第3話 猫ちゃんは今日もすやすや眠る

 朝起きると、伸びをしてくあっとあくびを一つする。そして、執務室でお仕事をしているご主人様に挨拶をしに行く。その後はだいたいいつも一緒に朝ごはんを食べ、次は朝のお散歩の時間だ。ご主人様のお屋敷は、とても広くて、ちょっとした冒険気分が味わえる。

 

 猫になってからは、本能なのか、お散歩するのも存外に楽しい。お庭にも足を伸ばして探検する。

 庭師の人が丹念に育てたのだろう、いつも季節の花が咲いていて、とてもきれいだ。花の匂いをふんふんと嗅いでみる。それから、ご主人様を休憩させがてらお膝に乗って昼寝したり、またお散歩に精を出したり。猫になったといっても私も中々に、忙しい日々を過ごしているのだ。


 夜になって、たくさん遊んで疲れたらもう眠る時間。ご主人様の寝室に向かって、歩いていく。私が良く出入りする部屋は全て、専用の小さな出入り口が付けてあり、猫ちゃんにとってのバリアフリーが行き届いた、優しい設計になっている。

 

 ご主人様の部屋に入ると、もう眠っているのかベッドの上に膨らみが見えた。ベッドに乗る為に近付いて行くと、ん?と疑問が湧く。ご主人様ってこんなに大きかったっけ?猫になった私から見てみれば成人男性のご主人様も十分に大きいが、それより、なんかこう...質量がありそうなかたまりがそこにはある。

 

 匂いはご主人様なのに、何か違和感があるし、どうしたものかとベッドの手前でうろちょろしてると、急にかたまりがのそっと動いた。

 私は思わずぴゃっ!!と跳び上がってしまう。すると、大きな鋭い牙がある口が、ぐあっと開かれて、眼の前に迫った。あっ、猫生もこれで終わりかなと走馬灯が過ぎりそうになった時、私の首根っこを、子猫にする様にかぷっと優しく咥えて、ベッドの上にぽとっと落とした。

 

 私は数秒、呆けたように仰向けになったまま転がっていた。だって、ご主人様が本物の虎になっていたのだ。

 キングサイズはあるだろう、ベッドの上でそれでもはみ出しそうに大きくなったご主人様。突然の変化に戸惑うが、ご主人様は、いつもどおりのようで、撫でるように、大きな舌で舐められ、グルーミングされる。

 最初は緊張でカチンコチンに固まっていたが、途中からは、まるで、母猫に舐められる子猫のような気分だった。いつの間にか私の喉はゴロゴロと鳴り、ご主人様のもふもふの胸の毛に包まれて眠くなってくる。

 ご主人様の側はたとえ虎になっても安心する。

 

 ご主人様の側で、今日も私はすやすや眠る。



◇登場人物プロフィール◇


猫ちゃん

▷元人間女性で28歳独身、社畜

▷過労死して猫に生まれ変わる

▷ご主人様が大好き!!猫生をエンジョイしている

▷真っ白もふもふの長毛で美しいアイスブルーの瞳

▷魔法がある異世界に転生してた


ご主人様

▷猫ちゃんの飼い主さんで大きいお屋敷のご当主様

▷仕事をばりばりこなす有能なひと

▷猫ちゃんに甘い

▷魔法が使える。強い

▷ケモミミとしっぽが生えてる。虎の獣人さん

New▷本物の虎に変身することが出来る。変身時は2mを超える

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