第4話

 おいおい、勘弁してくれよ...マリク殿下の時と同じパターンで、私は騎士団長子息のキースとは顔を合わせたことも無ければ会話を交わしたことも無いんだっての!


 なのになんでこうなるかなぁ...ハッ! もしかして、これが噂に聞くゲームの強制力ってヤツなのか!? 何もしてなくても勝手にストーリーが進むってことか!? だとしたらどうすれは...


「は、ハクションッ!」


 いかん、まだ春先で肌寒い。このままでは風邪を引いてしまう。着替えないと。私は更衣室の自分のロッカーに急いだ。ジャージに着替えようとして...固まった。


「いやこれマジか...」


 そこにあったのは、無残に切り刻まれた元ジャージだった。


「ここまでやるか? 普通じゃない...」


 ご丁寧にタオルまで切り刻まれていたので、仕方なく私は水を滴らせながら保健室に向かった。水も滴るいい女ってか? ハハッ! 笑えねぇ...


「お、おい! どうしたんだお前?」


「へっ!?」

 

 うわぁ...なんでこのタイミングでキースに会うかな...


「え、えっとその...あ、足を滑らせて噴水に落ちちゃいまして...」


「ハハッ! ドジなヤツだなぁ、お前! 良かったらこれ使うか? さっきまで鍛練してたから汗臭いけど」


 そう言って自分の首に巻いてたタオルを貸してくれた。ええ人やのぅ~♪


「あ、ありがとうございます...後で洗って返しますので...」


「いいってことよ! 気にすんな!」


 そして爽やかに去って行った。イケメンやぁ~♪ ちなみにタオルはちっとも汗臭くなかった。



◇◇◇



「いよう、リリアナ! また会ったな!」


「あ、キース様。ご機嫌よう...」


 あれから私達は名前を呼びあえるくらい親しくなった。タオルを洗濯して返しに行った時に、お互い名乗り合ったのだ。それ以来、学内で会う度にこうして会話するようになった。


 カミラの虐めは相変わらず続いていたが、彼女はエレノアと違って、取り巻きにやらせようとはしない。というか、取り巻きは居ないみたいだ。自分一人で仕掛けて来るだけなのでまだ対処しやすい。嫌味を言われたり、出会い頭に突き飛ばされたり、足を掛けられたり、などなど可愛いものばかりだ。


 いやこれは私の感覚が麻痺してるだけかも...いかんいかん! 私にM属性は無いはずだ! と、とにかく、この程度なら耐えていればなんとかなりそう。


 なんて思っていた自分を殴ってやりたい...


「へっへっへ、おとなしくしな」「たっぷり可愛がってやるぜぃ」「叫んでも誰も来ねぇぞ」


 今、私は空き教室の一室に閉じ込められてて、目の前には制服を着崩した如何にも不良といった輩に囲まれて、まさに絶対絶命! おのれカミラ! ここまでやるか!?

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