第27話:会議
大浴場から上がる司達。
着替えをしていると、菫がジッと司を見ていた。
「どうしたの?スミちゃん?」
「んー、えい」
司が視線に気づき話しかけると、菫は少し唸るとツンと司の横乳を指先で突っつく。
「ひゃん!・・・な、何ー?!」
変な声が出る司は顔を赤くしながら後ずさりすると、菫は笑いながら話す。
「いやぁ。司の胸って意外とあるんだなぁって」
「ふぇぇ!?」
「あぁ確かに」
「美咲ちゃん!?・・・んっ・・・」
今度は美咲が後ろから思いっきり鷲掴みにすると、司はまた変な声を出す。
しばらく感触を確かめる美咲に、司は身を捩りながら我慢をする。
「中々あるわね・・・」
「そこまでする必要はないでしょ・・・」
司を離した美咲は両手の感覚を確認しながら話す。
そんな彼女に真琴は頭をズビシッとチョップで軽く叩きながらツッコミを入れる。
「いやいや、これは必要不可欠な行為だよ真琴」
「オヤジか!」
再びチョップで美咲の頭を叩く真琴。
「司、今年の健康診断幾つだった?」
「えっと・・・82・・・かな」
はぁはぁと息遣いが乱れながら司が答えると数人から“おぉ〜”と声が聞こえる。
またその会話を少し後ろで聞いていたマキは自分の胸を手で当てながら呟く。
「やっぱ胸か・・・」
「ん?マキ何か言った?」
「ううん?!何でも無いよ!?」
明日香の言葉にマキは焦りながら答え、明日香は首をかしげる。
「マキさん・・・意外とあるんですね」
「そ、そうかなぁ?」
瑠奈の言葉に恥ずかしそうに話す司。
「菫は?」
「私は86だったわ」
「良いなぁ、私なんて84。多分これ以上大きくはならないわね」
菫が笑顔で話し、美咲がため息を吐きながら話す。
すると次第にバストサイズの公開し合いになっていく。
「私は85かな」
「パルはお腹のお肉もあるですからね」
「そう言う事言わなくてよろしい。そう言うユミッちは76じゃん」
「言い返す言葉も出ないです・・・」
そんな感じにワイワイと脱衣場で騒ぐ女子生徒達。
だが直ぐに瑠奈が“もう夕食になります!”と言いその場は解散となったのだ。
夕食は全員で大宴会場にてお膳料理が出る。
司達が向かうと既に大勢の生徒らがおり夕食が始まるのを待っていた。
「あ、俊哉さん」
「司ちゃん」
司はちょうど入ってきた俊哉と目が合い挨拶を交わす。
俊哉は司の浴衣姿に少しドキッとする。
「じゃあまた後でね」
「は、はい」
竹下らと一緒に行動していた為、別れて行く俊哉に司は笑顔で答える。
その姿を見ていた美咲はニヤニヤしながら司の横に行き肩に手を回しながら話す。
「初々しいねー」
「あ、いやぁあはは・・・」
美咲の言葉に司は苦笑いを浮かべる。
「後で私の部屋に来てよ 色々話そ」
「え?あ、はい」
そう話し美咲は“じゃあまたね”と言い菫らと行ってしまう。
話すのは初めてだったが、司から見て彼女はどこか“頼りになるお姉さん”の様な雰囲気を感じていた。
「良かったですね司」
「え?」
「色々な人と話ができて、仲良くなれて」
「そう、だね・・・」
「これも、俊哉さんのお陰では?」
「あぁー、そうかも・・・」
由美の言葉に、司は同意した。
確かにあの時、俊哉が話しかけてくれなかったら今頃何しをしていただろうかと自分で考えると、今のこの状況が不思議でたまらなかったのだ。
「俊哉さんの、お陰だね」
「ですよ司。ですから絶対ゲットです」
「そんなモンスターなんとかみたいに言わないでよ〜」
「ふふっ」
司の言葉に由美も笑みをこぼす。
こうして夕食が始まり、生徒らは舌鼓を打ちながら夕食を楽しむのであった。
『ごちそうさまでした』
あっという間に夕食が終わる。
生徒らはゾロゾロと自室へ帰ったり、仲間の部屋に行き自由時間を過ごしたりする中で司、ハルナ、由美、瑠奈は先ほど美咲に言われた通りに美咲たちのいる部屋へと向かう。
「こ、こんにちわー」
「いるよー」
コンコンとノックをしながら中の様子を伺うと、中から美咲の声が聞こえてくる。
司が扉を開けると、中には美咲、真琴、菫、絵梨の4人がいた。
「あ、絵梨ちゃんもう行ってたんだ」
「そだよー」
「司いらっしゃい」
菫が司たちを招き入れる。
中に入り日本間でテーブルを囲う様に座ると、早速美咲が話を始める。
「さてと。じゃあこれからぁ、どうやったら司と俊哉君が付き合うか会議ー」
『わー』
「えぇ!?そ、そうなんですか!?」
「そうだそうだ!私だっているんだぞ〜!!」
「絵梨はお黙り!」
「何故だ〜!!不公平だぞ!少し位私を応援しろ!!バカ真琴!」
「何で私なのよ!?」
驚く司に、不公平を訴える絵梨。
騒ぐ2人をスルーしながら美咲が会議?を始めて行く。
「てかさ、そもそもなんですが・・・」
その会議の開始に瑠奈が挙手をしながら話しかける。
「何でしょう。瑠奈弁護士」
「べ、弁護士・・・い、いえ。そもそもなのですが・・・俊哉さん自体に、その気というのがあるのでしょうか?」
「ふむ・・・実に興味深い議論ですね」
「は、はぁ・・・」
「・・・その辺どうなの?早乙女弁護士」
そもそも俊哉自身にその気持ちがあるのか?
その疑問を瑠奈がぶつけると、美咲はハルナに確認を取る。
「まぁ意識はしてると思うよ?これまでの言動とかを考えてだけどね」
「それに、2人きりでデートも行ったりしてるでしす」
「で、デート?!そうだったの?」
「あれをデートと呼ばずに何と呼ぶんです?」
ハルナの話に被せる様に由美も付け加えて行く。
また司が“デート”のワードに驚く言動が見られたが、由美はあっさりといなす。
「デートしたんだ?」
「はい。ホビーショーデートを」
「ゆ、由美!?」
「ホビー・・・何だって?」
「あぁ、ガンプラの展示会の事です」
「へぇー・・・」
「わかってませんね?」
「イマイチ・・・」
ホビーショーが何かが理解できない美咲に由美はジト目で見る。
「あぁー、だからプラモちゃんって呼ばれてるんだ」
「ぷ、プラモちゃん?!」
真琴の言葉に司が驚く。
彼女自身も初めて言われたニックネームである。
「え?どこで言ってたの?」
「あぁ、明輝弘がね。プラモの雑誌読んでるのを見てたからそれ以来“プラモちゃん”って呼んでるのよアイツ」
「そういえば言ってたかも・・・なるほど、司の事だったのね?」
ポンと手を叩きながら理解できた美咲。
どうやら司の知らないところへ思わぬニックネームが広まっているようで、内心複雑な様子だ。
「じゃあ私も次からプラモちゃんって呼ぼうかな」
「えぇー、なんか・・・微妙です」
「えー?可愛くない?」
「そ、そうですかぁ?」
美咲の提案に全力で拒否る司。
そんな2人のやり取りに、ハルナが司に話す。
「司さ、昔と比べて自然と話せるようになったよね?」
「え?あ・・・」
「そうですね。それもやはり、俊哉さんのお陰かと。」
「なるほどねぇ」
ハルナの言葉に由美が付け加える。
その場にいた全員が、司を見ながらどこか納得していた。
そして本人も、納得していた。
(確かに、以前の私なら何も言えなかったかもしれない。でも、今はこうして苦手そうな人にも普通に話せて仲良くなれてる・・・これも俊哉さんのお陰なのかな・・・)
そう考えると、司の表情は緩み笑みを浮かべていた。
嬉しい顔を見せる司に、美咲はニコッと笑みを浮かべる。
「結構いい笑顔するじゃん」
「え?そ、そうです・・・か?」
「そんな笑顔見せられたら、そりゃ惚れるわ俊哉君」
「ふぇー?!」
美咲の言葉にボッと顔を真っ赤に染める司。
そしてそんな会話の話を折るように再び瑠奈が挙手をしながら話す。
「俊哉さんの件は分かりました。そしたら後は、宮原マキさんの事ですが。」
「それだよ瑠奈弁護士」
「弁護士・・・」
「プラモちゃん。マキは強敵よ?」
「プラ・・・。そ、そうなんですか?」
「あの子、結構意識してるわよ?プラモちゃんの事」
「そうなんですか?!」
「勿論“俊哉君を取られるかもしれない”そんな気持ちが見て取れるわねー」
美咲の考察は恐らく的を得ているだろう。
司に対しての視線というものを彼女は何度も感じており、気になってはいたのだ。
初めて視線を感じたのは昨年のクリスマス会。
そして今回の自由行動で一緒に行動する約束をした時。
マキから向けられる視線は、何というか普通とは違うものである事は司でもわかっていた。
「司はさ。真面目にどう思うの?」
「スミちゃん」
「私たちがこんなに騒いでも、司の気持ちが一番よ?」
菫が司を見ながら話す。
勿論、他の女子達も同じ気持ちだ。
「私は・・・正直、どうしたら良いのか分かりません」
「司・・・」
「確かに、俊哉さんを想ってるのは正解です。あんなに優しくしてくれて、私の好きなモノ(ガンプラ)に熱心に耳を傾けてくれて。すごい嬉しいんです。隣にいてくれるだけでも・・・安心していられます・」
「うん・・・良く本心を言ってくれたわプラモちゃん・・・いいえ、司」
「美咲ちゃん?」
「それが貴女の本心ね?」
「・・・はい」
美咲の目を真っ直ぐ見て言う司。
そんな司に、美咲はニコッと笑みを浮かべると司の頭をクシャクシャと撫でる。
「それなら尚更!私はプラモちゃんを応援するわ」
「あ、ありがとう・・・ございます」
「でもお姉さん心配なの」
「な、何がですか?」
美咲の言葉に司は心配そうに見る。
少し間を置き、美咲は口を開き話し出した。
「俊哉君ね、タラシの才能あるかも」
「た、タラシ?」
『あー』
「え?!納得しちゃうのぉ?」
何と周りが納得そうな言葉を漏らす事に司は驚く。
すると真琴が話を始める。
「いやぁだってさ。すでに司にマキに、一応絵梨でしょ?」
「一応とは何だ!一応とは!!」
「絵梨はお黙り。トシ君の性格もあるけど、あれは女ったらしの才能があるわね」
絵梨の言葉を制し、美咲がウンウンと頷きながら話す。
「あのままじゃあ・・・更に増えるわね」
「えぇ!?」
「プラモちゃん。頑張りなさい!後は貴女次第よ!」
「えぇー・・・・」
まさかのオチで会議は終了。
司は一抹の不安が残るまま解散となったのだ。
「司」
「ゆ、由美ー」
「大丈夫です。私たちが全力でサポートするです。」
「由美・・・ありがとぅ」
「お礼は上手く言ってからするです。」
「う、うん。そうだね」
「応援してるですよ?」
「ありがとね由美」
由美の言葉に笑顔を見せる司。
そして修学旅行の二日目の夜はふけていく・・・
次回へ続く。
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