『猫』は猫生を謳歌する

柊 周

猫ちゃんのほのぼのらいふ

第1話 猫ちゃんは今日も幸せ

 私は猫である。まるでかの有名な文学作品のパロディのようだが、本当に猫になってしまった。


 前世は人間で性別は女性。年齢は28歳、独身。職業、社畜。特に当たり障りの無い人生を歩んでいる、普通の人間だった。気付けば、私の両手はぷにぷにのピンク色の肉球になり、黒かった髪の毛は、真っ白なふわっふわの長毛になり、こげ茶の瞳は透き通った湖のような美しいアイスブルーに

 なっていた。

『私が考えた最強に可愛い猫ちゃん!!』みたいな見た目だ。


 最初に、鏡を見た時、前世猫好きだった私は思わず鏡の前でうっとりとしてしまった。「なに、この子可愛すぎん⁉美しすぎる...」そして、あっそういえばこの子私かと、一人コントならぬ、一匹コントをしていたものだ。


 まあ、それはさておき。何で猫ちゃんになってしまったのか、実は少しだけ心当たりがある。自分でも、そんな馬鹿なと思うが...。私は、人間だった頃、いろんな事が上手くいかず、落ち込んでいた。もし、来世があるなら、絶っっ対にもう、人間にはならん!!と思うくらいには。

 来世は猫ちゃんになるんだ!!そして、優しい飼い主さんに可愛がられる猫生を生きてやる!!と固い決意をした。正直、仕事に追われて睡眠時間を削っていたものだから、思考回路が少々ぶっ飛んではいたが、私の想いは本物だった。

 そこからは、記憶があやふやだ。仕事がやっと片付き、これで寝れると机に突っ伏したような気がするが、それからどうなったんだっけ?もしかしたら、過労が祟ってそのまま...だったのかもしれない。

 でも、今生はせっかく猫ちゃんに生まれ変わったのだ。全力で猫生を謳歌してやる!と私は決意を新たにした。




 私にはそれはそれは優しい、自慢の飼い主様がいる。この広いお屋敷のご当主で、大変有能なご主人様はいつも仕事で忙しそうにしている。だが、私のお世話は必ずご主人様が、自らしてくれるのだ。どうしても出張や、泊まり込みでお屋敷を離れる時は使用人のひとがお世話してくれるが、それ以外は、甲斐甲斐しくお世話を焼いてくれる。

 私がご主人の側にすり寄ると、必ず表情を綻ばせて、優しく撫でてくれるのだ。普段は表情筋があまり仕事しないご主人様だが、この時ばかりは非常に分かりやすい。


 そんなご主人様大好きな私だが、私にも大事な『お仕事』がある。それは、働き者のご主人様が、根を詰め過ぎないように、息抜きさせることだ。

 ご主人様が、眉間にシワを寄せて、難しい顔でお仕事している時に、タイミングを見計らってもふもふ特攻しに行く。

 毎日、ご主人様手ずからブラッシングしてくれるこの毛並みは今日も完璧なもふもふ具合である。私の背中を優しく撫でてくれるご主人様のお膝の上で、今日も私は丸くなる。



◇登場人物プロフィール◇


猫ちゃん

▷元人間女性で28歳独身、社畜

▷過労死して猫に生まれ変わる

▷ご主人様が大好き!!猫生をエンジョイしている

▷真っ白もふもふの長毛で美しいアイスブルーの瞳


ご主人様

▷猫ちゃんの飼い主さんで大きいお屋敷のご当主様

▷仕事をばりばりこなす有能なひと

▷猫ちゃんに甘い

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