第2話 猫ちゃんは今日もご機嫌 

 今日のご主人様は珍しく、一日お仕事がお休みらしい。そんな貴重なお休みの日は、いつもより少しだけ朝寝坊するご主人様。いつもは、早く起きてお仕事をしているが、この日ばかりはゆっくりとした時間が流れている。

 

 いつも私より、早く起きてしまうご主人様の寝顔を眺める。

 どちらかといえば、強面に見えてしまうご主人様の顔も、今は無防備で、少しだけ幼く見えた。

 ご主人様の腕の中にもぞもぞと入り込んで、ゆっくりと眼を瞑る。大好きなご主人様を独り占め出来る大切な時間だ。


「...おはよう。お腹が空いただろう」

 そう言って、ご主人様があくびをする。ベッドから降りて、先に私のご飯を用意してくれるのだ。身支度を済ませたご主人様が戻って来るまで、ご飯の乗ったお皿の前にちょこんと座って待つ。

「...ふふっ。また待ってたのか?先に食べてて良かったのに」

 私の頭を撫でてくれる。ご主人様と一緒に、食事を摂るのが私の日課だ。




 今日もご主人様は相変わらず、格好良くて、なにより優しい。広大なお屋敷の庭で、日課のお散歩をしている時。魔法の訓練をしているご主人様を見かけた。

 私が猫として、生まれ変わったこの世界は、どうやら異世界らしい。猫ちゃんに転生するだけでは、飽き足らず、異世界転生までしてしまうとは!と、最初は非常に驚いたが、今ではすっかり慣れてしまった。

 

 ご主人様の手のひらからは、氷の魔法が現れ、物凄い速さで的に向かって辺り一面を凍らせていた。他にも、炎の魔法を使って的を一瞬にして、燃やす。

 うん!ご主人様は今日も絶好調だな!!なんて、我が事のように誇らしく思っていると、ご主人様が私の側まで歩いて来る。


「お前、また見てたのか?見学するのはいいが、危ないからあまり近付き過ぎるなよ?」

 しゃがんで、私の顎をくすぐるように撫でてくれるご主人様。私は嬉しくて、しっぽをゆらゆらとゆっくり振っていると、ご主人様のしっぽもゆっくり揺れていた。

 

 そう!しっぽ!なんと、ご主人様にもしっぽと、ケモミミが生えているのである。虎の獣人らしいご主人様には、立派な太くて長いしましまのしっぽと、丸くてキュートな虎耳が生えていた。

 

 ご主人様は『獣人』という種族で、この世界には、人間と獣人の二種族が暮らしているらしい。あと、魔物と呼ばれるモンスターもいるんだとか。

 

 この、お屋敷で獣人の人も、人間の人もたくさんの人を見かけたが、やっぱりご主人様が一番格好良くて、一番優しくて、一番大好きだ。


 今日も私はご主人様に撫でられて、ご機嫌に喉を鳴らす。



◇登場人物プロフィール◇


猫ちゃん

▷元人間女性で28歳独身、社畜

▷過労死して猫に生まれ変わる

▷ご主人様が大好き!!猫生をエンジョイしている

▷真っ白もふもふの長毛で美しいアイスブルーの瞳

New▷魔法がある異世界に転生してた


ご主人様

▷猫ちゃんの飼い主さんで大きいお屋敷のご当主様

▷仕事をばりばりこなす有能なひと

▷猫ちゃんに甘い

New▷魔法が使える。強い

New▷ケモミミとしっぽが生えてる。虎の獣人さん

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る