診察

 忽然と、彼女の姿が消えた。

 そして、身体のあちこちをやすり掛けされているような激痛だけが残った。

「痛い、痛い、痛、痛い痛い痛い痛い痛い痛い」

洲原さはらさーん? 洲原太陽さーん!」

「この、地獄の痛みは、これからおよそ、一ケ月、続く……」

「わかりました! わかりましたから、話題を変えましょう!」

 誰かに、力強く組み付かれた。

 自我ははっきりとあるのだが、肉体が何処に在るのかがさっぱり判らない。痛いのが中毒症状からなのか、誰かと揉み合ってるのか、区別が付かない。

 ……。……、…………。

 ……。

 痛みが、嘘のように消えた。

 いや、僕は今の今まで何を痛がっていたのだろうか。

「聞こえますか、洲原さん」

 聴こえる。何処からか、優しい声が。彼の言葉に従わなければならないのは、覚えている。ただ億劫なので、首肯だけで応じた。

「アプローチを変えましょう。ご家族のことについて、教えてもらえますか?」

 家族。

 その声に、僕の意識がまた跳躍する。

「僕の家族は、」

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