第6話

 目が覚めると見慣れぬ天井が目に入った。


 一瞬、自分がどこに居るのか分からなかった。


「リリアナ! 良かった! 目を開けてくれて!」


「キース様? なんで? ここは?」


「ここは保健室だ。何があったか覚えてないか?」


「あ、確か私...空き教室に連れ込まれて...」


 思い出した途端、体の震えが止まらなくなった。


「大丈夫。もう大丈夫だから。何も心配要らないからな」


 キース様は私の頭を優しく撫でて落ち着かせてくれた。


「あの...ありがとうございました...キース様が助けて下さったんですよね?」


「あぁ、間一髪だったが間に合って良かったよ」


 そこで私は疑問に思った。なんでキース様は私があの空き教室に居ることが分かったんだろうか?


「あ、あの、キース様はどうしてあの場に?」


「実は俺、たまたまあの空き教室の真下に居たんだよ。そしたらいきなりガラスの欠片が降ってきたんだ。何事? って思ったら、直後にリリアナの助けて! って叫びが聞こえた。だから大急ぎで駆け付けたんだよ」


「そ、それは大変申し訳なく...あ、あのお怪我はありませんでしたか?」


 うぅ...祈りは通じなかったか...誰も居ないことを願ってたんだけどなぁ...まぁでもそれで私は助かった訳なんだけど、なんだか申し訳ない...


「俺は大丈夫だから心配すんな。それより自分の体のことを心配しろ」


「あ、ありがとうございます...」


 うぅ...キース様の優しさが胸に沁みる...と、そこへ、


「リリアナ! 大丈夫か!?」


「マリク殿下...」


「あぁ、可哀想に...リリアナ、君を襲った連中は全員拘束したから安心してくれ」


「あ、ありがとうございます...」


「それと今回の件、学内で決してあってはならないことだ。学園側に事の重大さを重く受け止めるように動くつもりだから。安心してくれ。二度とこのようなことは起こさせない」


 私は頷くしかなかった。



◇◇◇



 その後、私を襲った輩どもは全員逮捕された。どうやら他にも余罪があるみたいで、厳しく取り調べされてるらしい。当然、全員退学になった。


 そしてなんと! カミラも退学処分となった。輩どもに金を払って私を襲うよう指示したことが明るみに出たからだ。輩どもが簡単に口を割ったらしい。


 マリク殿下が言った通り、学園側としても事態を重く受け止め、たとえ侯爵令嬢といえど容赦しなかったようだ。本人の自業自得だから同情の余地はないんだが、私はそれよりも別のことが気になっていた。


 カミラが退場したことでストーリーはどう変化するのか? 騎士団長子息ルートがこれで消えたことで、私がざまぁされる可能性も一つ消えたことになる。その点は安心していいだろう。


 だがまだルートは三つ残っているし、エレノアもまだ退場していない。これからどのような展開になるのか分からないが、油断することなく過ごそう。


 生き延びるために!


 

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