第6話:妹
入学式から翌日に在校生は登校してくる。
新入生が入ったという事は勿論俊哉達も二年生へと上がった訳であり、クラスも入れ替わり気分も一新といった所であろう。
俊哉もまたクラスが変わりクラスメイトの顔ぶれも多少ではあるが変わっていた。
「初めて同じクラスだな」
俊哉に話し掛けるのは竹下。
一年時は竹下らとはバラバラで二年生になって初の同クラスである。
また他には青木、堀、内田といった野球部の部員が同じクラスである。
他にも菫や絵梨、由美やハルナにマキに明日香と言った顔見知りの女子たちもおり賑やかになっているのであるが、残念ながら司は隣のクラスであり俊哉はそれが残念である。
「トシちゃん」
俊哉に話しかけてくるのはマキ。
「琢磨よろしくねー」
ニコニコと笑みを見せながら話すマキ。
琢磨とは宮原琢磨の事であり、彼は宮原マキの弟なのである
また横山亮斗は俊哉の弟でもあり兄弟そろって聖陵へ入学してきた形である。
マキと話していると竹下が話に入ってくると俊哉に話を振る。
「そうだ、トシの弟達を観に行こうぜ」
「いや部活始まれば来るけど」
「堅いこと言うなよー、視察だよ 勧誘も含めて」
「とか言って、お前ナンパだろ」
「あ、バレた?」
「だろうと思った」
「でも行こうぜ?もしかしたら掘り出し物が見つかるかも」
「女の子の?」
「勿論」
そんな話をする竹下にため息を着きながらも一緒に行く俊哉。
一年生たちのいる廊下へと向かうと多くの生徒らがいた。
竹下はセンサーを働かせながら可愛い子がいないかと探す。
「むむ!!」
突然そう言い出し立ち止まる竹下の視線の先には一人の女子生徒がいた。
その女子生徒は背が低くショートツインテールの髪型、そして顔はとても可愛いらしく俊哉でも思わず「あ、可愛い」と口に出してしまう程である。
勿論竹下が黙っているはずがなくすぐにその女子生徒の元へと向かう。
「君
「ふぇ?!」
突然のナンパに戸惑うその女子生徒。
あーだこーだと色々言葉を投げかけながら迫る竹下を一歩後ろから眺める俊哉は、そろそろ止めたらと言いに行こうとした時である。
「あら竹下さん」
「え?」
竹下の背後から掛けられる女性の声。
その女性は黒のロングヘアで前髪は綺麗に揃えられ目は少し釣り目の女性が立っており笑顔でいた。
「あ、お姉ちゃん」
竹下が絡んでいた女子生徒がその女子生徒を見て言うと、竹下は嫌な汗をタラタラと流し始める。
「まぁ竹下さん 私の妹に何か御用でしょうか?」
圧を感じる程の笑顔で話すその女子生徒に竹下はタジタジになる。
最終的には「失礼しましたー」と言って小走りで走り去っていってしまう。
「全く…俊哉さんも止めてください」
「いやぁゴメンゴメン 止めようと思ったら丁度瑠奈ちゃんが来たもんで」
「はぁ…心優もキチンと断りなさい」
「でもぉ・・・」
そう話す心優と呼ばれた女子生徒。
彼女の名前は
俊哉とは1年の時に同じクラスであった為、顔見知りである。
「そうです 俊哉さん」
「ん?」
「今年の野球部はどうです?その、今年は勝ちあがれそうですか?」
「あぁ、新入部員が今年は粒ぞろいだからイケるかな」
「そうですか」
そう言いそのまま背を向けて歩き出していってしまう瀬里瑠奈(以降より瑠奈)。
瀬里瑠奈、彼女には趣味がある。
(今年は観る楽しみがありますね)
趣味は野球観戦。
普段はプロ野球観戦が主であるが去年の野球部の快進撃を見てファンになってしまったのである。
そんな瑠奈の妹である瀬里心優は、高校野球…しかも投手の熱狂的なファンであるのはまた別の話である。
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