第3話
誰だろう?
意識が飛ばないように、気を引き締めながら見上げた先に居たのは、憤怒の表情を浮かべたマリク殿下だった。なんで殿下がこんな所に!?
そう思ったのは私だけじゃないみたいで、まず私の両腕を拘束していた二人が膝から崩れ落ち、ついで残りの三人もヘナヘナと腰砕けになってしまった。マリク殿下は私を、エレノアの取り巻きどもの中から解放し、
「集団で寄って集って一人を虐めるなど言語道断! 恥を知れ!」
そう言って私をそっと抱き締めた。
「大丈夫かい?」
「はいぃ!」
いや、耳元で囁かないで欲しい! 違う意味で大丈夫じゃなくなるから!
「貴様らの処遇は追って沙汰を下す! 厳しい処罰になることを覚悟せよ!」
そう言われたエレノアの取り巻きどもは、全員が魂の脱け殻状態になってしまった。
「さ、保健室に行こう。歩けるかい?」
ここで歩けないなんて言ったら、お姫さま抱っこされそうな雰囲気だったので、
「あ、歩けます!」
いやなんで殿下はちょっと残念って顔してんの!?
◇◇◇
その後、保健室で手当てを受けながら、これまでのことを洗いざらい話した。聞き終えた殿下は、
「どうしてもっと早く誰かに相談しなかったんだ!?」
そう言うので、私は順を追って説明した。まず第一に証拠が無いこと。廊下や食堂で足を引っ掛けるのは「わざとじゃない」と言われればそれまでだし。机の落書きや教科書、ノート破りに関しても誰がやったか分からない。
第二に相手が公爵令嬢であること。確たる証拠も無しに、平民の私が逆らっていい相手じゃない。ざまぁされて首チョンパされたくないし...最後のは省いて殿下に伝えると、
「良く分かった。あとは僕に任せて欲しい」
「は、はい、よろしくお願いします...」
「辛かったろう? 今まで良く頑張ったね。もう大丈夫だから安心して?」
「ひゃい!」
いきなり手を握らないで欲しい! 変な声出ちゃったじゃないか!
◇◇◇
殿下が言った通り、翌日から虐めはパッタリ止んだ。エレノアの取り巻きどもは退学になったらしい。今、エレノアの周りには誰も居ない。
「ひいっ!」
あ~ ビックリした! エレノアが人を殺せそうな目で睨み付けてくるんだもの! ビビッた! でも睨み付けるだけで何もして来ない。やっと平穏な日々が送れそうだ。
そう思っていた時期が私にもありました...
「わぷっ! 冷たっ!」
「オーッホホホッ! あらあら、汚ならしい平民さんは噴水がお風呂の代わりなのかしら? せいぜい良く洗ってキレイにすることね。オーッホホホッ」
私を噴水に突き落としたのは、騎士団長子息ルートの悪役令嬢であるカミラ侯爵令嬢だ。
今度はお前か! あと「オーッホホホッ」は流行ってんの!? そうしなきゃいけないルールでもあんの!?
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