第9話 全くもって天晴れな君の勇姿
「どうするつもりなんだ……」
ゲイリーは落ちつかぬ気持ちのまま、ガラスドームから見える空を睨み付ける。レーダーに映ったこのガラスドームを、捜索機が見逃すとは思わなかった。ここが鬱蒼とした木々に囲まれた森の奥でなければ、すぐにでも着陸しこの建物の探索にかかるところであろうが、さすがにそれは無理と判断して、ひとまず飛び去ったのであろう。とすると、奴らが出してくるのは……。
そこまでゲイリーが考えたところで、彼の耳に微かな駆動音が聞こえてきた。その音でゲイリーは察した。
「
やがて、そのゲイリーの予想を裏付けるように、駆動音は次第に大きくなり、ガラスドームの上に
……そこに、突然、閃光が走った。思わず、ゲイリーは両手で目を庇いながらも、そのひかりが降ってきた、ガラスドームの天頂を見上げた。すると驚くべきことに、そこには人影があった。それは亜麻色の長い髪の……。
「ニーア!」
ゲイリーは叫んだ。まさにその人影は、さきほど書架の向こうに姿を消したニーアであった。彼女はいつもの銀色のワンピース姿ではなく、中世の騎士の装甲にも似た漆黒の
ゲイリーは状況を把握した。閃光は、ニーアの両肩の筒から発せられており、そして、爆発音は、ニーアの放った閃光が命中し、ばらばらと破片を宙に散らす
彼女はガラスドームの上を跳ねながら、今や二機になった
それはゲイリーの目には、遠い異国の優雅な舞踊のようにすら映った。だが、
その永遠に続くとも思われた応酬は、唐突に楔が打たれた。二機の
ニーアはその隙を見逃さず、前面の一機に向かって、すかさず両肩から対空砲を発射した。何度目かの爆発音が響き、
そして、それに続く、ニーアの動きはより素早かった。彼女は背に手を回し、槍のような物体を自らの戦闘着から引き抜くと、自らの乗った
……そして、辺りに静寂が戻った。
激しい戦闘の後を窺わせるのは、ガラスドームの上空を煙らせる黒い煙のみである。それも風に吹かれて次第に薄れゆく様子を見ながら、ゲイリーは夢でも見たのでは無いか、と本棚のひとつに寄りかかりつつ思った。
だが、煙の薄れる向こうから現われた、すっくとガラスドームの上に立つ長い髪の人影が、そうではないと彼に現実を告げる。
漆黒の
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