第11話 アレクサンドライト

自室にぽつんと残り泣いていたアレクサンドライトは涙をふくと少し前に言われた皇妃の言葉を思い出していた。


『アレク絶対にあなたの悪いようにはしない、それだけは約束するだから残って私のかわりに皇妃になってほしい』


どうしてそのようなことを言ったのかはわからないけど、皇妃になってほしいなんて頼まれたことはアレクサンドライトにとってやっと自分を必要としてくれる人が出てきてくれたと思い二つ返事で申し出を受け入れたものの…。

蓋を開けてみると実際には皇妃見習いが4人も出るということになり自分はその中でどんな手をつかっても皇妃にならなくてはいけない立場においやられてしまった状況下でやっと自分の立ち位置が見えてきたのです。

一番有利なのは皇妃の輝石をもっている自分…。

このままいけば間違いなく皇妃になるだろう

しかしそれは前皇妃に弱みを持たれた中での大会参加となることは目に見えていた。

『どうしたら…いいかわからないこのままいけば陛下や他の水青龍宮すいせいりゅうぐう皇民こうみんまで裏切ったまま戦うことになる…。』

それはアレクサンドライトにとって苦痛でしかない選択…。

コンコン

『アレクサンドライト…話したいことがあるんだけど』

同じ皇妃見習いの亜貴とサフランがやってきた。

『アレクサンドライト…もしかして弱みを握られている?それとも今後そうなる可能性がある?』

なぜこの二人は私のことをこんなにも知っているのか!?

アレクサンドライトははっと驚いた。

しかしその問に答えることができずうつむいていると亜貴が優しい声で切り出した。

『もしそうなら首に手をあててほしい…答えなくていいから』

アレクサンドライトは首に手をあてた。

もうそれだけでなんとなく状況を理解した二人はお互いに顔を見合わせて首を縦にふりアレクサンドライトに向き直った。

『実は…サフランとも話したことなんだけど、私たち二人は今回の皇妃見習いを降りることにしたの…その代わりといってはなんだけど皇妃付きの従者になって動くことにしました。』

サフランも同調するように

『これは皇王ともお話して決めたことです。結果的には私たち二人が降りることで大会までに準備する時間に余裕が持てると思っているの』

アレクサンドライトは涙をためた。

皇妃を降りる選択は二人にとって苦渋の選択だったに違いない…それを私一人のために降りてくれるというのだ。

『ごめ…。』

亜貴はアレクサンドライトの肩をやさしく抱いてとんとんすると

『私たちにまかせてほしい…安心して。』そうささやいた。


名前:亜貴 水青龍宮すいせいりゅうぐう皇民こうみん

Lv 皇妃付き従者

種族 貴石族きせきぞく

智5 信5 仁5 勇5 厳5

書類整理ステータス5

皇妃候補ステータス5

皇妃従者ステータス1


ステータスがかわり皇妃付き従者となった。

残念だけどこれでよかったのかもしれない。

とにかく親父にはあとで謝っておこう。


アレクに会う前にサフランと二人で皇王に会い話したことをアレクにも説明した。

今後の動きとしてもしアレクになにか指示をするものが現れてもこちらですべて対処することになった。

アレクはただ耳打ちされた内容をこちらに話してくれればそれでいいということになった。

『もう一度言うけどもし荷が重いということなら皇妃の輝石をおいて逃げることも考えてほしい…結果的には2重スパイになるわけだから。』

アレクはこくりと頷くと

『大会参加の手続きをとってきます。』そう言ってログアウトした。

『私たちも皇妃付き従者として登録しないとね』

『大丈夫かしら?』

『サフラン…問題ないよ』


結局皇妃見習いの試練は

試練の水

育成の水

忍耐の水のみだった。


今回のことでわかったのはやはり大会のために前皇妃のように敵の中に味方を作るということも出てくるということ…

そして前皇妃はどの皇国にいて大会で戦いを挑んでくるのか、まだ不明ということ。

『もうそこはアレクに探ってもらうしかないね』

サフランはそういうとため息をついた。

『これでよかったのかしら?釈然としない…』

『結果的にはアレクに矢面に立ってもらうことになるから、むしろこっちのほうが私たちは動きやすいんじゃない?』

サフランはそういうと今回参加する皇国の情報を教えてくれた。

『今回は6つの皇国が参加することになっているの』

『前回は4つじゃなかった?』

『2つの神殿も参加することになったみたい』

今まで新しくできて皇民の少なかった2つの神殿側も今回は大会参加条件に満たすということで参加することになったらしい。

水青龍宮

風亀皇宮

火皇鳳凰

蛇地皇宮

光皇神殿(あたらしく参戦)

閨皇魔宮殿(あたらしく参戦)


闘い方もそれぞれの特色があるようで

家紋によって変わるみたいだった。

とにかくまずはどんな人がいるか情報がほしい…

そう思った俺たちは久しぶりの人を訪ねることにした。


ログインしてサフランと待ち合わせするとさっそく久しぶりの人権確保事業部へ向かった。

相変わらず本や書類の山に埋もれたその場所をかきわけながら中へ進むとグラントがぽつりと座って書類の山と格闘していた。

『お久しぶりです。グラントさん』

『おお!亜貴!久しぶりだな!元気にやっているか?』

『おかげさまで…あ!こちらはサフランです。私たち二人とも皇妃見習いだったんですが事情があって二人とも辞退し今皇妃付き従者になっています。』

グラントはえええ?ってびっくりしたがあきれた目で俺たちを見ると

『相変わらずだな…』とぼやいた。


グラントの話だと通常大会には従者は参加できないらしい。

しかしある一定の条件を備えると参加可能になるとのことだった。

それが元皇妃見習いだった。

そしてステータスがすべて5であることだった。

『だけどなぁ・・・サフランはいいとしても亜貴…おまえさんは今回の大会に参加しないほうがいいんじゃないか?』

『なぜです?』

『負けたら奴隷だぞ』

『そんなのわかっていますよ!リスクがあるから負けられない戦いにするんじゃないですか!』

『けどお前さ…このゲーム初めて最初の大会だろ?参加は見送ったほうがいいんじゃないか?』

そんなことはわかっているしサフランも元奴隷からここまできたというのもわかっていた。だけど今回参加しなければアレクの動向が気にかかるしサフランの手伝いを少しでもなにかしてあげたいと思うのは悪い話なんだろうか?

『そういえば…サフランってもともとどこにいたの?』

『私は元蛇地皇宮の民だよ』

『じゃあ蛇地皇宮のことはサフランはよく知っているんだね』

『まぁね…今の皇王さまと皇妃さまぐらいはわかるかな…もともとそこの宰相だったからある程度闘い方はわかるよ。』

『すげえ!心強い!』

『あはは~そんなことはないけど…』

宰相っていったら皇妃の一つ下のレベルだ…。

大会に負けるとそこから奴隷落ちするのか…。

ちょっと怖くなってきたけど迷ってもしかたがない。すでに大会参加に申込をしてしまったので必死で頑張らないと…。

『でも亜貴は私のサポートに徹してほしいな』

『もちろん頑張りましょう!』


夏休みがやってきた…。

熱い大会の日まであと1週間

その間俺は…

宿題をやらされていた…がくっ!

母さんに見守られ?(監視?)

宿題をさっさと済ませようととりかかる小学4年生…

『今日のところが終わるまでだめよ!』

くぅ…(涙)

わかっているけどもつらい…。

なんで宿題というシステムがあるんだ…

しかも宿題プリント49ページもある!まじ辛い…。

『あーわかんないー。』

『お母さんが見てあげよう…あ』

母さんがプリントの問題を見てフリーズしている。

低学年のころはすらすら教えてくれた母さんもさすがに小学4年生の数学は無理かな?

『塾に行く?』

『やだ…』

『でもわかんないでしょ?』

『頑張ります!だから塾に行きません』

『大丈夫?』

うっとおしいな!

おれは宿題プリントと筆記用具を持つと委員長の家に行ってくると言って家を出た。

たしか委員長は数学は得意と言っていたはず!


委員長の家につくと呼び鈴を押した。

『はーいってあれ?悠君どうしたの?』

『委員長!数学教えて!お願い!』

『あはは…いいよあがって』

『おじゃましまーす。』

委員長の家にあがると中に一人男の子が座ってこっちを見ていた。

『従兄妹の篤史君だよ、夏休みの間遊びに来てるの』

『こんにちわ…悠です』

『こんにちわ~真由美の友達?』

『学校の同級生だよ』

『へぇ~』

俺たちは委員長の部屋に入るとさっそく数学を始めた。

『少数の割り算がちょっとわかんないんだよ』

『これはね0.1を単位として考えればいいんだよ、整数に直して考えていけば…』

委員長・・教え方うまい…。

なんとか委員長に手伝ってもらって宿題をしているとさっきの篤史君が部屋に入ってきた。

なんとはなしに俺の隣に座る篤史君…。

じーっと見られているのが気になるがそんなこと言ってる場合ではない…。

大会前に終わらせないと大会参加に母さんが賛成してくれないのだ!

『掛け算の小数点はね…こうやってたてにならべて小数点のところをあわせて計算していくといいよ』

やっぱり委員長に聞いて正解だ…。

これですぐに苦手な数学は終えられる!

そう思いながら宿題プリントをやっているとそれまで黙っていた篤史君が急に口を開いた。

『悠君って…付き合っている子いるの?』

え????

『俺…男ですけど…』

篤史君は顔を真っ赤にしながら

『僕…悠君と付き合いたい』

はぁ??????

委員長はこんな様子を見て苦笑いをしながら

『あー篤史だめよ…悠君そういう子じゃないから』

そういう子ってなんだよ!

『ごめん悠君…篤史はノンバイリティージェンダーなの…』

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