2話(2)
◇
「~っと……波音が目覚まし代わりってのも、たまには良いもんだな」
宿屋から出るなり、ユニリスタはグッと体を伸ばしながら言った。
「はい、爽やかな目覚めでした。お店の方も、深夜にも関わらずとっても親切でしたね」
潮風吹くここは、リロの町。小さいが活気のある町で、港でとれた魚を使った料理が有名だ。その知名度は国を越え、他国の料理人が修行に来ることもあってか、街中には数多くの料理店が並んでいる。また真珠の養殖も行っており、帝国で一、二を争う観光地でもある。
そんな場所で宿を取り、体を休めたユニリスタ達。昨日の疲れを癒すためとはいえ、少々ゆっくりし過ぎたか。時刻は昼を少し過ぎている。
「それで、質問は決めたの?」
ユニリスタ達を少し後ろからついていくロコ。彼女は潮風でフードが捲れないよう、時々手でそれを抑えながら歩いていた。
「あのなぁ……昨日色々あって、寝れたのは深夜で、起きたのはついさっき。そんな俺に、質問を考える時間があるわけないだろ」
「今」
「何言ってんだお前は。こういうのはな、じっくり考えないと後で後悔するんだよ。それより腹減ってるよな。ロコは何か食べたい物あるか?」
その質問にロコは首を傾げる。
「答えてもいいけど質問の数が減るよ」
「そんなに俺達といるのが嫌なのかよ」
「嫌。凄く嫌」
真顔で素っ気なく答えるロコをアリアは一瞥すると、振り返りながら「あのっ」と勢いよく手を上げた。
「私からの質問は、報酬の数に入ってしまいますか?」
「アリアのは入れない」
考える素振りもなく答えるロコに、アリアは目を丸くする。意外だと感じたのはユニリスタも同じだったようで「何でだよ!」と、少し強めにつっこんだ。
「一人くらいそういう人がいないと会話ができないでしょ」
その言葉にユニリスタは、サッとロコの隣へ移動した。
「おいロコ、見た目に騙されるな。アリアは子供っぽいが中身は――」
「えいっ」と言いながら、アリアは自身の足をユニリスタの足元へ伸ばした。突然のことで避けられず、ユニリスタは転びそうになる。
「いけませんよマスター。それは乙女の秘密です」
「誰が乙女だよ」
「もちろん……わ、た、し、です」
わざわざ立ち止まり、頬に手を当てながら可愛く言うアリア。そんな彼女から黙って目を反らすと、ユニリスタは視界に入った店へとそのまま歩を進めた。
「よし、あの店入ろうぜ」
「無視しないでください!」
さっさと店へ向かうユニリスタ達を、アリアは走って追いかけた。
◇
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