第132話 アマゾネスエルフの国、ペシルミィフィア

「いててて……。」

 俺は鎮守の森の近くの木の上から落っこちて、擦り傷を作った挙げ句、尻もちをついていた。空中浮遊でそのままそーっと降りようとして失敗し、木に引っかかってバランスを崩してしまったのだ。空を見上げると、恭司がゆっくりと旋回し、俺が鎮守の森に入るまでの時間を潰そうとしているのが見えた。

 回復魔法で回復すると、アダムさんとフランツさんをマジックバッグの中から出した。


「フェ、フェンリルはついて来てないですよね?……だいじょうぶそうだな……。」

 フランツさんは周囲をキョロキョロと見回しながらそう言った。フランツさんもローマンさんほどじゃないにしろ、巨大なフェンリルが怖いのか。こうなると、ビビってない俺とアダムさんのほうが、むしろおかしいのかも知れん。だいじょうぶだ、ついて来ていないようだ、とアダムさんが言った。


「それじゃ、俺は先に1人で鎮守の森に入ります。お2人は後からゆっくりと、順番に入って来て下さい。どの程度を同時と、鎮守の森……というか妖精女王が判断するのか、わかんないんで。俺1人先に入っても、同行者が同時に入ったら、ひょっとしたら駄目かも知んないし。よろしくお願いします。」

「わかりました。」

「アマゾネスエルフは人食いだって言いますからね、見つからないように気をつけて。」


「え?」

 フランツさんが急におっかないことを言い出すので、俺は思わずギョッとした。

「そうなんですか?初耳です。」

「真偽のほどは分からないですけど、噂を聞いたことがあるんです。男を見たことがないから、男を同じ生き物だとは思わない、だから食べてもいいって思ってるんだって。」

 マジか。けど、エルフにも男っている筈だよな?確か。人間と違って美しいから、顔面偏差値で同種として認識してんのかな?


 確かに女性とは異なる見た目だから、見たことなかったら同じ生き物だとは思えないのかもしんねーけど、それでも、言葉を話す生き物を食べるかね?──あ!!そうか!

 俺たちは異世界転生勇者特典で、どの国の言葉も話せるけど、もしもエルフの国の言葉が違ったとしたら、現地の人たちにはエルフの国の言葉なんて話せないだろう。なにかわけの分からないことを言っている、見た目の異なる生き物、つまり食べ物だってことか?


 それならあながちありえないことでもないのかも知んねえけど、それでもエルフの見た目は人間のそれとあまり変わらないのだ。

 自分たちと似た生き物を食べるって、気持ち悪くなんねーのかな?

「もしもそれが本当だとしたら、恐ろしい話ですね……。俺たちの目的は、鎮守の森の中の光る木のうろです。見つからないようにそっと探しましょう。巨大な幹の太い木で、ぽっかりと幹に穴が空いているそうですから、すぐにそれと分かる筈ですよ。」


「わかりました。」

 俺はアダムさんの言葉にうなずいた。

「お気をつけて。」

 俺はアダムさんたちを残し、1人鎮守の森へと足を踏み入れたのだった。ここからはもう、“鎮守の森の守り人”と呼ばれる、アマゾネスエルフの国、ペシルミィフィア王国の領地なのだ。広大な森の中とはいえ、いつエルフたちに出くわすかも分からない。


 フクロウの姿の恭司は見つかっても問題ないだろうが、俺たちは完全なる不法侵入なのだ。それもエルフの国相手以外には、すべての国との国交を断絶してる国だ。しかも国交を断絶したキッカケが、人間にエルフたちがたくさんさらわれたからなのだ。恐らく人間の俺たちにいい顔はしないだろう。おまけに今の世代のアマゾネスエルフたちは、見たことのない人間の男という存在である俺たち。

 エルフたちに食べ物とだと認識されたとしても、人間扱いしてもらえたとしても、どちらにしろ危険なことには変わりはなかった。


 鎮守の森の中は人っこ1人いなかった。だけどいつ遭遇するかも分からないから、そーっとあたりをうかがいながら、光る木のうろを持つ、巨大な幹の太い木を探して、森の中を歩き回った。光っててデカいというだけあって、すぐに見つかるだろうと思ったのが甘かった。鎮守の森はとんでもなく広かったのだ。それこそ、エルフの国の建物の屋根すらも見えないほどに。俺は今、自分がどこにいるのかすら、わからなくなりそうだった。


 俺には千里眼があるから、地図を出せば迷わずに済むけど、アダムさんとフランツさんたちは、森の中で迷っているかも知れない。

 千里眼で検索したところ、2人はバラバラに行動していて、それぞれに森の中を探してくれているらしく、ゆっくりと地図の上で●が移動をしていた。恭司も既に森の中に入ったらしく、地図の上を移動している。

 アシルさん、カールさん、ローマンさんたちは3人一緒みたいだ。おそらく鎮守の森の中に入ってから合流したのだろう。

 

 アシルさんたちは前回も1度来ていて、妖精女王に会うことが出来ている。ちなみにその時も3人ずつにわかれて行動していたらしい。エンリツィオ、アシルさん、エンリツィオの恋人の3人と、護衛について来た部下たちとで、バラバラに行動したんだそう。だから中に入れば集まっても問題ないよって事前に言われたんだ。だけど4人以上で行動したことがないから、誰と行動するかは君が決めてね、と。恭司は飛べるし、見つかっても怪しまれないから、そろそろアダムさんとフランツさんと合流するか、と俺は考えていた。


 ちなみに鎮守の森の巨大な木のうろは、決まった場所にあるから、だったら直接そこで集合すればいいと思うじゃん?そうは問屋が卸さないのが、鎮守の森の面倒なところだ。

 鎮守の森の中は、目に見えない迷路みたくなっている。だから決まったルートを通らないと、目的の場所にはたどり着くことが出来ないんだ。大人数の兵士が一気に攻めてこようとしても、1度にたどり着けない、陣形も取れない。それを出口で順番に叩くのだ。


 それが“鎮守の森の守り人”、アマゾネスエルフたちの戦い方なのだそう。

 だけど俺の千里眼が、地図の上の俺の通った場所に、迷路を新たに書き加えてくれる。

 サクリファイスのダンジョンの壁と違ってこの道は動かないから、森の中を歩きまわっていれば、やがてはたどり着くのだ。だいぶ地図上に鎮守の森の地図が出来上がってきつつある。鎮守の森の中では、人間の魔道具が使えないから、通信具を使うのは無理だ。


 だから地図が出来上がり次第、俺が2人を迎えに行く手筈となっていた。

 その時、ピィーという鳴き声が空から聞こえる。見上げると恭司が一定の場所の上を飛び回って旋回していた。──見つけたのか!

 ちなみにフクロウって、夜にだけホーホーと鳴くイメージがあるけど、別に日中も鳴くし、ほんとは色んな鳴き方があるらしい。恭司は人間の言葉を話せるけど、一応鳥の言葉も話せるのだそうだ。その方が自然だから、木のうろを見つけたら、フクロウの鳴き声で空から教えてくれる手筈になっていたのだ。


 俺は急いで木のうろにたどり着こうとして──見えない壁に思い切りぶち当たった。

 いててて……。そ、そうだった……。

 地図と見比べながら、見えない壁に手を当てつつ、目的の場所へと近付いて行く。

「やっ……た……!!」

 ──光る巨大な木のうろだ!!

 縄文杉みたいに巨大な、ねじれたような形の木の幹の真ん中が、サクリファイスのダンジョンの入口とは比べ物にならないくらい、ぽっかりと口をあけて黄緑色に光っていた。


 この木のうろの奥のダンジョンに妖精女王がいるのだ。俺が光る巨大な木のうろに手をかけ、中に入ろうとした時だった。恭司がなぜか突然ギャッギャッ!と警戒するような鳴き声を上げる。そして俺の首の前に、2本の槍がジャッと交差して行く手を阻んだのだ。

「──そこで何をしている。」

 そっとほんの少しだけ振り返って目線を上げると、ミニスカートのような鎧を身にまとい、武器をたずさえた美少女アマゾネスエルフたちが、俺のことを睨んでいた。


「侵入者とはな。よくもここまでたどり着いたものだ。神聖な御神木に、卑しいやからが触れるな。──その手を今すぐ離せ。」

 クソッ!見つかった!アダムさんたちは無事だろうか?先に合流しなかったから、透明な迷路の中で、迷っていなけりゃいいけど。

 千里眼で見る限りは、アダムさんたちの周囲には誰もいなかった。まだ透明な迷路の中をウロウロさまよっている感じだ。とりあえず今のとこは無事みたいだけど、俺が捕まったことを知らせることが出来ない。こうなったら後のことは恭司にたくすしかなかった。


 俺は両手を上げて、そのままアマゾネスエルフたちに連れて行かれることとなった。

 牢屋に連れて行かれて、天井から吊り下がった拘束具に手首を拘束された状態で、俺はアマゾネスエルフたちの尋問を受けていた。

「……この国に来た目的を話してもらおう。

 なんのためにここに来たのだ。」

「素直に話せば開放してくれんのかよ?」

「それはお前次第だ。」

 嘘だ。さっき俺を捕まえた奴らが言ってたみたいに、光る木のうろを持つ巨大な木は、奴らの御神木とされているのだ。


 よそ者はそこに入ることも、ましてや触れることすらかなわない。そんな御神木に手をかけた俺は、死刑に決まっているだろう。

 俺1人なら、空間転移で逃げられそうだ。

 だけどこいつらに逃げ出すところを見つかったら、追手がかかってすぐにまた捕まっちまう。それに俺たちには、大人数で行動出来ないという制約があるのだ。下手にアシルさんたちと合流も出来ない。木のうろの中に入ってしまえばその限りじゃないけど、それまでは別々に行動する必要があるんだ。


 なんとかアシルさんたちやアダムさんたちに、先に木のうろの中に入ってもらう必要がある。そうすればこんなとこ、さっさと空間転移でオサラバだ。

 別のアマゾネスエルフが牢屋の中に入って来て、お前たち、武器の確認は済んだのか、とアマゾネスエルフたちに聞いた。たぶん他の奴らより少し偉い奴なんだろうな、身に着けている防具の飾りが派手で豪華な感じだ。

「はい、もう済んでおります。」

「……おまえたちの目は節穴か。なら、それはなんだ。膨らんでいるではないか。」

 そう言って──俺の股間を指さした。


 !!!!!?????

「武器を隠し持っているようだ。

 すぐにそいつを奪うのだ。」

「ハッ!!」

「──馬鹿やめろ!そんなとこ触んな!やだってえ!江野沢にも触らせてねえのに!」

 パンツの中に潜り込んだ美少女の手が俺のに触れ、瞬間俺のが反応しだしてしまう。

「やはり武器を隠し持ってるじゃないか。」

 と無遠慮に掴んで、無理やり俺のを引っ張り出そうとする。確かに股間の銃とか形容されるけど!!ある種男の武器だけど!!


「痛てててててて!痛い痛い痛い痛い!

 抜ける!引っこ抜ける!」

「……おかしいな、取れないぞ。」

「ホルダーで固定されてるんじゃないか?」

「取れてたまるか!」

「……いや、そんなものは見当たらない。

 仕方がない、切り落とそう。

 誰か斧を貸してくれ。」

「は!?馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿、やめろー!」

 美少女が手斧を持って俺に近付いてくる。

 俺は完全にパニックだった。


「な、なんだこの鳥は!どこから入った!」

「──恭司!!」

 突然恭司が牢屋の開いたままの扉から、牢屋の中に飛び込んで、空中で羽ばたいた。

「お前ら!よく見ろ!」

 そう言うと、途端に俺のズボンとパンツをクチバシでくわえて引っ張ろうとしてきた。

「あっ、馬鹿、やめろ!」

 恭司が俺のパンツをクチバシでくわえて引っ張り出したせいで、ズボンごと少しずつ、下にずりさがってゆく。

「恭司!馬鹿!何してんだ!

 やめろってえ!」


 ついにずるっと脱がされる。俺の鼠径部が人前にさらされる。それもこんな美少女ばかりの前で。俺は真っ赤になって思わず目を閉じて顔をそむけた。人によってはご褒美なんだろうが、俺にはそういう趣味はない。男の前なら笑いを取るために見せることもあるけど、ただただ恥ずかしくて屈辱的なだけだ。

「ほら見ろ!体の一部なんだよ!それにそうやって触られると、本人の意思に関わらず、反応してかたくなっちまうんだ!

 それを責めんな!どうしようもねえんだから仕方ねえだろうが!

 男は可哀想な生き物なんだよ!」


 恭司の言葉に美少女たちが、

「本当につながってるのか……?」

「確かに体の一部のようだ。」

「そんなおかしなものをつけて生まれてくるなんて……、確かに可哀想だな……。」

 と顔を近付けてマジマジと見ながら、口々に言っている。これは一体何プレイだ。

 こいつら本当に男を見たことがないのか?

「……悪かったな。武器じゃあないなら、服をなおしてやりな。」

 1番偉い人っぽい美少女がそう言い、俺はズボンとパンツを履かせてもらう。チンポジがずれて落ち着かないが、拘束されたままなので直せないので仕方がなかった。


「血の反応はなかったんだな?」

「はい、ありませんでした。」

「おい、お前、この先のエルフの国が襲われた。何か知ってることはあるか?」

「知らねえよ!なんだってんだよ!

 ──つか恭司!てめえ、よくも!」

「なんだよ、助けてやっただろ。」

「見せたがりのお前は大したことねえんだろうけど!むしろ見せてえんだろうけど!」

「切り落とそうとか言ってたじゃねえか。

 それよりマシだろ。それともこのまま男のシンボルをなくしたかったのか?」

「ぐぬぬ……。」


「──侵入者は口を割ったのか。」

 その時、凛とした声が響いて、空中に空いた穴みたいなものが、ブワッと広がったかと思うと、そこに足を組んで座っている、漆黒の髪を両サイドでくくった髪型、こぼれ落ちそうなほど大きな赤い瞳、幼く細いと感じる体つき、白すぎる肌を持つ美しいエルフの少女が、俺のことを見据えていた。今まで見たアマゾネスエルフたちの中で、1番の美少女だ。俺と恭司は、思わずその子に見とれてボーッとなってしまう。組んだ足の隙間からからパンツ見えないかな、と思ってしまった。

「女王!いえ、まだ……。」


 この子がアマゾネスエルフの女王なのか。とんでもない美人だし、言われてみると風格が凄い。見た目通りの年齢じゃあないんだろうな。エルフは不老長寿だって言うし。

「そこのお前。」

 黒髪赤い目の美少女エルフがそう言った。

「……俺か?」

「他に誰がいるんだ。先ほど、プレミディアというハイエルフの国が落とされた。わずか数名の人間によるものだという。にわかには信じがたいが、プレミディアの女王が逃げてきたのも事実だ。そこにお前が現れた。お前はなにかそいつらと関わりがある筈だ。」


「知らねえよ、今来たばっかだし!つか、俺たちもさっきまで襲われてたんだかんな!」

「……襲われていた?それは本当か?

 つまらん嘘をつくと……。」

 待てよ?エルフの国?確かそれって、ザシャハ料理の店長さん、カシナさんが……。

「──アスワンダム。」

 黒髪赤い目の美少女がピクリとする。

「俺たちを襲った、人間の殺し屋組織の名前だ。所属国はマガ。王族の依頼で動いているらしい。さっき“まれびと”のナガミミ族の集落を、ついでに滅ぼされたって、ナガミミ族のカシナさんとチギラさんが言ってたよ。」


「ナガミミ族の集落を!?それは本当か?」

「知ってんのか、ナガミミ族を。アスワンダムがエルフの国で捜し物があるとかで、そいつを奪いに行くついでに、ナガミミ族の集落を見つけて襲ったって、そいつらが言ってたらしい。なに探してんのかまでは知んねーけど。カシナさんは助けて、魔族の国に保護されたけど、チギラさんはそのまま奴らを追いかけてる。糸で他人を操る奴、他人の体を縮める奴、そういう変なスキルを使われて、どうしようもなかったって。俺たちもさっきまで、そいつらと戦って殺されかけたんだ。」

「……。」


 アマゾネスエルフの女王は、何ごとか考え込んでいる様子で、顎に手を当てて、顔と目線をそらして黙り込んだ。

「アイシャルティア。──その者が申していることは、どうやら本当のようだ……。」

「アザリュスティシア!駄目だ!

 そんな体で動いてはいけない!」

 アイシャルティアと呼ばれた黒髪赤い目の美少女の座っていたところは、どうやらベッドの前だったらしく、ベッドに寝かされていた、美しい銀髪、金色の瞳を持つ美女が、ベッドから無理やり体を起こして、通信に割り込んできた。その体は四肢が欠損していて、とてもむごたらしい姿だった。


「我らの国を襲った奴らの1人は、ナガミミ族を操っておったのだ。糸で他人を操る者、他人の体を小さくする力を持つ者たちは、確かにいた。……そして、我らの国の国宝を、まんまと奪っていきおったのだ……。」

 ハイエルフの国の国宝?それがアスワンダムの狙いだったのか。ルドマス一家の魔道具を奪ったのも、俺たちを襲う為だった。つまりは、ハイエルフの国の国宝も、俺たちを襲う為に奪った筈だ。なんなんだ、その国宝って。なんでそいつら、そんなものがハイエルフの国にあるって知ってやがったんだ?


「ぐっ……。ガアッ……!!」

「アザリュスティシア!!

 急いで治療を!!

 さあ、じっとして。力を抜くんだ。私の魔力を受け入れろ。今のままでは、魔力が足らなさ過ぎて、君を治すことが出来ない。」

「ゲホッ!あっ……。」

「さあ、回路を開いて……。」

 そう言いながら、アイシャルティアは、アザリュスティシアの服を、部下から受け取ったナイフで切り裂いて剥がしていく。


 な、なあ、まだこっちとつながってんだけど……。その治療、そのまますんの?

 四肢のもがれた美しいアザリュスティシアの体が、隠すすべもなく、俺たちの目の前にさらされる。座らせるのに股を開かせているから、ええ、もう、モロにバッチリです。

 目の前がチッカチカする。

「さあ、お前たちも強力してくれ。アザリュスティシアが回路を開けるようにな。」

「はい。」

 そう言ったかと思うと、アイシャルティアとその部下たちが、なんとアザリュスティシアの体を愛撫しだしたではないか。


 ねえ、回路を開くって、そういう意味?

「あっ……、ああっ……!」

「頑張るんだ!アザリュスティシア!」

 真面目に治療してるんだろうけど、俺と恭司の目には5Pのビアンさんたちのソレにしか見えないわけで……。トロットロに溶かされてるアザリュスティシア女王が、まあエッロいんですよ。その四肢がないから、新たな性癖に目覚めそうな気すらしてくるわけで。

 へええ、女の子って、そこに指を入れるんだあ……。思ったより下の方なんだな……。

 あっ、同時に!?同時になんですね!?

 出てる!なんかすっごい出てる!


 ふむふむ、そうやって、優し〜く指を動かしてやるといいと……。ガシガシやるといいってもんでもないんだな、むしろ全体的にゆっくり丁寧だな。ビアンさんのは生々しくて参考になるなー。男は男同士、女は女同士のほうが、イイトコ分かるって言うもんな。俺と恭司は、瞬きを極力せずにガン見です。

 ビクンビクン跳ねているアザリュスティシア女王の体。痛いわけじゃなく、気持ちがいいからなのが分かる。治療の為とはいえ、友だちにこんなことされるの、恥ずかしいだろうなあ。他のアイシャルティアの部下たちにも、特に俺らにも見られてるわけだし。


「ああーっ!!!」

 悲鳴とともに、アザリュスティシア女王の額に第3の目みたいな光りが浮かんだ。

 え?イクとエルフって、そんなところが光るの?分かりやすくて恥ずかしいね?隠そうと思っても世界中にバレバレでんがな。

 そこにアイシャルティアが、自分の額に浮かんだ第3の目みたいなところから、ひとすじの光りを注ぎ、アザリュスティシア女王の額に吸い込まれていく。それで魔力を移し終えたのだろう、アザリュスティシア女王の回復魔法を使った治療が始まったのだけど、四肢の欠損を元に戻すまでには至らなかった。


「ふう……、これでだいじょうぶだ。」

 アイシャルティアが額の汗を拭いながら、ため息をついた。大変だったのだろう。まあ頑張ってましたものね、竿役として……。

 魔力が切れると俺ら人間でも気絶するし、他の種族は死ぬこともあるというからな。

 死ぬ寸前の者に回復魔法は効かない。

 これは俺ら人間でも同じことだ。

 だから回復魔法で傷を治療する為には、ある程度魔力を事前に与える必要があったのだろう。要するに、意識飛ばして、体の力を全部抜くくらいじゃないと、他人の魔力を受け入れられないってことなのかな。


 理屈はなんとなく分かるんだけど、いくら男を見たことがないからって、女王の痴態を男の前にさらすのはいかがなもんかと思う。

 俺ら的にはごちそうさまって感じだけど。

 他のアマゾネスエルフたちも、気にせず協力してたし、エルフ的には見られて気になるようなことじゃないのかな?種族が違うとそういうこともあるのかも知んない。

 そう思ったんだけど、それはアマゾネスエルフたちだけだったみたいで、通信越しに俺とバッチリ目が合ったアザリュスティシア女王は、カーッと顔を赤らめてしまった。

 あ、すいません、しっかり、ハッキリ、ばっちり、ドッキリ、ぜんぶ見てました……。


「あ、なあ……。アザリュスティシアさんだっけ?その体、俺が元に戻そうか?」

 俺はせめてもの罪滅ぼしにそう言った。

「なんだと?そんなことが出来るのか!?」

 アイシャルティアが驚いて俺を見る。

「うん、人間と動物以外の体には核ってのがあるから、なおせる奴にはなおせるんだろ?

 魔族の体も獣人の体もなおしたことがあるからさ、エルフもたぶんいけると思うよ。

 なあ、そっち行ってもいいか?つか、さすがにそっちの部屋とは距離がある筈だから、この距離だとなおせるか分かんねえし。」

「女王!危険です!」


「よい。“鎮守の森”が番人、ペシルミィフィア王国女王、アイシャルティアが命ずる。

 そこな者、どうか我が友人、アザリュスティシアをなおしてやって欲しい。」

 アイシャルティアが、クイ、と人差し指を手招きするみたく動かすと、拘束具が外れ、

「わわっ!?」

 俺の体が突如として浮かび上がり、ただの映像通信だと思っていた穴を通じて、俺はアイシャルティアの寝室に移動してしまった。

「うわっ!?……痛って〜……。」

 俺は絨毯の上に尻もちをついた。恭司も慌てて通信の穴から飛んで俺を追ってくる。


 フカフカとはいえ、高いところから落とされたから、腰をしたたかに打ってしまった。

 護衛の兵士たちが、すぐさま俺の前に槍を突き付けて、行動を制限してくる。

「さあ、どうするというのだ?」

 俺は立ち上がると、アザリュスティシア女王の前に手をかざした。

「スキル合成、再生、回復魔法、千里眼。

 対象指定、アザリュスティシア女王の失われた四肢。──リバース!!」

 アザリュスティシア女王の体が光る。

「おお……!これは……!!」

 ぐんぐんと伸びていく手足に驚愕してる。


「な、なおった、のか……?」

 アザリュスティシア女王が、自分の手足をベッドの上で動かしてみて、手のひらを握ったり開いたりして、問題がないかを確認していた。うん、だいじょうぶみてえだな。

「アザリュスティシア……!ああ……。良かった!!君の美しい手足が、完全に元に戻っている。伝説では聞いたことがあったが、この力を使える者を目の当たりにするのは初めてだ。そこな者、感謝する。そなたを我がペシルミィフィア王国の国賓として迎えよう!

 皆の者!この者を丁重にもてなすのだ!

 まずは湯浴みからだ!!」


「え?いや、感謝してくれるのはありがたいんだけど、それよりもあんたに協力して欲しいことが……、って、ええ!?」

 俺はアイシャルティアによって、再び通信の穴から別のところに飛ばされてしまった。

「痛ってて……。なんで毎回高いところから落っことすんだよ。丁寧にやれよな。

 な、なに、あんたら……。」

 見上げると、俺を見下ろしている、アマゾネスエルフの美少女たちが4人。

「我らの国では、国賓はその体を清めてから食卓について貰うことになっておる。

 まずはその者たちに体を洗わせよう。」


 通信の穴越しに、アイシャルティアがそう言ってくる。え?まさか……。

 アイシャルティアが言うが早いか、目の前の美少女たちが全裸になった。

「国賓をお手伝いさせていただく名誉をたまわりました、ナーナでございます。」

「イシテでございます。」

「エレーンとお呼びくださいませ。」

「ゾアナと申します。」

 全裸の美少女たちが次々に挨拶してくる。

 ほんの少し尖った耳以外は、人間と同じ肌の色と体。白色人種寄りで、大きくて切れ長の目をした可愛い子ばかりだ。


「あの、俺……自分で洗えますから……。」

 ありがたいけど4人は多い。さすがに裸の女の子の数が多いと、覗けるなら覗きたいけど、こちらが見られることに萎縮しちまう。

「そういうわけには参りませんわ。

 私たちが叱られてしまいます。」

「そうですわ、つとめを果たせませんと、ムチで打たれてしまうやも知れません。」

「え?そ、そうなんですか?」

「はい。」

「ええ。」

 それはさすがに申し訳ないな……。覚悟を決めて洗って貰うことにしたのだけれど。

「あの!指じゃないと駄目なんですか!?」


「清めの聖水を肌に直接塗り込むことになっておりますので。もう少しで終わります。」

「あ!あの!そこは自分で……!!

 あ!ちょっ……!駄目だってえ!!」

「まあ、変形する特殊なお体と聞いてはおりましたが、本当に変形するのですね。」

「あ、あんまりみんなでジロジロ見ないで下さ……──つか、もうそこ触らないで!!」

 聖水を直接塗り込むとの言葉通り、俺のを握った白魚の様な指が前後する。金玉痛い!我慢してるから金玉痛いんだってえ!!!

 涙目の俺を見ながら、羨ましいことされてる癖になんで文句言ってんだお前は、と恭司がブウたれながら俺を睨んでくるのだった。


────────────────────


曜日を勘違いしていて、先月の自己ノルマ果たせておりませんでした。

どちらにせよ最近体調が悪いので、無理だったんですが……。

来月入院して手術の予定です。

ひょっとしたらノルマ分が書けないかも分かりませんが、全身麻酔が切れて体調いけそうなら、逆にその間にアップ出来たらなと思っております。


ようやくアマゾネスエルフの女王と、ハイエルフの女王の治療シーンが書けました。

どこまで具体的にするか悩みましたね。

そんなわけでこの程度におさまりました。

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