第7話 猫ちゃんは今日も遊ぶ

 私は今リネン室に居る。

 うっすら開いていたドアから入り込んだ。

 真っ白なシーツやら、カバー等、布がいっぱいだ。

 ここなら、私の毛並みが保護色になって、見つかることも無いだろう。

 名案だとばかりに、いそいそと隠れる。


 私は今、お友達とかくれんぼをしているのである。


 お友達と言うのは、お屋敷の使用人である女の子だ。

 歳はまだ、十代前半ぐらいだろう。故郷を出て、出稼ぎに来ているらしい。

 まだ、若いのに大変だろうと思うが、本人はいつも明るくて楽しそうにしている。

 このお屋敷に勤めている人は、大抵の人が大人だが、中には彼女のような子どもも時々いるらしい。

 そういう子はお屋敷で勉強を見てくれるらしく、同じ使用人仲間の大人達が先生になってくれてるようだった。

 この前見かけた時は執事さんがにこにこしながら、勉強を教えていたし、彼女はうんうん唸りながら頭を悩ませていた。

 この間は実家に里帰りしていて「これ、お嬢様にあげる!」と、故郷の特産だというきれいなお花をくれた。

 ちなみにそのお花は私が気に入っているのが分かったのか、枯れる前にご主人様が栞にしてくれたので、大事に取ってある。


 可愛らしいお友達の事を考えていると、部屋の外から気配がする。

 誰か来た。もしかしたらあの子かも。景色に溶け込むように、動きを止めて気配を消す。


 誰かが入って来る。

 黒い小さな靴が眼の前を通り過ぎた。あの子だ!

 棚の下の段でシーツと同化しながら、息を潜める。

 部屋の中を見て回っているようだ。

 ひとしきりぐるっと回ると、ひょこっとこちらを覗き込む顔。

「お嬢様!みーつっけた!!」

 あぁ〜見つかっちゃったかぁ。棚の中から出てくると、しっぽをぶんぶん振って楽しそうに笑っている。

 彼女の全身から『楽しい!!』という感情が伝わってくるようだった。

 はぁ〜可愛い!!癒やされる...。気持ち的には妹が出来たかのようである。

 私が人間だったら、この子が可愛らし過ぎて胸を抑えて倒れていただろう。

 


 クリーム色の柔らかい色合いのたれミミ、ふさふさのしっぽを持つ彼女はゴールデンレトリバーの獣人さんで、名前はエミリーちゃん。

 愛嬌たっぷりの彼女と遊ぶのは、とても楽しいし、なにより癒やされる。


 私を膝の上に抱っこして撫でながら、今教えてもらってるところの勉強が難しいとか、お屋敷の掃除をするのが上手くなったと褒められたとか、今日の出来事を話してくれる。

 返事をすることは出来ないが、うんうん。そうなんだねと、心の中で相づちを打つ。

 こうやって聞いていると、彼女の純粋で明るく優しい人柄が伝わってくる。


「あっ、もうそろそろ休憩が終わるから、行かなきゃ!お嬢様また遊ぼうね」

 私も「また遊ぼう」の気持ちを込めて、彼女の手のひらに頭をすり寄せる。

 笑顔で手を振る彼女に、私もお返しにとしっぽを振った。


 楽しかったなぁ。

 ご主人様の部屋に帰ると、私がご機嫌なのが分かったらしい。

「なんだか、ご機嫌だな。またエミリーと遊んでいたのか?」

 私を抱えると優しく撫でる。

 うん。エミリーちゃんと遊んで来たの。

 今日も楽しかったよ。ご主人様。

 ご主人様の温かい体温を感じながら、膝の上でまどろむ。


 今日も私はお友達と楽しく遊ぶ。



◇登場人物プロフィール◇


 猫ちゃん

▷元人間女性で28歳独身、社畜

▷過労死して猫に生まれ変わる

▷ご主人様が大好き!!猫生をエンジョイしている

▷真っ白もふもふの長毛で美しいアイスブルーの瞳

▷魔法がある異世界に転生してた

▷猫の本能に時々引きずられる。若干アホの子

New▷エミリーちゃんと友だち。妹の様に思っている


 ご主人様

▷猫ちゃんの飼い主さんで大きいお屋敷のご当主様

▷仕事をばりばりこなす有能なひと

▷猫ちゃんに甘い

▷魔法が使える。強い

▷ケモミミとしっぽが生えてる。虎の獣人さん

▷本物の虎に変身することが出来る。変身時は2mを超える

▷瞳の色は、はちみつの様な金色

▷黒髪で180cm超えの27歳


 執事さん

▷ご主人様が産まれる前からお屋敷で働いている人間

▷ご主人様を唯一『坊ちゃん』呼び出来る人

▷猫ちゃんを『お嬢様』呼びする

▷主人が猫ちゃんに構いすぎると、「お仕事しましょうね」と笑顔で諌めに来る


 庭師さん

▷銀色のケモミミとしっぽが生えてる。狼の獣人さん

▷庭師の腕はピカイチ

▷猫ちゃんを『お嬢ちゃん』呼びする

▷見た目の恐さに反して優しいし、面倒見が良い


Newエミリーちゃん

▷お屋敷の使用人。十代前半の女の子

▷クリーム色のたれミミとしっぽが生えてる。ゴールデンレトリバーの獣人さん

▷猫ちゃんを『お嬢様』呼びする

▷猫ちゃんとお友達。明るくて純粋な可愛らしい子

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