第4話 チェンジング商会

1番仲のよかった人に話を聞いてほしい

そう言われて渡された地図を持ってその場所へ向かった。


『ここに亡くなった人トニーさんの友達が?』


そこはチェンジング商会と書かれていた。

ノックすると中からどうぞと男性の声が聞こえた。


中に入ると燕尾服を着崩した感じで白髪の男性が中で喫煙していた。


『いらっしゃいませ』


『はじめまして、ユナさんという女性に紹介されてきました。昨日亡くなったユナさんのご主人トニーさんのことで聞きにきました。スミスさんがトニーさんと仲がよかったということで、亡くなるまでの間の話を聞きにきました。』


スミスさんは指に絡ませたシガーを吸口の部分をくわえながらシュポっとライターで火をつけながらソファを勧めた。


『コーヒーは如何ですか?』


『いえ!結構です。』


メモがわりの書類を数枚出すとスミスさんに1つ1つ聞いてみた。


『まずは倒れるまでの1週間前後のトニーさんの様子を教えて下さい。』


スミスさんは、眉根を寄せながら思い出すふりをしつつポツポツと話しはじめた。


『トニーとは商人の時に一緒に商会を立ち上げてやっていました。まぁやっていくうちに彼だけ教皇レベルになってしまいあまり付き合いはなくなってしまいましたが…ココ最近についてはユナさんとゲーム内結婚もしていて楽しそうでした。でもそれだけで他は…』


結構長く仲がよかったんだな…。


『だから病気になった話しを聞いてとても心配していました。亡くなったんですね…』


『亡くなりましたよ』


『そんな…ユナさんはどうなるんだ…💦』


『ユナさんから1番仲のよかった友人としてスミスさんを紹介していただいたんです。何かありませんでしたか?』


スミスさんは薄らと浮かんだ涙を指で拭いながら…。


『先程も言いましたが、商人時代は何度か交流がありましたが、教皇レベルのトニーさんとは最近は、あまり交流はありませんでした。どちらかというと…騎士見習いのアンソニーの方が交流あったんじゃないかな…彼はトニーの護衛騎士でもあったし…。』


スミスさんにお礼を言うとさっそくアンソニー騎士見習いの所へ移動した。


教皇レベルのトニーさんの住んでいる所とは違いアンソニーさんの家は騎士見習いにしては立派な作りをしていた。


『ごめんください。誰かおられますか?』


中からメイド服姿の初老の女性が扉を開けて入れてくれた。


『こちらでお待ち下さい。』


通された部屋にメイド服の女性はお茶を持ってくると入れて勧めてくれた。

お礼をいってすすっているとアンソニーが部屋に入ってきた。


『お待たせしました。ご用向きはなんでしょう?』


『はじめまして。亜貴と申します。チェンジング商会のスミスさんに紹介いただきましてトニーさんの病気のことで聞きにきました。』


アンソニーは騎士見習いだが護衛騎士をするだけあり体格は大きく適度に綺麗な筋肉を持っていた。

彫りが深く三白眼のコバルトブルーの瞳がキラリと光っていて白に近い金髪の髪は細くウェーブが肩までたなびいていて、貴族らしい面持ちだった。


ちなみになぜここまでアンソニーのことを表現したかと言うと今まであったアカウントについては正直ここまで表現するほど容姿がやり込んでいる感じはしなかったというのが正直な感想だ。


このゲームをやり込んでいる感じがする。

なんかこんな人が護衛騎士をする人は凄く幸せではないかと思うぐらい。


ふっと三白眼のコバルトブルーの瞳をうるっと潤ませて視線を下に落としながらアンソニーはポツリと喋りはじめた。


『ご病気で亡くなるなんて…ユナさんが気の毒です。』


『病気が発症する前のトニーさんの行動を教えて貰ってもいいですか?』


『そうですね…。とくにこれといってなにか気になるようなことは…私も護衛騎士についてまだそんなにたっていないんです。ユナさんと結婚する前についてもそんなに知っているというわけでもないですし…。ただユナさんとの交際はオフラインでもあっていたというのは聞いています。そこでも御2人は御付き合いしていたらしくとても楽しそうでした。』


ゲーム以外でも会ってたのか。

アンソニーとフレンドを念の為登録した。

すると今まで反応しなかった仁のマークに1と数値がついた。


どうやら仁徳がついた?


名前:亜貴 水青龍宮の皇民

Lv2 受付補助

種族 人族

智0 信0 仁1 勇0 厳0

書類整理ステータス3


こんな感じでどんどんフレンド数やこのゲームでなにかするとレベルが上がっていく感じみたいで、とにかく仁がついたのは嬉しい。


アンソニーからきいた話しを整理してみた。

スミスさんはトニーとは商人のレベルの時は交流あったけど最近はないしアンソニーも護衛騎士をしていたのはつい最近であって…情報少な!


けど…奥さんであるユナさんはトニーさんとはオフラインでも付き合いがある。


あまり知らないからと言ってスミスさんを紹介して貰ったけどなんか…怪しい?


念の為だがユナさんについても調べてみた。


この人恋多き人?なのかな?

なんと他の皇王と御付き合いがあるという噂があった。💦


教皇レベルのトニーさんと結婚したのに他のプレイヤーとも御付き合いが頻繁みたいでこうなってくると…。


頭を抱えてうーんと唸る俺をグラントが見かねて聞いてきた。


『なんか悩んでる?』


実はさーといいつつ今までの経緯をグラントに話してみた。


『それってさー最近噂のある案件だよね?』


なんの噂?


グラントはここ数週間であった噂の話をしてくれた。

実はレベルが買えるんじゃないかという話だった。

チェンジング商会はその名の通り高アカウントを丸々販売して儲けている商会だという話だった。

アカウントをIPアドレス経由で、病気にして乗っ取り、レベル以外を新しく塗り替えて作っているという。

しかも作りかえられたアカウントは1度死んだことになり新しくアカウントを作り変えたとしてもレベルは変わらないし別の人がそのアカウントを使うのだそうだ。


そんなことできるの?

こえー!


とにかく、トニーさんもそのチェンジング商会のアカウント乗っ取りの被害者ではないかということと、既に死体はなく、新しくアカウントを作りかえて存在しているのではないかということだった。

なぜそこまでする必要があるのか?


以外と簡単に答えがでた。


少し前にグラントから対抗戦でないのか?と言われていたことを思い出した。


まさか?

もうすぐある対抗戦のため?

でもそんなこと何の得があるっていうんだ?

対抗戦は毎回内容がかわる

裏切りも発生するし

なににせよ皇王と皇女のセットに教皇そして宰相レベルまでが戦略の内容に参加できる。

戦略的なことは宰相が決めるし教皇においては宣戦布告の役割しか持たない。


だけど…その教皇レベルが皇王もしくは皇女レベルに近づいていた場合は?


そうなってくると皇女さまの病気についてもこの対抗戦対策だった場合…この調査自体意味がない。

なぜかというとこれも対抗戦の戦略の1つとなるからだ。


ユディナ皇女さまは前回対抗戦に出たがレイズ皇王の足を引っ張り結果負けてしまった。今年も同じように出るとなるとまず周りが黙っていない…しかし皇女のレベルに達成できるプレイヤーがまだ育ってなくて対抗戦に間に合わない場合は教皇レベルからまず崩していくに違いない。


しかも…教皇レベルもギリギリの線でおいておかないと…


侍女長アマナはそれがわかっていて依頼したな!と思うと調査をしていて虚しくなってきた。


問題は本人の意思でそうしたのか?それとも騙されてそうしたのか?の話しだが…。


まてよ?

これって…もしかして

もしユナさんを通して皇女と教皇の2人をこの時期に中身を変えてしまえばどうなる?

ユナさんはオフラインでトニーと会っていたと言っていた。

そしてずれているとはいえこの時期に2人とも病気にかかっている。


他のアカウントの病気に至ってはたぶん隠れ蓑?

そう考えると…


念の為だが、ついでに今回の対抗戦のことも少し調べることにした。

今回

水青龍宮すいせいりゅうきゅう

風亀皇宮ふうきおうきゅう

火皇鳳宮かおうほうきゅう

蛇地皇宮だちおうきゅう

・光の神殿宮ひかりのしんでんきゅう

・闇の魔宮殿やみのまきゅうでん


この6つのチーム戦で行われる。

普通に国取り合戦くにとりがっせんだと思ってやってたけどもっと奥深い。


いろんな人に情報をとりにいってもらいその情報を頭に叩き込んで勝つための戦略を練らないといけない。

そのためにそれぞれの皇宮の皇王と皇女はもちろんのことその下の気になる騎士まで調査する。

なぜなら知力、財力、そして情報の他に仁徳の多さやどれだけ才能あるユーザーが存在するかに勝利がかかっているからだ。

その所属する皇宮が優勝すると莫大な賞金が入ってくるだけでなく勝者の皇王と皇女は次の対抗戦までいろんな媒体から広告塔として出ることになる。

すごく魅力のあることなのでそれはみんな必死になるわけである。

もし…優勝のためにチェンジング商会のスミスさんとユナさんが関わっていて今回のこのようなことがおきていたとしたら…。

というかユナさんの役割はスパイ?

だんだん頭が痛くなってきた。

こうなってくると皇女ユディナさまに会うのも何かわかるかもしれない。

そう思いながら、人材確保事業部へ戻ってきた。

グラントは頭を掻きながら書類の山と睨めっこしていた。

『皇女さまに面会することって可能です

か?』

グラントはこちらをちらりと見て

『できるよ!なんなら今から行くか?』と言ってきた。

俺は頼む!といいじっとグラントの方をみた。

グラントは、にやりとわらうと

『頼まれた!』と冗談っぽく言って笑った。

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