第三話 集う魔性 運命の遭逢
集う魔性 運命の遭逢 1
――月の欠けた、誰をも孤独にさせる
大地の熱は虚空を満たし、
数多の生命をまほろばへ導く――
繁華街の夜を彩る明かりから抜け出し、坂になった風も通らないほど狭い路地を進むと、木立の茂る庭園が見えてくる。
庭園の入口には褪せた土煉瓦色をした一対の石柱が立っていた。朽ちかけているのか、片方の柱は僅かに傾き、この庭園の歴史の古さを物語っている。
丁寧に植栽されたバラやあやめを楽しみながらしばらく歩くと、木々の間に地下へと続く石造りの階段が現れた。
階段に明かりはなく、人ひとりが通れる程度の幅しかない。地下深く、どこまでも続くような段差を、一歩ずつ慎重に降りていく。
だいぶ降りて腿が疲れてきた頃、足下の方から明かりがふわりと揺らぎ、階段の壁に影をつくった。
明かりの方に目をやると、そこは長い階段の終わりだった。突き当りに重厚な木製の扉が見える。
扉の前には給仕服を着た男性が立ち、階段を降りてきた者から招待状を回収していた。
「箱守マリー様、ひばり様、日和様ですね。ようこそお越しくださいました。中へお進みください」
重そうな丁番がキィーという高い摩擦音を発しながら開かれた扉の先には、複雑な模様が描かれた絨毯が敷き詰められいる大広間があった。
地下にあるとは思えないほど天井は高く、壁一面がガラス張りになっている。ガラスには、そこにはあるはずのない夜空が映し出されていて、まるでどこか別の場所に飛んできてしまったのではないかという錯覚を覚えるほど、異様で異質な空間だった。
様々な植物が飾られ、会場中には濃厚な花の香りが立ち込めている。
中にはドレスコードの黒い衣装を身に纏った客が200人近く居り、各々談笑しながら開会を待っていた。
ここに居る者全てが魔術師、或いは魔女である。
テーブルが10卓、椅子は少なく、殆どの者が立食になる形だ。
ひばり達の入場が一番最後だったようで、扉が閉じられたと同時に内側から
所在ない3人は、一先ず隅の方へ向かい、広間の中心にぽっかりと空けられたスペースに視線をむけた。
一人の男性が空いたスペースへ静かに進み、そこに置かれた踏み台に足をかけると、会場中が一気に男性に注目し、静まり返る。
「魔性と共に生きる紳士淑女の皆々様、今宵は
今回の夜会は遠路遥々お越しいただいている方も多く、近年稀に見る参加人数と相成りました。
懐かしい顔もおありでしょう。
プログラムも決まり事も制限も無い、同族ばかりの自由な集いでございます。
時間を忘れて、こころゆくまでお楽しみください」
高らかに「ノクターンの夜会」開会が告げられた。
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