第10話 猫ちゃんは今日も…
『猫』は猫生を謳歌するのほのぼのパートは前回の「猫ちゃんは今日もほっこりする」でいったん終わりです。
今回からシリアスパートに入ります。
最後はほのぼのハッピーエンドになる予定です。
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最近なんだかちょっと調子がわるい。
どこが?と言われると説明しにくいけど、何だか胸がモヤモヤするような...そんな感覚が一番近いかも。
何でだろう?自分でも不思議に思う。
前世から異世界転生して、この世界に猫ちゃんとして生まれ変わり、ご主人様はじめお屋敷の人みんなに可愛がられ、大事にされてきた。
何に不満がある?
こんなに恵まれていて幸せなのに、どこか焦燥感みたいなものが日に日に募ってくる。
何に焦っているの?
自分でも分からないけど、心がもやもやする。
でも、分からないことをずっと考えてても仕方ないよね。
よし!気持ちを切り替えて、日課のお散歩に行こう!
ご主人様の膝の上で丸くなる。
撫でてくれる手はいつもどおり優しい。
なのにまた心がモヤモヤする。
それに、数日前から時々頭がズキズキと痛むのだ。
何だろう?私って何かの病気かな...?
なんだかとても不安になってくる。
いつもはご主人様の側にいるだけで安心できるのに、最近の私は少しおかしい。
人間だった頃は毎日毎日仕事に追われ、心に余裕なんて無かったし、幸せなんてほど遠かった。
だけど、この世界でたくさん幸せをもらって、幸せというのがどういうものなのか、初めて知った。
もう、この世界とも、みんなとも、ご主人様ともお別れなのかな...。
私らしく無いけど、こんなことばかり考えてしまう。
ご主人様。私まだあなたと一緒にいたいな...。
はぁ...体調が絶不調だ。
最近ではもうずっとご主人様の寝室に籠もりきりで、ベッドの上で寝てることが多い。
私の頭痛が始まったころから、食も細くなり眠ることが多くなったのに気付いてご主人様はすぐお医者さんを呼んでくれた。
だけど、私の身体に異変は無くて、病気でもないらしい。たくさんのお医者さんが来たけどみんな同じ様なことを言う。
ストレスで食が細くなってるんじゃないかと言うお医者さんもいた。
それは絶対に無い。
だって、猫になってから楽しいことや嬉しいことはたくさんあったけど、泣きたくなるように辛いことなんて思いつく限り一度も無かった。
それは胸を張って言える。
有名なお医者さんに診てもらおうと連絡したらしいが、この国からだいぶ離れた辺境に出張してるとかですぐには診れないようだった。
私を連れて行こうかとも思ったらしいが、長旅に体力が持つか分からないのでご主人様自らお医者さんを迎えに行き、最短距離で帰って来るらしい。
最短と言っても、一週間程はかかるとのことだ。
本当ならもっとかかって、普通のルートで行くと一ヶ月はかかるらしい。
出かける前に私にそう説明してくれる。
ご主人様ってやっぱりすごい人だ。
心配そうな顔で私を見つめるご主人様。
私に負担をかけないように優しい手付きで撫でてくれる。
こんなに心配させてしまって申し訳ない気持ちと、心配してくれて嬉しい気持ちが両方湧き上がる。
出かける直前まで私の側にいて、心配そうにしていたご主人様を見送る。
行ってらっしゃい、ご主人様。
もしかしたら、ご主人様が帰ってくる時には私は死んじゃってるかもしれない。
だけど、こんなに大事にされて愛されて死ねるのならそれもいいのかもしれないと少しだけ思った。
うとうとと、眠ってるような起きてるような不思議な感覚がする。
夢を見ていた気がする...。なにか大事な夢を...。
なにか大事なことを忘れてる気がする...。
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