第4話:卒業式
そこから月日は過ぎていき3月。
中学校では卒業式が行われており大勢の生徒らが講堂の中で整列していた。
その中に琢磨もおり、中学生活最後の日を身をもって感じている。
「またね」
「高校でも同じだね」
「遊びに行こうね」
「卒業旅行忘れないでね」
卒業式が終わり生徒たちが正門の前で友人らと話しながら涙したり、卒業式に来てくれた後輩らと話しをしたりと、各々が別れの時を過ごす。
琢磨の元にも同級生や後輩らが来てくれて話しをしながら談笑するが、彼は決して泣きはしなかった。
むしろひと月先の事が楽しみでならなかったのだ。
「おう琢磨」
「お、亮斗」
卒業証書の入った筒を振りながら寄ってくる亮斗に琢磨は笑顔で返事をする。
「いやぁ、卒業だな」
「だなぁ あっという間だったな」
「確かに」
そんな話をしながら互いに笑う琢磨と亮斗。
すると2人の視線の先には琢磨の母親とマキ、そして亮斗の両親がやって来るのを確認する。
「あ、いたいた2人とも」
マキが琢磨と亮斗に気づくと手を振りながら駆け寄ってくる。
「二人ともおめでとう」
「ありがと」
「ありがとうマキ姉」
短く返す琢磨に、普段から呼んでいるのかマキ姉と言いながら笑顔を見せる亮斗。
2人は学校の前で記念写真を家族で撮ったりしており、まだまだ帰れそうに無い。
「俊哉さん来てないんだ」
「兄貴は・・・寝坊した」
「あぁ・・・ぽいなぁ」
俊哉は寝坊のため欠席。
そして琢磨たちは家へと帰る時間となり亮斗に話しかける。
「んじゃあな亮斗 高校でも頑張ってな」
「ん・・・あぁ、また4月からよろしくな」
「・・・は?」
亮斗の言葉に疑問を持った。
彼は琢磨に4月から“また”よろしくなと言ったのだ。
「え?どういう事?」
「あぁ俺も行くんだわ 聖陵」
「はぁ?!」
亮斗の言葉に本気で驚く琢磨。
今まで微塵とも感じさせなかった言葉に困惑している。
「え?!受験会場いなかったじゃん」
「あぁ俺隣の教室だもん や行で」
確かに思い返してみれば琢磨で、その教室は最後であった。
要するに彼より後ろの生徒たちは隣にいたのである。
「いやいや!てか何で?!」
それより何より、亮斗が聖陵を選んだ理由を知りたい琢磨は、質問をぶつける。
「ん?、いやほら 琢磨が聖陵でショートやるんならさ 相棒の俺が必要じゃん?だから、俺も聖陵で野球するわ」
「亮斗・・・」
「まぁ俺も兄貴と野球したかったし?それに、面白そうなチームじゃん?」
ニシシと笑いながら話す亮斗。
琢磨は正直なところ嬉しかった。
ずっと野球をしていた仲間が増えることの喜びを感じていた。
「まぁ、つーことで 今後とも宜しく!」
「アホ亮斗め・・・宜しくな」
亮斗の言葉に笑顔で返す琢磨。
こうして琢磨の中学生活が幕を閉じ、4月より聖陵学院での高校生活と高校野球が幕を開けることとなる。
そして琢磨の相棒である
彼もまた、4月から琢磨と共に、そして兄である横山俊哉と共に高校生活と高校野球をして行くのであった。
新しい年が始まる。
第壱章へ続く。
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