第8話 猫ちゃんは今日もまんぶく

 お散歩の途中で食堂の前を通りかかる。

 ここを通る時はいつもいい匂いがするんだよなぁ。


 中を覗いて見ると、顔見知りの人が居るのが見えた。

 挨拶しに行こっと。


 中に入って行って、その人の足にすり寄る。

「あら、お嬢様。気付きませんでしたわ」

 そう言うと、しゃがんで私を優しく撫でてくれた。

  

 彼女の名前はオリビアさん。 

 このお屋敷に長年勤めていて、あの執事さんの奥様でもある。

 

 普段はおっとりとしていて、優しくまるでお母さんの様な人だが、怒らせるともの凄く恐いらしい...。

 あのダンディで大人の余裕たっぷりな執事さんでも、オリビアさんには尻に敷かれているとか。

 これはご主人様情報なので、本当にそうなんだと思う‥.。

 オリビアさんの前ではいい仔にしとこ。


「お嬢様、おやつはいかが?」

 おやつ食べたいな。

 返事の代わりに彼女の手のひらに頭をすり寄せる。


「少しお待ちくださいね」

 彼女はそう言うと、食堂の奥にあるキッチンへ行った。

 しばらくすると、小皿を持って戻ってくる。

「お待たせしました」

 私用の小さなミニテーブルに小皿に入れたササミを置いてくれる。


 ありがとう。オリビアさん!

 心の中でお礼を言って、食べ始める。

 う〜ん!今日も相変わらずおいしいな。

 もぐもぐと食べていると、あっという間にペロッとたいらげた。


 あ〜美味しかった。

 ごちそう様でした。

 彼女の方へ近付いて行くと、椅子に座って紅茶を飲んでいるところだった。

 彼女の足に前脚でぽんとタッチする。


「あら、お嬢様美味しかったですか?」

 彼女はにっこり笑ってそう聞いた。

 返事の代わりにしっぽを足に絡ませる。


「お嬢様ちょっとじっとしててくださいな」

 オリビアさんはしゃがんで私の顔に手を伸ばした。

「お口に付いていましたよ」

 微笑んでそう言うと、ササミのかけらを取ってくれた。


 わぁ...ほんとにお母さんみたい。

 私はオリビアさんの子どもだった...?

 脳内で盛大にバグを起こしながら、食堂を出てオリビアさんと別れた。



 食堂を出て、外廊下を歩いているとお仕事中の庭師さんを見かける。

 彼にも挨拶しておこう。


 庭師さんの後ろから歩いて行くと、こちらを振り向く前に「お嬢ちゃんまた来たのか?」と声をかけられた。

 どうやら、足音だけで私だと分かったらしい。

 獣人さんは身体機能が高いみたいで、お耳も高性能らしい。


「あーっと、悪いな。今日は何もおやつ持ってねえんだ」

 庭師さんは作業服のポケットを確認すると、ちょっと申しわけなさそうに言った。


 いやいや、別におやつをもらいに来た訳じゃないですからね!?

 そりゃあ、遊びに行くたびにちょこちょこもらってたけど...。

 私そんなに食いしん坊猫に見えるのかな?

 ちょっと遺憾の意。


 庭師さんの邪魔にならないように、少し後ろで見学する。

 さすがはプロ。

 動きに淀みが無いし、手さばきが上手だ。

 みるみる間に、植木がきれいに剪定されていく。


 なんかこういう人が作業してるのって、ずっと見てられるなぁ。

 日向ぼっこをしながら、お庭がきれいになるのを眺めていた。


 ん?門の方から誰かやって来る。

 あ!ご主人様だ。

 

 ご主人様は、こちらまで来ると庭師さんに「ご苦労様」と声をかけ私に「おいで」と言って腕を拡げた。


 走って腕の中にジャンプすると、危なげなく抱きとめてくれる。

 ご主人様の腕の中がやっぱり一番安心する...。


「今日はお前にお土産があるよ」

楽しそうにご主人様が言う。

 お土産?なんだろう?

「今人気だというニボシを買ってきたから、後でおやつにあげよう」


 あら、またおやつ。

 なんだか、今日はおやつの話ばっかりだな。

 でも、ご主人様が私の為に買ってきてくれたのが、とっても嬉しい!


 ありがとう、ご主人様。

 おやつ楽しみだな!


今日も私はまんぷくである。



◇登場人物プロフィール◇


 猫ちゃん

▷元人間女性で28歳独身、社畜

▷過労死して猫に生まれ変わる

▷ご主人様が大好き!!猫生をエンジョイしている

▷真っ白もふもふの長毛で美しいアイスブルーの瞳

▷魔法がある異世界に転生してた

▷猫の本能に時々引きずられる。若干アホの子

▷エミリーちゃんと友だち。妹の様に思っている

New▷オリビアさんのことをお母さんの様に思っている

New▷いろんな人から餌付けされている


 ご主人様

▷猫ちゃんの飼い主さんで大きいお屋敷のご当主様

▷仕事をばりばりこなす有能なひと

▷猫ちゃんに甘い

▷魔法が使える。強い

▷ケモミミとしっぽが生えてる。虎の獣人さん

▷本物の虎に変身することが出来る。変身時は2mを超える

▷瞳の色は、はちみつの様な金色

▷黒髪で180cm超えの27歳


 執事さん

▷ご主人様が産まれる前からお屋敷で働いている人間

▷ご主人様を唯一『坊ちゃん』呼び出来る人

▷猫ちゃんを『お嬢様』呼びする

▷主人が猫ちゃんに構いすぎると、「お仕事しましょうね」と笑顔で諌めに来る

New▷オリビアさんの旦那様。奥さんの尻に敷かれている


 庭師さん

▷銀色のケモミミとしっぽが生えてる。狼の獣人さん

▷庭師の腕はピカイチ

▷猫ちゃんを『お嬢ちゃん』呼びする

▷見た目の恐さに反して優しいし、面倒見が良い


エミリーちゃん

▷お屋敷の使用人。十代前半の女の子

▷クリーム色のたれミミとしっぽが生えてる。ゴールデンレトリバーの獣人さん

▷猫ちゃんを『お嬢様』呼びする

▷猫ちゃんとお友達。明るくて純粋な可愛らしい子


Newオリビアさん

▷お屋敷に長年勤めている使用人。人間の女性

▷猫ちゃんを『お嬢様』呼びする

▷おっとりとしていて、優しくお母さんの様な人だが怒らせるともの凄く恐い

▷執事さんの奥様。執事さんの事を尻に敷いている

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