第3話
翌日、正直顔も見たく無い人物と顔を合わせる。…まあ向こうは使用人を束ねるリーダーであるから、王宮内で顔を合わせないのはほぼ不可能だが。
昨日の私の宣戦布告がよほどこたえたのか、何も言葉を投げてこない。何か言いたげな表情はしているけれど、皆の前でカウンターされる事をかなり警戒しているようだ。
仕事内容の確認が終わり、私は今日の担当場所に向かう。その道中の廊下で、イーサの次に会いたくない人物に遭遇した。
「これはこれは、今ちょっとした有名人のミラさんではありませんか!」
この男はヤシダ。はっきり言って、イーサの腰巾着だ。正直、相手にするのもめんどくさい。
「こんな所でお会いできるなんて、嬉しいですなあ」
嫌味たらしく気持ち悪い笑みを浮かべながら、近づいて来る。私の数歩先まで来た所で歩みを止め、笑みが消える。
「ちょっと言いくるめられたからって調子に乗ってんじゃねえぞ。どちらにしろお前はここを追い出されるんだ」
私は何も返さず、観察してみる事にした。
「イーサさんに楯突くから、こうなったんだぞ?全くざまあねえな。クソ女にはふさわしい最後だ」
よくもまあ、ペラペラとそんな言葉が出てくるものだ。ある意味才能といって良い。
ヤシダは満足したのか、大きな足音を立てながら去っていった。去る間際の勝ち誇ったような顔が、本当に憎たらしい。…しかしあの男の言う通り、このまま何もできなければ、結局私はここを追い出されるだろう。その前に、手を打たなければ。
担当場所の清掃中、私の近くを王宮監査部の者たち2人が通り過ぎる。内部情報をベラベラと喋りながら歩いているあたり、本当にマヌケな連中だ。私は耳をすまし、会話に注目する。
「ったく、今度はヤシダかよ。あいついくら持って行ったんだ?」
「さあな。だが監査部が握り潰すって事は、やっぱりかなりの額らしい。」
「ったく、気に入らねえな」
聞こえたのはここまでだ。短い部分しか聞き取れなかったが、かなり大きな情報が転がり込んできた。資料改ざんの真相を突き止める前に、まずはこっちから当たってみる事にしよう。
私は手短に担当場所の仕事を終わらせ、ミツルの元を目指す。やはり、彼の協力は不可欠だ。
ミツルは会うなりやれやれといった表情だが、どこか楽しそうだった。
「それで、俺は何をすれば良い?」
「ミツル確か、財政担当者に知り合いがいたわよね?調べてもらいたい事があるの」
「ざ、財政担当?それが資料改ざんと関わってるのか?」
「分からないから、調べて欲しいの」
ミツルは少し考えを巡らせ、当たってみるよと返事をしてくれた。これが、私たちの反撃の第一歩だ。
続
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