第43話 ざまぁ、カウントダウン

「いやあ〜盛り上がったな〜。

 どの女のとこに行っても受け入れてくれてよぉ。さすが娼館から来てるオネー様方はエロに寛大だわ。」

「……。」

「そしたらだんだん、俺がどの女の胸に潜り込むか、どいつの乳首をかじるか当てる賭けが始まっちまってさあ。

 ついには別室に連れてかれて、ありゃ、VIPルームってんだろな。各国のお偉方と、見るからにおっかねえボディガードが一堂に会して、何をさせられるのかってビクビクしたぜ。

 そこで何を賭けの対象にしようっつったと思う?

 俺を使ったパンティー脱がしゲームをしようって言うんだぜえ?

 いい年したオッサンたちが、そんなんいくらでも見慣れてるだろうに、オッサン大興奮だし、俺も大興奮よ。

 あれだな、紐パンやTバックは脱がせやすいけど、普通の奴は脱がせ辛いな。

 まあそれでも、最後は全員下半身丸出しにしてやったけどな。」


「……情報は?」

「お前にも見せてやりたかったぜえ、カワイコちゃんたちが大勢並んで、下半身だけ露出させられてる姿。

 ああいうのを、着エロってんだろな。

 前から後ろから、ツンツンしまくってやったぜ。

 特に良い反応する子がいてさあ。

 その子をつつくたびに、いけえー!イかせろぉー!って大盛りあがりよ。

 そしたら、俺がつつきやすいように、その子がテーブルの上で股を開いてくれてよ。

 つついてかじって頭グリグリ突っ込んでやって、最終的に全身に潮を浴びちまって飛べなくなったのにはビビッたが、上手なのね、ってキスまでしてくれたんだぜ?

 オッサンたちも拍手喝采よ。

 いやあ〜最高の夜だったぜ。

 ……わりいな匡宏、俺、一足お先に女をイかせちまったぜ。」


「──情報は?

 じょ、う、ほ、う、は?」

 俺はドヤ顔で俺を見てくる恭司を丸ごと掴んで、ちょっと苦しくなる程度に力を入れる。

「──お前俺の為に情報集めてくるっつって、エンリツィオのカジノに潜り込んだわけじゃねーのか!」

「わ……、わりぃ、ちょっと悪ノリし過ぎてよ。

 けど、しっかり情報は掴んで来たぜ?

 俺をナメるなよ。」

「何だ、やることはちゃんとやってたのか。」


「まずアプリティオだ。どうやら3組はそこに召喚されたらしい。」

「それは知ってる。エンリツィオから聞いた。」

「何だ、知ってたのか。

 じゃあその国の王女が、お前が探してる鑑定ってスキルの上位互換の、心眼ってのを持ってることも知ってんのか?」

「それも聞いた。その国に鑑定師が投獄されてるってことも知ってる。」

「ふうん?でもこれは知らねえだろ?

 その王女が、江野沢にソックリだって事まではよ。」

「──何だと?」


「召喚された勇者たちが連れて来られて、王と王女に謁見する際に立ち会ってた、アプリティオの偉い奴が遊びに来てたんだが、そこでクラスの奴らが、王女のことを見た途端、エノサワ!アヤナ!って次々に叫んだらしい。

 王女は困惑してたみてーだがな。」

「どういうことだ……?」

「そいつは分からねえが、少なくとも、江野沢がその場にいた上で、王女の姿が江野沢に似てるってことに驚いたってより、いる筈のねえ江野沢が、そこにいることに驚いて呼びかけたって感じがしねえか?」

「確かに……。

 ──困惑してたってことは、記憶がねえってことなのか……?」


「つまり、召喚されたクラスのメンバーの中に、江野沢はいなかった。

 だがなぜか王宮の王族の席に、江野沢によく似た女が座ってた。

 俺がこの姿になったみてーに、勇者じゃなく、王族に転生した可能性は捨てきれねえ。」

「けど、転生って、一度死んで生まれ変わるってことだろ?

 俺たちは勇者召喚の弊害で、元の姿を保ったまま、転生して来たけど、エンリツィオいわく、普通に死んでこの世界に来た転生者は、本来赤子の姿で産まれて来るって言ってたぜ?

 王女は突然そこに現れた訳じゃなく、元々その国にいたわけだろ?

 既にいた人間に産まれ変わるなんてことあるか?」


「王女は最近まで謎の病に伏せっていたらしい。もしその間に死んでたら、似た体に魂が入らないとも限らねえんじゃねえか?」

「うーん……。」

 ありえない話ではない。本人に記憶がないというのも、転生から間がない為に、記憶が戻っていないだけという可能性もある。

 別の人間の体に入ったのであれば、本来の持ち主の元々の記憶が優先されたとしても不思議ではない。

 取りあえず、召喚された3組のメンバーの中に江野沢がいなかったのであれば、その王女とやらに会ってみるしかない。

 だが、もしまったくの別人であった場合、江野沢はどこに行ってしまったと言うのだろう。


「それで、アプリティオに向かう前に、まずはお前の元クラスメートだろ?

 そいつを片付ける前に先に江野沢を探してもいいが、お前がスッキリしねえだろ。」

 こういうとこ、ホント分かってんなあ、コイツ。

「まずは隠密で城に潜入してみようと思ってんだ。

 俺が城から離れて大分時間も経ってるし、あいつらが今どんな風に過ごしてるのかを知りたい。

 俺は一切訓練に参加してねえし、あいつらがまだ訓練で外に出てるとしても、一人になる時間があるのかすらも、分かんねえしな。

 それに、他の奴らと違って、皆と訓練に出かけない、回復魔法使いの皆川紗代子に、どうすりゃ近付けるのかを調べる必要がある。」


「ああ、あの子か、かわいいよな。

 あー、お前を苦しめたクラスの女全員、人前でパンツ脱がしてやりてえわ。

 スキル奪うの、魔法使う奴らだけなんだろ?

 他の奴らはスキル持ったまんまだし、何にもしねえのもムカつかねえか?」

「ははっ、そいつはいいな、チャンスがあればやってやれよ。

 どうせ仕掛けるのは夜なんだ。

 お前なら、闇に紛れて近付けるだろ?」

「いいな。やってやるぜ。

 俺も俺なりに城を調べてみる。

 まずは情報収集だ、あいつらが気を抜いてる間に、一網打尽にしてやろうぜ。」


 俺が昼間、恭司が夜に、それぞれ城の状況を調べることになった。

 皆川の行動はすぐに知れた。

 魔法師団や剣騎士団、竜騎士団がそれぞれ交代で、城の中に捕縛された弱った魔物を何体か連れて来て、皆川が杖やナイフで一回攻撃する。その後他の奴らがトドメをさす。それで経験値を吸っていたのだ。

 こんなところを見せたら、クラスの他の奴らが不満爆発だろう。だからどこにも属さず、誰も皆川のレベル上げの方法を知らなかったのだ。


 レベルの低い回復魔法使いはパーティーに入れて貰いにくく、ソロ狩りも難しい為、初期のレベル上げが難しい。

 当然自分よりレベルの高い魔物ばかりだから、何らかの方法でダメージを与えないと、経験値は吸えない。

 だからと言って、聖魔法に続き貴重な回復魔法の使い手とはいえ、随分と過保護な対応だな。

 初期の頃ならともかく、既にレベル5なんだから、剣弓テイマー組の団体訓練にだって混ざれる筈だ。

 周りの男たちがデレデレしてるが、美人だから甘やかしてるとかじゃ決してねえんだよな?と、正直胸ぐら掴んで問いただしたい。


 剣と弓の奴らは週の内3日が城で剣騎士団相手に訓練、残りが隊列を組んでの、近くの森での魔物狩り。

 テイマーは2人いるが、週に2日がテイムした魔物の操り方の訓練、1日が竜騎士団との森での魔物狩り、残りが剣と弓組と合同で森に入る。

 魔法スキル持ち組は、魔法師団の何人かと共に、毎日森に魔物を狩りに行く。常に後衛だから、隊列練習がいらないのだろう。

 全組、暗くなるまでそれは続く。

 魔法スキル持ち組は、出かける時はゾロゾロと連れ立って行くが、森に入った後は魔法師団とも別れ、各自単独行動だった。

 これなら魔法スキル持ち組だけが森に入る時であれば、容易に一人ずつに近付ける。


 しかし城の近くの森は不思議だった。どこかから連れて来ているのか、ダンジョンでもないのに、毎日一定数の魔物がいる。

 城の外も魔物はいるが、産み増やすタイプなので、まとめて狩ったら一定期間湧かなくなる。

 森が住処なのだとしても、毎日大勢やってくるのに、住処を移そうとは考えないのだろうか。


 この辺りは経験値目当ての初心者が多いから、大半はパーティーを組んでダンジョンに潜るのだ。

 ドロップ品である程度稼げるし、何より時間で定期的に湧く。

 ドロップ品の武器やアイテムは、そのままでも使えるし、鍛冶屋が溶かして打ち直すのにも、家を建てたりするのにも使える。


 だがダンジョンの外の魔物の素材は、例えば毛皮にするレッドグリーフなんかは、取り過ぎても値崩れしてしまう。

 レアな魔物がいないこの地域では、肉を食べる用か、傷のない状態で倒すのが難しく、素材が珍重されるブルーレリーフ以外は、そこまでまとめて狩ろうとする人間がいない。


 俺は調べた内容を宿屋で恭司と共有することにした。

「魔法スキル組は外で単独行動してて、周りに誰もいなかった。まずは一人ずつに近付いて、スキルを奪おうと思う。

 魔法が急に使えなくなっても、単独訓練だから人に知られることはない。

 知られるのが怖くて、みんな口をつぐむだろうから、むしろ俺が姿を現して脅して黙らせたりしない方がいいと思う。」


「確かにそうだな。

 自分だけがスキルがなくなったと知られれば、お前と同じ目に合うのが怖くて黙ってると思うぜ。

 他の奴らに相談しようにも、裏切られない保証はねえ。なんせ一度お前を裏切った連中だからな。

 着のみ着のまま放り出されたお前の姿を見てんだ。今はニコニコしてても、誰を同じ目に合わせてもおかしくねえって、みんな腹ん中じゃそう思ってるだろ。

 ──明日は我が身、ってな。」

 俺は無言で頷く。


「それより妙なことがあったぜ。

 最初はなんでそんなとこに用があんのかと思って見てたが、気にして行動を観察するようにしてたらよ、宰相って呼ばれてる野郎が、毎晩皆が訓練してる森へ、一人で出かけてくんだ。」

「──森へ?」

「追い掛けて森へ入ると、いつも姿を見失っちまうんだが、一定時間経つと、森から出て来て城に戻るのさ。」

 なにゆえ毎晩一人で森の中に?

 俺は理由が分からず首をひねった。

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