猫ちゃんの記憶
第11話 私は…
なんだか長い夢を見ていた気がする。
大事な忘れてはいけないことだった気がするのに、思い出せない...。
ぼんやりする頭でふらっと起き上がると、う〜んと身体を伸ばして伸びをする。
なんだかずいぶんと長く眠ってたみたい、身体がいつもより重く感じる。
毛づくろいをしようと腕を寄せて舌を出した所で固まる。
えっえっ‼えぇーーー!!!!
私の真っ白ふわふわな前足は、白くて細い人間の腕になっていた。
まっ待って。落ち着け私!!!
猫になったのは夢だった...??
一瞬絶望が過ぎるが、周りを見回すと見慣れたご主人様の部屋だった。
ナニコレ?なにこれ??
夢じゃ無いならどういうこと??
頭の中ははてなマークでいっぱいでパニックになる。
と、とりあえず、本当に人間になったというか戻ったのか確認しないと...!!
ベッドから降りようとすると、盛大に転んだ。
うぅ...久しぶりの二足歩行は難しい...。
這うようにして、部屋に置いてある姿見に近寄る。
恐る恐る鏡を覗き込むと、そこには知らない少女が居た。
前世の私じゃなくて知らない女の子って...。
えっ⁉どういうこと⁉
更に混乱するじゃん!!!
私の気持ちを映すように鏡に映る少女も困ったような顔をする。
この女の子が、私?
試しに頬を引っぱってみると痛いし、鏡に映る少女も同じタイミングでまったく同じ動作をする。
うん...。とりあえずこの女の子が私ということで、間違いないようだ。
起きたら突然見知らぬ少女になる。
うん。分からん。
完全に私の脳内キャパを越えてしまった。
もう一度鏡の自分をよく見てみる。
ん⁉よく見れば猫だった頃と同じように真っ白ふわふわの猫ミミと長いしっぽが生えている。
髪は真っ白で柔らかく、細い髪が腰辺りまであるし、瞳の色はアイスブルーだった。
えっ…もしかして猫だった私がそのまま人間に変身したってこと...?
思い付いてみたら、それが答えのような気がする。
だって見れば見るほど猫の私を、そっくりそのまま人間にした様な容姿だ。
私は猫の獣人さんだった…?
とりあえず、謎は一つ解明した…のか...?
でも、まだ分からないことが...鏡の前でうんうん唸っていると、そういえば!と気付く。
この女の子っていうか、私全裸じゃん。
そりゃ猫の時に服なんて着ないから、人型になって着てる訳ないよね...。
とりあえず身体を隠せるものを探す。
ご主人様には申し訳ないけど、ベッドから布団を引っぱって身体に巻きつける。
本当に私はどうしちゃったんだろう??
何で突然人型になったのかな?
猫に生まれ変わったと思ってたけど、猫じゃなくて猫の獣人に生まれ変わってたってことだよね…?
とりあえず起きる前の最後の記憶を辿ろう。
何かヒントがあるかもしれない。
えっと、体調が悪いからご主人様のベッドのうえで寝てて、それからご主人様がお医者さんの所に行くのを見送って...それから...。
それからどうしただろうか?
何だか記憶があやふやだ。
...それから、心がもやもやして、焦って何か大事なことを忘れてる気がして...。
そう、とても大事なこと...。
思い出そうとすると、だんだん頭が痛み出す。
どんどん酷くなる痛み。
まるで、頭の中からガンガンと打ち付けられているようだ。
…痛いっ。っいた…い…。
頭が割れそう!!
酷い痛みに頭を抱えてうずくまる。
涙が滲んでくるなか、頭の中でたくさんの誰かの顔が浮かび、声が聞こえる。
頭の中をかき混ぜられるように、いろんな記憶がフラッシュバックして、浮かんではまた次の映像が浮かぶ。
永遠のような気がした痛みが止んだ。
滲んだ涙が頬を伝う。
私は唐突に思い出した。
私は...
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