第7話 冷凍うどん
いつもは1袋3食入りの茹でうどんを買って食べているけれど、今日はどうしようかな。ぐう、とお腹を鳴らしながら冷蔵庫の扉を開ける。……うーん、思いつかない。そこでなんとなく冷凍庫を覗き込んでみると、新顔のパッケージ写真に『ぶっかけうどん』と書かれた文字と目が合った。
麺を電子レンジで温めるタイプのやつだ。無造作に詰め込まれた冷凍庫から自分の好きなものを見つける。元々面倒くさがりな私にとって、これは大発見だった。
うどんを袋から出して、説明書を確認する。ふむふむ、麺の解凍時間は5分くらいか。そして出来た麺をザルに上げて、冷水で締める、と。
レンジが終了の声を上げる。ぱしゅっと音を立てて熱々の袋を開け、麺をザルにあける。冷水でよく冷やして、器にとぅるんと麺がのる。よしよし、味付けも袋の中に入っているつゆをかけるだけだし。これでもう食べられるんだから楽ちんなもんだ。さて、袋の中のつゆを取り出して……
盲点だった。同梱のつゆも解凍しなくては。つゆの小袋を手に持つと、ひやっとして、これは自分の体温で溶かすには無理がある、と即断する。何よりうどんの麺はもう出来上がってるんだ!
慌てて蛇口をひねってお湯を出す。お湯に当てたつゆの袋を揉みこむと、みるみる固まりが溶けていく。器にあがっている麺につゆをさっとかける。
うん、美味しい。ちょっと時間はかかってしまったけれど、初めてだしこんなもんだろう。まあ、初めてじゃなくても私がやらかすことは多々あるけれど、それもまたいいものだ。モチモチッとした食感は、あっという間に喉元を過ぎていく。
後日、お昼に同じ冷凍うどんを食べることにした。
前回のリベンジである。今回はあらかじめコップにお湯を入れて、つゆを解凍しておく。その間に麺を電子レンジにかける。
チン。出来上がったうどんを器にあけて、つゆをかける。今回も忘れず付属の鰹節をうどんの上に散らばせる。
ふふん、今回は完璧だ。熱々のうどんにつゆを絡めると、白いうどんが薄茶色に染まって、香ばしい匂いが鼻先に広がる。
ずずっと一口目を頬張る。うん、うまい。
そこで気づいた。あ、今度はうどんを冷水で締めるのを忘れてた……。
まあ、温かいうどんも美味しいから、全く問題はないのだけれど。
二口目の麺を咀嚼する。冷凍うどんは、茹でうどんやインスタント麺ともまた違った、独特のコシというか、歯応えがある様に感じる。けれど、それが良いのだ。味も食感も全て一緒だったらつまらない。それぞれに違いと良さがあるのだから、毎度の食事とそれを考えるのが楽しいのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます