第3話 委員長

『うちに来ない?』

 そんな風に女子から言われたことなかった。


『なにしに行くんだよ』

 たぶん顔が真っ赤だったんだと思う。

 委員長はふっと笑って、そんなんじゃないしと言った。


 フラワーハイツとかかれた二階建ての建物の2階に上がると鍵を出してガチャと開けて入った。

『どうぞ』

 緊張するなぁ💦


『ちなみに家に誰もいないから固くならなくていいよ』


 え?だれもいないのか?

 そう言うと委員長は冷蔵庫から麦茶の入った容器を取り出してコップを棚から出してそこに麦茶を注いだ。


『どうぞ』

『あ!サンキュー』

 委員長はコンビニ袋からお弁当を取り出すと電子レンジで温め始めた。


『うちさー母子家庭だからご飯はいつもコンビニ弁当でレンチンなんだよね』


 委員長はお弁当を温めると箸を割って食べながら話しはじめた。

『うちの父さんはね、いるんだけど一緒に住んでいないんだ。母さんは私を1人で育てるために身を粉にして働いているんだ〜朝早く起きて夜遅くまで働いているから朝ご飯も夜ご飯も置いていってくれてるお金で食べていってる』

 麦茶を飲みながらふーんと相槌をうった。

 普通に母親の手料理を食べれる日常

 普通に父がいる今の暮らし

 だれもが同じように暮らしていると思っていたんだ。

 それがどんなに恵まれた環境だったということかということをこの時の俺は考えもしなかったんだ。


『だからさ💦こうやって学校帰りにコンビニよってコンビニ弁当を買っていくとそれを見た同じクラスの子がなんて言うかぐらいわかるでしょ?』


『なんで父さんいないんだ?』

 委員長は麦茶をぐいっと飲むと一息つきながら…

『もともと他人だった2人がくっついて私という血の繋がった子どもが出来た。だから2人にとって他人に戻るのは難しいことじゃないし私も喧嘩する2人を見るぐらいなら今のままでいいやって思っちゃったんだよね』


 そんなもんなんかな?


 家に帰ると既に家に両親とも帰ってきていた。

 こころなしか父さんの顔が険しい…💦


『悠…何か言うことないか?』


 ん?

 机の上の父さんのノートパソコンを見て血の気が引くのを感じた。


 あれ?昨日電源ちゃんと落としたっけ?

 やべぇ覚えていない。


 母さんもはぁとため息をついた。

 とにかく座れと言われて座る。


『父さんのノートパソコンを使ってもいいとは言ったけど…ゲームをするために使ってもいいとは言ってないなぁ』


 なんでバレたんだ?


 父さんは自分のノートパソコンのメールアドレスを開いて見せてくれた。

 そこにはゲームにログインした情報やメンテナンス情報などいろいろ送られてきていた。


 あーそりゃバレるよな💦


 そしてその中にメッセージが入っていますという情報まで入っていた。


『あまり感心しないな。』


『ごめん…父さん…💦』


 ちゃんと勉強やるから続けさせてほしい…。


 そんなこんなでとにもかくにも勉強をちゃんとやるという約束をしゲームを続けられることになった。


 ゲームの中でいろんなミッションをこなしながら今日の委員長の話を思い出していた。


 俺はこういう場合どう動くべきなのか


 どうしたいのか?


 なにも考えられなかった。


『おーい聞いている?』


 書類の整理中急に呼びかけられてはっとした。

『ごめん!グラント!聞いてなかった』


『今度対抗戦あるだろ?亜貴はでないのか?』


 なに?対抗戦って?


 きょとんとしているとグラントが説明してくれた。


『ここ以外の他の5つの皇宮と対抗戦があって一緒に戦う人を募っているみたいなんだ。』


 あぁ前に言っていたやつかぁ💦


 負けたら捕虜になるやつね


『まだ初めて間もないしもう少し慣れてからの方がいいかと思うんで辞めておきます。』


 グラントは頷いてそれがいいと言ってくれた。


『もう慣れたかな?』


 俺はこくりと頷きながら次の書類に目を落とした。


 はっきりいって集中できないでいる。


 ゲームのレベルをあげて早くいろんなことがしたい反面ゲームに逃げて現実を直視できない子どもな自分に苛立ちを覚えるし。

 何をしたいかもわからない。


 だけどなんとなく自分は関与してはいけない気もしていたのも事実だった。


 明日父さんに相談してみようかな…。

 母さんに言ったらなんか友達付き合いやめろとから言われそう💦


 そう考えながら書類を見ているとステータスから何か音がした。


『ん?何か音がしたな?』


 なんだろ?!

 そう思ってステータス画面を見て見たら


 亜貴

 レベル2

 受付補助


 となっていた。


 見習いから補助にいつのまにか変わっていた。


 そして書類整理スキルがいつのまにかついていた。

 毎日ノートパソコンを開けて皇宮打破で毎日ログインして遊び、父さんが帰ってくるとログアウトしてノートパソコンの電源を落としてを繰り返していたからいつのまにかレベルが上がっていたのだろう。


 書類の処理レベルで上がっていくのか〜と思いながら今まで処理した書類を見ると50を超えていた。

 レベルアップの条件が50かぁ

 ちょっと遅いかもしれない

 以前渉君の話しでは騎士とかがレベルアップが早いとか言っていた気がするけど。レベルアップが早い分他の種族にレベルアップがしにくいとも言っていた。


 ここで少し頑張ってやるか!


 どうせ目ざすなら1番上を目指したい。

 とある書類に目がとまった。


 皇女さまの病気?


 ゲームの中で病気って何か変な予感がする。


 グラントに確認作業を自分がするということで許可をもらうとさっそく調査のために準備を進めた。


 まず依頼を申請してきたのは、皇女宮で働いている侍女のマリナさん。


 彼女の話しではここ2週間皇女さまにできた身体の発疹と高熱が下がらない症状が治まらず皇女さまは苦しんでおられるということだった。


 そんな事例が皇女宮だけではなくあちこちで発症しているという。

『皇医に診て貰いましたが原因がわからないとのことです。』


 あちこちで発症している患者の家族の所にも話しを聞きにいってみたが皆が同じ症状でまだ完治している人はいないという。


 そうこうしているうちに1人発症して4週間目にとうとう亡くなったという情報が入ってきた。

 亡くなった人の家族の所へ急いでいってみると黒い垂れ幕が家の入口に下げてあり、その前で家族らしき人が泣いていた。


 皇女さまは発症してから2週間と侍女の人は言っていた。

 だとするとあと2週間で発症の原因を探さないと皇女さまも危ないということになる?


 入口付近で家族らしき1人の女性と話をすることができた。


 彼女曰く亡くなった人は彼女の主人だったという。

 ゲームの中でも結婚システムがあるのは珍しいことではないとはいうものの、やはりそこはなんかゲームらしくはないなというのが正直な感想だ。

 話をもとに戻すと

 彼女とゲーム内で結婚してから半年たつのだが、最近よくログアウトすることが多く、もしかしたらサブアカを持っているんじゃないかという話しが出ていたという。

 サブアカというのはもう1つ同じゲームでアカウントをもつことをそう言うと彼女は話してくれた。

『そう思った経緯があって…ゲーム時間が私よりも少ないのにいろんなアイテム持っていて凄いなぁって思っていたのよね💦』


 別に他にサブアカを持っていてもなんの問題はないと思うが、やはりかなり重いゲームなのでサブアカと同時ログインはできるはずもなく交互ログインにどうしてもなってしまうためあまりいいとは思えないのだが、最初のアカウントで問題があるとサブアカを作り逃げるために今までのアカウントを削除してしまうこともたびたびある。

 そんな話もあるため念の為ご主人のまわりのことも調べてみることにした。


『1番仲のよかった人を紹介するので聞いてみて貰えますか?』


 そう言って地図をくれた。


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