第49話 美少女に特別なオシオキ

 パレードが終わり、元クラスメートたち以下、騎士団の面々は、旧ニナンガ城──現在は正式な城として認められた、エンリツィオの城──の地下牢に移されていた。

 ドアを隔てたすぐ近くに、公然の秘密となっている、エンリツィオのカジノがあるのだが、娼館からパートナーを伴って、地下牢に来る客も多いらしく、入り口でエンリツィオの部下に断られ、何だよ、今日は地下牢プレイ出来ねえのか?とゴネているのが聞こえてきた。

 どっちが入る側なんですかねえ。


 それぞれがそれなりに大きく、1つの部屋に20人は余裕で収容可能だ。

 エンリツィオの部下の手によって、牢屋に一人ずつ順番に、口枷と手枷をされたまま中に押し込められ、冷たい石畳の床に直接座らされる。

「──街中を引き回されんのが、パレードのついでで良かったな?

 この国の法律に従うなら、罪人は全裸に手を紐で繋がれて、並ばされて国中引き回しだぜ?」

 俺は全員が牢屋に押し込められたのを見て、笑いながら言う。


 実はその案もあったのだが、アシルさんが、パレードの際に、新国王よりも全裸の囚人が目立つのは、ちょっとねえ、お祝い事の印象の方を強めたいし、と難色を示した。

 俺としては全然、パレードの馬車の後ろから、全裸引き回しで歩かせても構わなかったのだが、篠原までもが、あいつらへの仕返しと、女の子を大勢の人前で全裸にするのは、ちょっと違うかなあ、何て言い出すものだから、完全に却下になった。

 聖人君子ですこと。


 だが俺としては、元クラスメートが知らない事実を、どうしてもみんなに知らせてやりたいという気持ちと、最後にそれに伴う罰を与えてやりたい相手が一人だけいた。

 そして今、その人物が単独で牢屋に入れられ、口枷をされ、手首を手枷で天井から繋がれている。

「──いい格好だね、皆川紗代子さん。

 君は一人だけ、みんなと違う特別扱いを受けてたからね。

 みんなと同じ罰だけじゃ、足りないと思わない?」

 怯えた目で、皆川が俺を睨んだ。


「みんな知らなかったろ?

 皆川だけ、みんなと同じ訓練に混ざらなかったホントの理由。

 回復魔法の使い手として、特別な訓練をさせられてると思ってたろ?

 違うんだなあ、それが。」

 元クラスメートたちが、不思議そうに皆川を見る。あえてクラスメートたちは、男女に分かれて、皆川が見える向かいの牢屋に投獄してあった。


「俺の言葉じゃ信用出来ないだろうからね、直接この国の人たちに話して貰おう。

 竜騎士団長でいいや。連れてきてよ。」

 俺はエンリツィオの部下に命じて、牢屋から竜騎士団長を連れ出し、口枷を取らせる。

「──さあ、説明してよ。

 アンタらは、どんな風に皆川さんに訓練させてたの?」

 竜騎士団長が、ゴクリ、とツバを飲み込む。

「……訓練は……、特にさせてはいませんでした。」

 口枷をされたままでも、元クラスメートたちがざわつき出したのが分かる。


「おっかしいねえ?

 皆川さんは、みんなと同じく、レベル5の回復魔法を使えるようになるまで、レベルが上がったっていうのに。

 どうやって、そこまで皆川さんのレベルを引き上げたのさ?」

「……魔法師団や剣騎士団、竜騎士団がそれぞれ交代で、城の中に捕縛された弱った魔物を何体か、毎日連れて来るのです。

 それを彼女が杖やナイフで一回攻撃した後、我々がトドメをさします。……それで経験値を吸っていました。」

 みんなの目の色が怒りに染まる。


「──俺が城にいた時、みんなは俺を養う為に、毎日色んな仕事をしてくれてたよね。

 訓練の後に遅くまで仕事をさせられて、とても辛かったんだよね?だから俺を追い出すことを決めたんだったよね?

 全員バラバラのことを、毎日交代でしてたから、他の人たちがどんな仕事をしてたのか、お互い知らなかったと思うんだけど、彼女は毎日、どんな仕事に携わってたの?」

 竜騎士団長が逡巡してから呟くように言う。

「……それも……させていませんでした。

 王のご命令で、彼女は特別扱いするように、と。」

 口枷越しに漏れる声。体を揺さぶる音。

「だってさ。

 みんな、どう思う?

 皆川紗代子は、──Guilty or Not Guilty?」


 皆の怒りのボルテージがマックスになる。俺の背後で、唯一動かせる足を、ダン!ダン!と床に叩き付けて打ち鳴らす。

「──どうやら、みんなも有罪を望んでるみたいだ。

 皆川さん、覚悟決めなよ?

 ああ、心配しなくても、命を奪う訳じゃないからさ?」

 俺は親指と中指で、パチン、と指を打ち鳴らす。

 エンリツィオの部下が、皆川の入れられている牢獄の扉を開け、その中に恭司が羽ばたいて行った。


「皆川さんも今、その下、履いてないんだよね?脱がされちゃったもんね。

 これからこのフクロウが、皆川さんのスカートをまくるけど、足は動かせるでしょ?

 頑張って抵抗してよね?

 じゃないと、クラスメートの前で、下半身丸見えだよ?」

 笑いながら言う俺に、皆川の顔色が変わる。


 恭司が皆川に飛びかかり、速攻でスカートをつまんでチラリとまくった。見えそうで見えないのが逆にエロい。下を履いていないと知っているだけに。

 皆川は足を動かしながら恭司の攻撃に抵抗するが、そのたびチラチラとスカートが揺れる。

 ほんの一瞬、前がまくれて見えそうになり、体をひねってかわした瞬間、恭司が思い切り後ろからスカートをまくりあげて、お尻が丸見えになる。


 男子生徒が床を叩く足音が更に強くなる。

 皆川は目に涙を溜めながら、女子生徒たちの方を見て、救いを求める表情をしたが、女子生徒たちは、白けたような冷めた目をして、皆川を突き放した。

 今まで特別扱いされていたのを、みんなに黙って、さも自分も訓練や仕事が辛いかのように振る舞っていたのだ。

 元々美人で人気があっただけに、みんなの裏切られた気持ちも強いのだろう。誰も皆川の味方をする奴はいなかった。

 それを見た皆川が、絶望の表情になる。


 俺をはじめ、元クラスメートたちも、しゃがんだ体勢なので、少しまくれるだけでも結構見える。

 特に俺は、元クラスメートたちからも見えるよう、檻の真ん前にしゃがんでいるので、多分、元クラスメートたちよりも、見える機会は多い。

「ほらほら、もっと頑張ってよ?

 別に普通にみんなの前で、丸出しにしてやってもいいんだけど、皆川さんにもチャンスを与えてあげてるわけだからさ?」

 俺はしゃがんだ膝に肘をつき、その手に顎を乗せながら、特等席でめくれる皆川のスカートの中を見ながら、笑いながら言った。

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