第19話 ボルフェンク・ペテルレ著『「偉大なる開拓者号」の惑星ノヴァ・ゼナリャ開拓に関する一考察』の抜粋
……「
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着陸してみれば、ノヴァ・ゼナリャは殆どが赤茶けた砂漠に覆われた惑星で、そのため、人類が安定した植民活動を行うには、大規模な治水工事と植林作業が必須と言うことが分かったが、それでも人類は史上初めて植民に値する惑星を見つけたことには変わりなく、「
この記録に関しては本論文も異議を挟むものではない。
だが、このあと「「
結論から述べれば、ノヴァ・ゼナリャの植民事業史は、これまで言われていたように、平和的な歴史では全くなかったということだ。
いや、寧ろ、その歴史は、対立と争い、策謀と陰謀、殺戮と虐殺に満ちた血なまぐさいものであった、というべきなのだ。
「
つまりは、「地球出立から乗船していた生粋の乗員=地球世代」と、航行を続ける過程で「
この二派は、最初こそ協働して植民作業に当たっていたが、年月を得る毎に、主に後者の宇宙世代から、年配者である地球世代に対する不満が募るようになっていった。というのも、植民作業の主導権を握っていたのは地球世代の乗員であったが、この世代が植民作業の最終目的を「あくまでも地球に酷似した環境」に拘っていた。そのために、ときに無謀ともいえる工事を乗員に強い、その結果として、多くの犠牲者を出していた現実があった。これに宇宙世代は反発し、次第に両者の溝は深まっていった。
そして、着陸から6年がすぎた西暦2655年4月、両者は決裂し、ノヴァ・ゼナリャは血で血を洗う内戦状態に陥った。
戦況は当初は五分五分であったが、次第に戦局は宇宙世代に有利に働いた。これは、地球世代の子弟から、少なからぬ裏切りが発生したためといわれている。両者の、ことに宇宙世代による陰謀は熾烈を極めたとされ、ついに地球世代は同年7月、全面的降伏を余儀なくされた。
だが、この内戦の過酷さはこの後が本番であり、降伏した地球世代の指導者を、宇宙世代の若者達は容赦なく粛正し、ノヴァ・ゼナリャの大地は赤く染まったとされる。地球世代の生き残りは、その後の植民作業にて強制労働を強いられ、宇宙世代から奴隷に等しい扱いを受けたという。
だが、宇宙世代が実権を握った後も、両者の争いが滅したわけではなく、両勢力によるテロリズムや謀殺といった報復行為が後を絶たず、次第に「
その結果として、ノヴァ・ゼナリャの植民事業は断念せざるを得なくなり、結局、最終的にノヴァ・ゼナリャは放棄され、無人惑星に帰した。
これが栄光と希望に満ちた歴史、と従来主張されてきた「
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