第25話:洞爺湖の温泉旅館
学旅行1日目を無事終え、二日目になった。
二日目の行程は函館のホテルを出発し大沼公園へと向かう。
大沼公園で散策を楽しんだ後に、再びバスへ乗り元山牧場直営店へと向かい小休憩を兼ねて自由時間。
ここでは牧場直営店とあって牛乳を使ったソフトクリームが有名だ。
「あ、あの俊哉さん!」
「おぉ 司ちゃん」
竹下とソフトクリームを舐めながらいる所に司が声をかけて来た。
俊哉が笑顔になりながら反応を示すと司も嬉しそうな表情を見せる。
そして竹下は気づかれないようにそっと2人から離れて行き後ろにいるハルナと由美の元へと行く。
「おっす」
「おっす竹下くん」
簡単に挨拶を済ませる竹下たち。
俊哉と司がモジモジとしながらいるのを見て竹下が話をする。
「なんか会話続かねぇけど、何か要件あるんじゃねぇの?」
「あぁー、実はね三日目の自由時間なんだけどさ。トシ君とこの班とウチら3人一緒に行動出来ないかなって思ってね。」
「あぁ、俺は構わないけどさ・・・」
ハルナからの提案に竹下は良いが、問題はあの2人である。
「えっとその・・・」
「え?何?」
モジモジと話す司に俊哉は待っている。
「あの!三日目に午後から自由時間ありますよね?!」
「うん、あるね」
「その・・・その日、一緒に行動しませんか?!」
「え・・・」
司の言葉に俊哉はドキッとする。
後ろのハルナたちはグッと小さくガッツポーズ。
だが竹下が1つ問題があることを思い出した。
「あ、ヤベ・・・」
「え?何が?」
「いやぁ俺は良いんだけどさぁ・・・」
「あ、トシちゃんどうしたの?」
俊哉の後ろから声が聞こえる。
その声の主はマキだった。
明日香も一緒におり、明日香ははるか向こうにいる竹下たちに気づくとアイスクリームを食べながら、そちらへ向かう。
「何してんの?」
「神宮寺か。いやぁ・・・修羅場?」
「はぁ?」
そう言いながら俊哉たちの方を見る明日香だが、何のことかすぐに理解したようだ。
「あぁマキ。三日目の自由行動で司ちゃん達が一緒に行動しようって言ってるんだけどさ。良いかな?」
「ふ〜ん・・・」
俊哉の言葉にマキはチラッと司を見ると、司はビクッとなる。
以前向けられた目つきにだったからもあるが、どこか何か違うものを感じさせられる。
(お、怒ってないよ・・・ね?)
急に不安になる司。
少し間が空くが、マキは笑顔を見せると話し出した。
「良いよー勿論」
「ほんと?だってさ司ちゃん」
「あ、は、はい・・・」
マキの言葉に喜びながら司に話す俊哉。
だが司は笑ってはいるものの、どこか不安そうであった。
(だ、大丈夫・・・だよね?)
何とも言えない感情を持つ司だが、自由行動で俊哉と一緒に行動できる事に嬉しさを感じるのであった。
「なんていうか・・・俊哉が大変になりそうね」
「それな神宮寺」
「パル、司ちゃん大丈夫?」
「いやぁ、でもあの子が決めた事だからね」
明日香がハルナに確認するも、ハルナは苦笑いを見せながら話す。
今回の話は、ハルナから嗾けたのではなく司本人が聞いて来た事だ。
だがハルナたちの誤算は、今この状況だ。
(しまった。マキちゃんがいたんだった・・・)
何故だが申し訳なく感じるハルナ。
だがもうここまで来たら退けない状況である。
「という事で、三日目よろしく」
「お、おう」
「まぁ私は良いけど・・・」
こうして三日目の約束をした元山牧場直営店。
この場所をバスは再び出発し一行は途中の道の駅で昼食を取り、その後はサイロ展望台へ向かい自由散策。
このサイロ展望台からは洞爺湖が一望できる絶景ポイントである。
そして今日の宿泊先というのは、この洞爺湖沿いにある温泉旅館へと宿泊する予定となっている。
サイロ展望台を出発し夕方近くになる頃に、本日宿泊する温泉旅館へと到着。
ここは大浴場が広い事で有名であり、洞爺湖を一望できる露天風呂などがる。
ゾロゾロとロビーに入ってくる生徒たちは、教員の指示を聞き決められた部屋の鍵が渡される。
「あーあ。女子と一緒じゃねぇのかー」
「当たり前だろ・・・」
残念がる竹下に蔑むような目で話す俊哉。
俊哉の部屋は、俊哉・竹下・青木・堀・内田の5人部屋だ。
「飯まで時間あるから風呂行くか〜」
「だなぁ」
そんな話をしながら部屋へと向かう俊哉たち。
そして女子の方はというと、マキ・明日香・絵梨・瑠奈の4人が同じ部屋であり、4人も部屋へと荷物を持って向かう。
部屋へと入り荷物を置くマキ達は、時間が結構ある事に気づく。
「時間あるわね」
「でしたら、お風呂でもどうでしょう?」
「良いねーずっとバスに乗りっぱなしだったから身体伸ばしてお風呂入りたいー」
瑠奈が大浴場へ行こうと提案すると絵梨が嬉しそうに賛成する。
やはり女の子、温泉旅館に来たらまずは行かなくてはならない場所だ。
また他のメンバーも断る理由が無く大浴場へと向かうのであった。
カラカラっと扉を開けると目の前には広い脱衣場が見える。
「わ 脱衣場も広い」
「確かに広い・・・」
脱衣場からすでに広い。
これは大浴場はすごい事になりそうだと、ウキウキで入って行くマキ達。
すると、ちょうど同じ時間に司たちも来ていた。
司とハルナ、由美の3人が話しながら脱衣場の服を入れるカゴを探していると、ちょうどマキ達と鉢合わせになる
「あ・・・マキ、さん」
「あ。司ちゃん」
最初に司とマキの目が合う。
後ろにいたハルナとも目が合い、ハルナは笑いながら話す。
「やっぱり考えることは皆一緒ねー」
「だよねぇー」
ハルナの言葉にマキも笑いながら答える。
すると司がドギマギしながらマキに話しかけて来た。
「ど、どうも・・・マキさん」
「さん付けは辞めてよー」
「え、あ、はいぃー」
「呼び捨てか、ちゃん付けが良いかな」
「え?あぁじゃあ・・・マキちゃんで」
「ん」
マキからの言葉にオドオドしながらも司は答えて行く。
そしてマキはさらに話して行く。
「司ちゃんも入るんでしょ?」
「は、はい」
「じゃあ、一緒に入ろ」
笑顔で話すマキに、司は何だか安心した。
大丈夫・・・
司はそう自分に言い聞かせる。
「はい もちろんです」
笑顔でマキの言葉に答える司。
マキはもう一度笑顔を返すと一緒に大浴場へと入って行くのであった。
(うん。大丈夫だよ・・・大丈夫。私が決めたんだし・・・)
次回大浴場編。
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