第4話
数日後、私はヤシダと共に監査部に呼び出された。資料改ざんの件に関して、2人同時に聞き取りを行うと言う名目ではあるが、その実態は私に責任をなすりつけるための形式上の聴収であろう。しかし私としても、ヤシダと共に話がしたかったので都合が良かった。机に私とヤシダ、監査部の人間が向かい、面談が始まった。まず、監査部の人間が口を開いた。
「わざわざ来ていただき、ありがとうございます。本日はお二人の聞き取り調査となります」
ミツルの話では、この担当者は監査部の人間ではあるがかなり誠実な人柄で、公平な視点で話をしてくれるとのことだ。つまり私がきちんと筋の通った主張をすれば、しっかり対応してくれるというわけだ。
それとは対照的なヤシダが、横柄に口を開く。
「イーサさんからも聞いてるでしょー?やったのはこの女で決まりですよ。資料にはサインまであるんだから、もう聴収なんてやるまでもないでしょう」
足を組み、下品な顔でそう吐き散らす。何も返事をしない私たちをよそに、ヤシダは続ける。
「こいつはただただ責任取りたく無いから、自分の罪を認めないだけなんですよ。王宮の恥みたいな女なんですよ、こいつは」
監査部の担当は、真剣な表情で聞いている。もはや気の毒に思えたので、私も反論する事にした。
「罪を認めない?王宮の恥?大変自己紹介がお上手なんですねえ、感心いたします」
「はあ?舐めたこと言ってんじゃねえぞ、女の分際で」
「舐めてるのはどちらでしょうかね。自分の利益の為に王宮を欺き、監査部と癒着して不当に金儲けをしている貴方に言われたくはありません」
「は、はあ!?何を言ってるんだ!?」
ヤシダは声を荒げ、反論する。私は一歩ずつ、着実に仕留めることとした。
「王宮の財政資料を確認した所、不思議な事がわかりまして。どこかの誰かさん宛に、大量の金銀が流れているようなんです」
「いきなり何の話だ!信用できるかそんなの!」
「私は事実を申し上げているだけですが」
「ならその資料出してみろよ!!証拠を出せよ証拠を!!」
ヤシダはそう叫び、机を叩く。監査部の担当者も、考えは同じようだ。
--昨日--
「ミツル、どうだった?」
「はいはいすみませんね、時間かかっちゃって。財政担当者の話じゃ、ミラの言う通りヤシダに不透明な金銭の流れがあるみたいだ」
「やっぱり。その資料、持ち出せたりはしない?」
「すまんがそればかりは無理だった。多分イーサが根回しして、奴らの味方じゃ無い人間には持ち出せないようになってるんじゃないかと思ってる。申し訳ない…」
「いや、この情報だけでも十分よ。助かったわ」
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「証拠を出せよ証拠を!!」
私が資料を提示できない事を知っているからか、思いの外強く出てくる。担当者も私の方を見て、証拠がなければ信じられない、といった目つきをしている。だから私は、彼自身に証拠を出してもらう事にした。
「私は確かに、あなたが金銭を受け取」
「だから!!証拠もないのにそんな話」
「では今この場で、あなたの財政資料をここに提示して、取引記録を見せて下さい」
「!?」
私は努めて丁寧に、紙とペンをヤシダに渡した。ここは監査部だ。これに財政資料の判別番号と名前を書いてもらい、監査部の人間に直接とってきてもらう算段だ。
ヤシダは固まってしまっているが、頭を担当者の方にゆっくり向ける。担当者は、書きなさいと目で指示をしている。私はあえて、ヤシダを煽る。
「どうしました??何もやましい事がないなら、ぜひそれを証明して下さい」
ヤシダは震えながらペンを手に取り、少しずつペン先を紙の方へ向ける。ちらっとヤシダの顔の方に目をやると、真っ青で今にも泣き出しそうな顔をしている。担当者が早く書けと急かすが、全く進んでいない。見ているだけではなんなので、私も加わる事にした。
「ヤシダ!!!早く書きなさい!!」
「ひっ、、」
表情はそのままに、涙を流し始めた。全く汚い顔だこと。
次の瞬間、ヤシダは嗚咽を漏らしながらペンを放り投げ、その場にうずくまった。担当者も、ついに声を上げる。
「ヤシダ貴様!!!」
私もまた、こいつにとどめを刺す。
「罪を認めない??王宮の恥??笑わせないで欲しいわね。結局あんたは自分の利益が欲しかっただけでしょ??自分のために王宮を欺いたその行いは、もはや立派な反逆罪。王宮、国民、家族、あなたのした事全部公開してあげるから」
「うう、うう、、、」
私はそう吐き捨て、部屋を後にした。
続
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