ言えよ山本。ぶっちゃけ誰が好きなのよ?」

「言った方が楽だよ??楽になっちゃいなよ?」


 竹下と俊哉が山本に詰め寄る。

ジリジリと追い詰められる山本は、持たなくなったのか口を開いた。


「さ、、、」

『さ?』

「さ、、、」

『さ??』

「早乙女だよ、、、」


 山本の答えに一瞬時が止まった。


「早乙女って、、、ハルナちゃん?」

「そ、そうだ。」


 俊哉の問いに山本はコクリと頷き答える。

 すると俊哉はプッと吹き出す。


「くっ、、ふふっ!」

「な何笑ってんだ!!」

「いや、なんか。山本そう言う趣味あるんだと思ってさ。いや別にハルナちゃんがダメな訳じゃあないけど。山本はもっと痩せ型の子かと思ってさ、、、くくっ?」

「あぁもう!言うんじゃ無かった!!」


 憤慨する山本に俊哉は笑い転げる。

 まさか自分の知り合いとは思っても見なかった俊哉。


「ま、まぁ良いんじゃない?言えば?」

「まぁ、、、そのうちな」


 その言葉に男子たちは思った。


(あ、ダメかなコイツ)


 だが誰1人として、決して口には出さなかったのだ。


「さて後はトシだな」

「あれ?竹下は?」

「俺は彼女がいるから問題ない」

「マジかよ、、、」

「そうだ俊哉!お前はどうなんだコラァ!!」


 竹下の言葉に乗るようにヤケクソ気味に話す山本。

 俊哉は苦笑いを見せながら言う。


「いやほら。俺はさ、、、ね?」

「はぁ!?俊哉さんここまで来て言わないは無いんじゃ無いですかねぇ?!」

「そうだぜぇトシィ。ほら言えや!!」


 他全員の男子から詰め寄られる俊哉。

 俊哉は困りながらもこれ以上は逃げられんと悟る。


「分かったよ。言うよ」

『おぉー』


 パチパチと拍手が鳴る。

 そして俊哉が逃げれないように周りを囲うように座り俊哉の答えを待つ。


「つ、司ちゃん、、、だよ」

『知ってる』

「マジで!?、、、あれ?」


 分かり切っている答えに竹下、青木、堀、内田の4人は口を揃えて言うも山本はただ1人驚いていた。


「え?山本知らんの?」

「いや、俺てっきり宮原かと」

「あぁマキか・・・うん。マキも好きだよ?」

『はぁ?』

「てか、みんな好きだよ?とても仲良くしてくれるし。楽しいしさ」


 笑顔で話す俊哉。

 だが他の男子は大きくため息を吐く。


「コイツ、天然タラシの才能あるわ・・・」

「え?何それ」

「はい恋バナ終了ー」

「お疲れしたー」

「えぇ!?おい終わるなよ!置いてくなよー!!」

「あぁー最後は女に困らない俊哉君オチでしたねー」

「おい待てよ!帰るのかよ山本!」

「じゃあなー」

『うぃー』

「おいお前ら!おいー!!」


 こうして恋バナは流れていくのである。


「全くなんだよもうー!!」


 しばらくしてから、俊哉は飲み物を買いに自販機へ来ていた。

 先ほどの事を怒りながら時間機でジュースを買い、ベンチへ座りながら飲む。


「でも、最初に司ちゃんの名前を出したのは、、、そう言う事なんだよなぁ、、、」


 そんな事を1人呟きながらベンチで飲み物を飲んでいると、俊哉へ声をかけてくる人物がいた。


「と、俊哉さん?」

「あ、司ちゃん」


 声をかけた人物は司だった。

 彼女も美咲の部屋での会議が終わり自室へ戻る途中に飲み物を買いに来たようだ。


「一休みですか?」

「そ。ウチの部屋うるさくてー」

「ふふふ。楽しそうですね?」

「司ちゃんは?」

「私は、美咲ちゃんの部屋でお話ししてました」

「へぇー 美咲ちゃんと?」

「はい。私も未だに不思議です」


 当然だが驚く俊哉に司も苦笑いを見せる。

 しばらく2人はベンチに座りながら話をしている。

 するとふと2人の目が合うと、互いに今日部屋で起こった事を思い返していた。


『あ、、、』


 2人で同じ言葉を発する。

 その瞬間に一気に気まずくなったのか、よそよそしくなってしまう。


「あ、あのさ司ちゃん」

「は、はい」


 先に口を開いたのは俊哉。

 司はドキッとしながら俊哉を見ると、俊哉も若干だが顔を赤くしており何か言いたげだったが言葉が出てこないようだ。


「えっとその、、、」


 言葉が出てこない俊哉に、司は待つ。


「俊哉さん。落ち着いて下さい。大丈夫ですよ?」


 そう言いながら司が笑顔を見せる。

 俊哉は彼女の笑顔を見ると、何かがスッと抜けるように感じる。


「あのさ。明日の自由行動、楽しもうね」

「は、はい。私も楽しみです。」


 俊哉の言葉に対して見せた司の笑顔は、俊哉の心に深く残った。

 本当に楽しみにしてくれているんだ、そう感じることができたからだ。

 そして2人はまた顔を見合わせると、さらにドキドキが強くなって来た。


「あ、あぁもう就寝時間だね!」

「そ、そうですね!早く部屋に戻らないと先生に怒られますね!」


 その場の雰囲気を壊すように俊哉が話すと、司も乗っていく。

 そして2人はぎこちない笑いをしながら立ち上がる。


「じゃあ・・・また明日」

「はい。明日はよろしくお願いします。」

「こちらこそ。」


 そう言い互いに笑顔で別れる俊哉と司。

 別れるように歩く2人。

 その2人の表情は?だけでなく、顔いっぱいに赤く染まっていたのだった。


(司ちゃんの目、すごい見ちゃった)

(俊哉さんの目、すごい見ちゃった)


((どうしよう!明日大丈夫かな!?))


 こうして二日目の夜は更けていく。

 そして三日目、色々な意味での修羅場が現れるのを、まだ誰も知らない、、、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る