第7話 ごめん、世界滅んだ
2872階層も下ってきたのかと思うと感慨深いものがあるが、しかし有用な各種アイテムを保持限度数まで獲得し無限洞窟になんの用もない身としては、このクソみたいに広いエリアを上がっていくのはとても面倒くさい。
いや上がらないといけないんだけど、ゲームみたいにどうにかショートカットする機能はないのだろうか。
俺は探してみた。探してみたが、なかった。
俺は腹いせにサキュバスと女吸血鬼の尻を並べて以下省略。
あ、念の為に行っておくけど、ちゃんと合意の上です。戦闘になったら瞬殺だし、本当に俺の精気はご馳走らしいから二匹とも涙を流しながら喜びました。
走ればそこそこ早く帰れるんだろうけど、正直もう面倒くさいから適当に歩いて帰る。
B89Fにたどり着くまでは同種のモンスターしかいないわけで、つまりはどの階層にもサキュバスと女吸血鬼がいるわけで、まあのんびり上がって行きましたよ。
無限洞窟なんてけったいな所に住んでいるくせに二匹とも経験豊富で、性技のスキルが実装されていないせいでこっちは楽しく搾り取られてばっかりでしたよ。
うん。出れなくても別にいいかなと思わないでもない。いや、いい加減お日様の光とお菊ちゃんのつるぺたボディーが恋しいから出口を目指すんだけど。
そんなこんなで探索をしていた下りよりもむしろ時間をかけて無限洞窟を登っていった。体感時間的には二ヶ月ぐらいかけただろうか。
サキュバスも女吸血鬼も階層が変わってもナイスだけど飽きのくるまるで同じ
そこからはかわいい女モンスターも少ないのでさっさと上がっていった。
いや、全くいないわけじゃないんだけど、サキュバスたちと違って貞操観念がしっかりしてるから口説いても怯えて命だけは許してと泣きながら脱ぐので、レイプみたいな感じになって嫌なんだよ。というかまあレイプにしかならないんだよ。
やっぱりエロいことはお互いに気持ちよくないとダメだよね。
はやくお菊ちゃんに会いたい。あ、でもその前にやっぱり豊満なボディーをもう一回堪能したいとB91Fに戻ったりもして、俺はようやくニャンコ屋へ帰ってきた。
今回は随分と長いこと期間をあけてしまったので、驚かせようと〈隠密MAX〉や〈弱者の技能MAX〉から気配風景化、忍び足を発動させてお店に近づく。
そうすると、中から話し声が聞こえた。
ニャンコ屋に俺以外の客が来たことはない。お菊ちゃんに不埒なことをしようとする男だったらぶっ飛ばしてやろうと思いこっそり中を伺うが、お菊ちゃんの話し相手は女の人だった。
お菊ちゃんと同じような猫耳しっぽ付きで、スラっとした綺麗な大人のネコミミっ子だった。ちなみに胸もおきくちゃんと同じでスラっとしていた。
「それで、その相馬ってのはいつ帰ってくるんだい」
「も、もうすぐにゃ。もうすぐきっと帰ってくるにゃ」
「ニャーニャー言ってんじゃないよ、はしたない。それでも一端の猫又かい」
「浩史は可愛いって言ってくれたにゃ!!」
「……はぁ、やっぱりあんた遊ばれたんじゃないのかい。金持ちが道楽で好きなもん買っていってくれて、楽しめるもん楽しんじまったから、責任取らされる前にとんずらこいたんじゃないのかい?」
「違うにゃ!! 浩史はそんなヤツじゃないにゃ!! 強くなって世界を平和にしたら迎えに来てくれるって言ったにゃ!!」
「そうかい? でも魔王の侵攻作戦は順調に来てるって話だし、その相馬ももう魔王軍に殺されちまってるんじゃないのかい?」
「フニャー!!」
「ちょ、いた、ごめ、ごめん。悪かったわよ。冗談でも言っちゃいけなかったわね。でももう半年も顔を見てないんだろ。意中の女をこんな長いこと放っておくもんかね」
「う、うにゃぁ……」
「ママはね、あんたにママみたいな苦労をさせたくないのよ。ママの選んだパパもそりゃロクでもないエロ猫でね。人間みたいに年がら年中発情期で、猫又以外にもいろんなメスに腰振ってたものよ。そういう男を選んじゃうとね、女は不幸になるの。
わかるかい? ママはね、その相馬って男が、あんたの言う通りの男だったらいいなって思ってるのよ。ちゃんと責任とってあんただけを大切にしてくれるならね。
でもそうじゃなかったら、まだこんなにちっちゃいお菊に手を出した節操なしのチ●コを切り取らなきゃ気がすまないのさ」
「ママ……、大丈夫にゃ。浩史は私と結婚するって言ってくれたにゃ」
言ってないけどな。
さて、ここにいると俺の大事な息子が危険だ。それにお菊ちゃんとは世界を平和にしてから会うと約束した。なら誠実な俺は約束を守ろう。
うん。別にママがいない時を見計らってもう一回来ようとか、そんなことは全然思ってない。
******
そうして俺はこっそりと無限洞窟を抜け出し、久しぶりの外の空気を吸った。
視界には燃え盛る火の海が広がり、いくつもの黒い煙が天へと登る。時刻的には昼だろうに、空は夕焼けのように赤く染まっていた。
空気には灰が充満しており独特のいぶした匂いが鼻腔に充満する。
遠くに見えていたはずのビル群は中途で折れて、残骸が佇んでいる。
市街地に無事そうな民家はない。
どれも焼け落ちているか崩れ落ちており、そんな民家の庭先ではゴブリンやオークなどのモンスターがバーベキューを楽しんでいた。
赤い空の中には、黒い穴があいていた。イベントスチルで見慣れた次元の隙間が、ラスボス戦の時よりも大きく開かれていた。しかもそれは一つではなく無数にあった。
魔王軍の侵攻作戦は、俺という主人公が不在の中で本当に順調に進んだようだ。
どうやら、無限洞窟にこもっている間も普通に時間経過は行われていたらしい。
ゲームと仕様が違うなら言って欲しいよね。
俺の責任じゃない。俺の責任じゃないと誰か言って欲しい。
親切じゃないこの世界の運営が悪いんだきっと。
……うん、まあこれは言い訳だ。レベル上げや女の子とのキャッキャウフフのエロエロに嵌りまくった俺が悪い。
素直に謝ろう。
ごめん、世界滅んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます