僕とシンと私

 「なぁ、シン、僕ちょっとおかしくなったかもしれない。」

 「どうしたんだい?」

 「シンがいたから、あまり寂しいとか、特に、誰かと仲良くなりたいって思わなかったんだけど。」

 「けど?」

 「気になるって言うか、気が付いたらその娘の事を考えるようになって。」

 「いい事じゃないか!」

 「でもだめだよ。僕なんて相手にされないと思うし。」

 「そんな事分からないじゃないか。」


 そんな話をしながら歩いていると、女子社員の前を通り過ぎた。

 軽く会釈をしたが、ぎこちなくなかっただろうか?


 「今の娘がそうなんだ、僕と同じ庶務一課で僕の下で働いてくれているんだ。」

 「感じのよさそうな娘だね。」

 「うん、でも、僕なんかじゃ釣り合わないよな。」

 「そんな事分からないじゃないか。君に気があるかも知れないし。」

 「でも、どうやって近づいたらいいのか分からないし。」

 「じゃぁ、こんなのはどうかな?仕事中、彼女にお茶を頼む時があるよね。

 その時にメモを渡すとか。」

 「それは、ハードルが高いかな?恥ずかしいし、断られたと思うと……」

 「そんな事言ってると、いつまでたっても、前に進めないよ。それに、まだ付き合ってないし、たとえ断られても、気まずいのは一時の事だって!」

 「そうか、そうだね。勇気を持ってみるよ。」

 「がんばれ!」


 メモの文面をどうしようと思い考えていた時、彼女が入れてくれたお茶の入ったコップに付箋が付いていた。剥がして見て、すぐにポケットにしまった。

 暫くして、席を立ち部屋を出た。この会社には、リフレッシュルームがあり、席に着いた。

 付箋の内容は、ランチの誘いだった。自分の目を疑ったが、すぐにショートメールを打っていた。

 「明日の昼休み、会社の近くのランチもやっているカフェで待ち合わせしませんか?」

 「おっ、やったじゃないか。」

 「あっ、シン、ありがとう、仕事に戻るね。」

 次の日の昼までは、地に足が付いた気がしなかった。

 そして昼休みを待てずに、適当に言い訳をして会社を出た。

 カフェに着き、席に着いて暫くすると、彼女が来た。

 「お待たせしてすみません。」彼女の第一声だ。

 「いや、僕も今来たところだよ。」

 「すみません、急にお誘いして、ご迷惑じゃなかったですか?」

 「いや、びっくりしたけど、逆に光栄だよ。」その日は、世間話や会社の話とかの話をした。

 昼から、ニヤつきかけた僕に、「落ち着いて、冷静に仕事をしなければだめだよ。」とシンが言ってくれた。

 その日の仕事が終わり、家に帰るなり、シンに聞いていた。

 「彼女、どう思った?」

 「いい娘じゃないか。君にお似合いだと思うよ。」

 「ありがとう、でも、この先どうなる事か。」

 大丈夫だよ、だって彼女の方から誘ってくれたんでしょ。」

 シンの言う通り、彼女と交際することになった。

 

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