end up

チコと私とミーティア

　　　チコとミーティア

　「ねぇ、チコ、もうすぐ、彼が家に帰っちゃうね。」

　「そうね、彼の怪我が良くなるのは嬉しいけど、帰っちゃうのは、寂しい。複雑だね。」

　彼が、家に来てから１か月半、ややぎこちないが、もう、普通に歩ける程度には回復していた。

　彼は、来週には、家に帰ると言っていた。

　そして、その日は、あっけない位、すぐにやって来た。

　「色々迷惑かけてしまったね。でも、おかげで早く良くなったと思う。本当にありがとう。」

　「何を言っているの、そもそも私をかばっての事故だったじゃない。本当なら、私が謝らなければならないのに。」

　「まだ、そんな事気にしてたの？あれは、文字通りただの事故だったんだよ。もう二度とそんな事思っちゃだめだよ。」

　「うん、わかった、ありがとう。」と言いながら、涙が流れていた。

　アルは、彼の傍から離れようとはしなかった。

　彼は、アルを抱き上げ、「アル、辛い時期も慰めてくれて、ありがとうな。」

　そして私に向かい、「生活が、いつもに戻るだけ、もう会えないみたいな顔をしないでよ。気が向いたら、遊びに来るし、何なら、明日だって来られるんだから。」

　「そうだね、私がそっちに遊びに行く事だって出来るもんね。」

　するとチコが、「そうだよ、寂しいのは分かるけど、ちょっと大袈裟かな？でも、私も責任を感じていたんだよ。」と言った。

　「今日は、荷物もあるし、タクシーで家まで送らせてね。」

　「今日は素直に、お願いします。」

　「よろしい！」と言いながら、今度は笑っている私がいた。

　タクシーに、彼の荷物を詰め込み、彼の家へと向かった。

　荷物を片付けるのを手伝い、晩御飯のお寿司の出前を取り、食べ終わった後、桶を洗い、彼の家を後にした。

　帰りの電車で、チコも「やっぱり寂しいね。」と言っていた。

　私は、彼に内緒にしている事があった。

　彼の療養中、会社では、人事異動があって、と言うか、庶務一課の主任の後継者がすでに、その席に座っていた。

　一応、世間的には、大きな会社なので、主任とは言え長期間空席には出来ないらしい。

　チコとも相談してこの事は言わないでおこうと決めていた。

　しかし、彼が出社した日に、入り口で待っていた人事部の人に呼ばれ、蒼白な顔をして彼が人事部から出て来た。まだ、始業前だったので、小走りで彼の元に言った。

　会社には、交際している事は言っていなかったが、それどころではないと思ったのだ。

　彼は、言葉より先に、内示の書類を私に見せた。そこには、「仙台支店に移動を命ずる」と書かれてあった。

　この東京本店内での移動だと思っていた私は、愕然とした。

　彼は、「何故、言ってくれなかったの？」とだけ、絞り出すように言って、庶務一課から持ち出された荷物や備品を、守衛室に預けて、その日は帰って行った。

　私も、早退届を出し午前中で帰った。

　彼に、電話をしても応答が無かった。

　そして私はチコに思い切った相談をしていた。

　「チコ、私ね、会社を辞めて彼についていこうと思うんだけど、どう思う？」

　「それは、本当によく考えて、冷静に出した答えなの？」

　「うん、後は彼がどう判断をしてくれるかだけど。」

　「あなたが、出した結論なら、心のままにすればいいと思うよ。」

　「ありがとう。今から、彼の家に行く。」と言って家を出た。

　彼の家に着き、インターフォンを鳴らした、暫くしても応答がない。一応鍵は預かっていたが、それで入るのは、間違っていると思い、もう一度インターフォンを鳴らした。

　ガチャッ、彼が立っていた。

　　　私とミーティア

　彼が、家に来てから１か月半、ややぎこちないが、もう、普通に歩ける程度には回復していた。

　不思議なもので、猫が苦手だと言っていた彼は、一緒に生活していくうちに、徐々にアルとの距離を近付けてくれていた。ただ、私は気を付けて、なるべく近付けないようにはしてたのだけど。

　そんな彼も来週には、家に帰ると言っていた。

　そして、その日は、あっけない位、すぐにやって来た。

　「色々迷惑かけてしまったね。でも、おかげで早く良くなったと思う。本当にありがとう。」

　「何を言っているの、そもそも私をかばっての事故だったじゃない。本当なら、私が謝らなければならないのに。」

　「まだ、そんな事気にしてたの？あれは、文字通りただの事故だったんだよ。もう二度とそんな事思っちゃだめだよ。」

　「うん、わかった、ありがとう。」と言いながら、涙が流れていた。

　アルは、彼の傍から離れようとはしなかった。

　彼は、アルを抱き上げ、「アル、辛い時期も慰めてくれて、ありがとうな。」

　そして私に向かい、「生活が、いつもに戻るだけ、もう会えないみたいな顔をしないでよ。気が向いたら、遊びに来るし、何なら、明日だって来られるんだから。」

　「そうだね、私がそっちに遊びに行く事だって出来るもんね。」

　「今日は、荷物もあるし、タクシーで家まで送らせてね。」

　「今日は素直に、お願いします。」

　「よろしい！」と言いながら、今度は笑っている私がいた。

　タクシーに、彼の荷物を詰め込み、彼の家へと向かった。

　荷物を片付けるのを手伝い、晩御飯にイタリアンのフードデリバリーを取り、食べ終わった後、彼の家を後にした。

　帰りの電車の中では、虚無感に襲われていた。

　私は、彼に内緒にしている事があった。

　彼の療養中、会社では、人事異動があって、と言うか、庶務一課の主任の後継者がすでに、その席に座っていた。

　一応、世間的には、大きな会社なので、主任とは言え長期間空席には出来ないらしい。

　私は、そのことを言わないでおこうと決めていた。

　しかし、彼が出社した日に、入り口で待っていた人事部の人に呼ばれ、蒼白な顔をして彼が人事部から出て来た。まだ、始業前だったので、小走りで彼の元に言った。

　会社には、交際している事は言っていなかったが、それどころではないと思ったのだ。

　彼は、言葉より先に、内示の書類を私に見せた。そこには、「北九州支店に移動を命ずる」と書かれてあった。

　この東京本店内での移動だと思っていた私は、愕然とした。

　彼は、「何故、言ってくれなかったの？」とだけ、絞り出すように言って、庶務一課から持ち出された荷物や備品を、守衛室に預けて、その日は帰って行った。

　私も、早退届を出し午前中で帰った。

　彼に、電話をしても応答が無かった。

　私はある決断をした。それは、会社を辞めて、彼についていこうという事だった。

　彼は、どう判断をしてくれるだろう。

　今は、考えても仕方ない。私は、家を出た。

　彼の家に着き、インターフォンを鳴らした、暫くしても応答がない。一応鍵は預かっていたが、それで入るのは、間違っていると思い、もう一度インターフォンを鳴らした。

　ガチャッ、彼が立っていた。