第一部 王宮復讐ざまぁ編

第4話 ネクロマンサーへの道

 話は戻って、俺がどうやってここまでの戦力を身につけたかについて話そう。

 テイマーという職業スキルについて、最初に絶望したのは、一体ないし、多くても二体の魔物または動物しかテイム出来ないという事実だった。しかも二体のテイムはかなりのレアケースだという。

 出来る場合はテイマーの後ろの()が2つあるというから、俺は一体しかテイム出来ないことになる。


 強い魔物を次々テイムして、奴らに対抗しようとする目論見は簡単に崩れた。

 通常はより強い魔物に乗り換えてそれを使役するのだが、俺はユニフェイを手放すつもりがなかった。

 今は懐いてくれているように見えるユニフェイも、所詮はテイムされているだけに過ぎない。例え偽りの愛情でも、今の俺にとって味方はユニフェイだけなのだ。


 次に絶望したのは、レベル上げの最初の段階でテイマーは野良パーティー狩りで人気がないということだった。

 強い魔物をテイム出来ないし、完全に寄生狩りになるからだ。

 荷物を運べる動物をテイムして、荷物持ちとして同行させて貰いおこぼれを貰うという、なんとも情けないスキルだった。

 スキルの移動だけでもレベルは上がるが、お金を稼ぐ為には狩りの出来るクエストを受ける必要がある。


 ちなみに現在の俺のステータスはこんな感じだ。

 ───────────────────

 国峰匡宏

 16歳

 男

 人間族

 レベル 17

 HP 4000

 MP 19600

 攻撃力 636

 防御力 517

 俊敏性 358

 知力 1137

 称号 異世界転生者 すべてを奪う者

 魔法 生活魔法レベル6 回復魔法レベル2 

 スキル       テイマー(岳飛:フェンリルの幼体) 鍛冶職人 アイテムボックスレベル1 調理 解体 再生 食材探知 索敵

 ───────────────────


 レベル4になった風魔法はユニフェイに戻した。

 あれからも街に繰り出したが、バレることを恐れて中々人に触れることが出来なかった。自然に人の体に触れるというのは案外難しいものだと分かった。

 奪えると分かって、最初の時より俺が意識し過ぎて不自然になったというのもある。ようやく1つ奪えたが、まあまあ使えそうなスキルなので良しとした。


 回復魔法はそれ自体が珍しいものだが、戦闘に使えるのがレベル5からと言われていて、レベル1だとせいぜい指先の切り傷を治す程度。レベル2で回復ともう少し大きな傷をふさげる。

 レベル5にするには俺自身のレベルをあと30引き上げる必要があるが、レベルの上がりやすい貴重な低レベルの時に、クエスト参加目的の回復魔法の為だけに、レベルアップをする気はしなかった。

 もっとレアな魔法やスキルをたくさん手に入れた後にレベルを上げれば、魔導師レベルの魔法が一気に手に入るのだ。


 俺個人のレベルをどれだけ上げても、ステータスの見えるスキル持ちがレアで、レベルを見せる事が出来ない。

 ましてやユニフェイは一見普通の犬にしか見えず、フェンリルだということを俺が隠す気がなかったとしても、鑑定スキル持ちにしかそのことが証明出来ない。

 レベルはギルドで証明して貰えても、テイムしている魔物が使えると判断されなければ高ランクのパーティーに混ぜて貰えない。


 だが俺の冒険者ランクで受けられるものは、ソロだと採取のみだ。まずは急いで冒険者ランクを引き上げる必要がある。

 受けなくても出来なくはないのだが、ギルドに所属した以上他の冒険者が討伐していた場合、クエストを受けずに同じ場所で狩りをすると罰金があるし、討伐した獲物を横取りされても文句を言えないばかりか、最悪登録抹消になる。


 防具だって揃えたいし、手持ちのお金は余裕があるわけじゃない。

 まずは生活の保証がなければ身動きが取れない。

 手に入れたスキルや魔法をいずれ売りに出そうと思っているが、そんなものを取り扱っている店はない。

 魔法、職業スキル。それもレベルが予め上がっているものを努力せずに金で手に入れる事が出来る。

 いくら出しても買いたい奴は大勢いる。必ず売れるのは分かっている。

 売るなら闇社会。

 だが、自分自身に力がなければ利用されて終わる。その為にも金と仲間が必要だ。あいつらのように、裏切らない仲間が。


 使役する魔物が最も確実だし、同じ対象に何度もスキルを移すことによる影響が現時点ではまだ分からないことを考えると、移せる対象も多いに越したことはない。

 俺はその為に狙っているスキルがあった。

 〈鑑定〉

 欲しいスキルや魔法を持っているかを判定する。

 それと、スキルをやり取りするだけで、俺のレベルは上がったが、渡された方がどうなるのかを確認したい。

 〈隠密〉

 対象者に気付かれずに接近する。

 そして、──ネクロマンサー。

 死者やアンデッドを操る職業スキル。

 この世界にそれがあるかはわからないが、テイマーは一体でも、ネクロマンサーなら複数の魔物を操ることが出来るからだ。

 冒険者ギルドによると、魔法を使える魔物自体上級で、この国では数が少ないとのことだが、アンデッドにスキルや魔法を移せば、簡単に高レベルなアンデッド軍団の出来上がりだ。


 ネクロマンサーのスキルを持つ魔物か人を探す必要があるが、ソイツを狙うと決めて冒険者ギルドに情報を聞いたところ、ネクロマンサーを職業としている冒険者はかなり数が少ないらしい。

 少なくとも俺が登録した冒険者ギルドの中には存在しなかった。オマケにこの国には、ほとんどネクロマンサーが出たという記録もないらしい。

 ダンジョン内専門で現れる魔物で、ネクロマンサーの湧くダンジョンは、一定の期間で時間湧きするダンジョンの中には存在せず、まれに現れる特殊ダンジョンの1つなのだそうだ。


 奪うには、かなりレアなほうのスキルだと言えた。

 鑑定も、王宮に1人、魔法研究棟に2人、ここから離れた、もっと強い魔物がたくさん湧いている地域に4人と、知られているだけでもかなり数が少ない。

 平均でいうと10年に一人見つかればいい方で、戦闘職以外では唯一、鑑定を持っているだけで一生食いっぱぐれないと言われる程のレアスキルなのだ。


 王宮の鑑定人から奪うのが最も確実だが、城勤めの人間は全員城の中で暮らしており、城の外に出る許可がない。

 家族と共に城で暮らすか、たまに家族が会いに来る程度で、自分から家族に会いに行くには城勤めを辞めるしかないことは、城での暮らしで分かっている。


 まずは隠密だ。

 これはそこまで珍しくもない。冒険者や城勤めの兵士でなくともたまにお目にかかるらしく、隠密しかない人間であれば、犯罪に身を落とすことも多いスキルとのことだ。

 犯罪者は基本、城の地下牢に捕縛されて強制労働を強いられるか、俺のように街から放り出されるが、犯罪の程度によっては、刑務所のようなところに送られる者もいるらしい。


 冒険者は常時スキルを使っているので、なくなればすぐに気付くだろう。

 いずれは、すべての人間からスキルを奪ってやろうと思っているが、今はまだ目立ちたくはない。

 狙うはスキルを活用していない街の人か、もしくは──犯罪者。

 俺は情報収集の為、酒場にくりだすことにした。

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