2話(2)






「~っと……波音が目覚まし代わりってのも、たまには良いもんだな」


 宿屋から出るなり、ユニリスタはグッと体を伸ばしながら言った。


「はい、爽やかな目覚めでした。お店の方も、深夜にも関わらずとっても親切でしたね」


 潮風吹くここは、リロの町。小さいが活気のある町で、港でとれた魚を使った料理が有名だ。その知名度は国を越え、他国の料理人が修行に来ることもあってか、街中には数多くの料理店が並んでいる。また真珠の養殖も行っており、帝国で一、二を争う観光地でもある。

 そんな場所で宿を取り、体を休めたユニリスタ達。昨日の疲れを癒すためとはいえ、少々ゆっくりし過ぎたか。時刻は昼を少し過ぎている。


「それで、質問は決めたの?」


 ユニリスタ達を少し後ろからついていくロコ。彼女は潮風でフードが捲れないよう、時々手でそれを抑えながら歩いていた。


「あのなぁ……昨日色々あって、寝れたのは深夜で、起きたのはついさっき。そんな俺に、質問を考える時間があるわけないだろ」

「今」

「何言ってんだお前は。こういうのはな、じっくり考えないと後で後悔するんだよ。それより腹減ってるよな。ロコは何か食べたい物あるか?」


 その質問にロコは首を傾げる。


「答えてもいいけど質問の数が減るよ」

「そんなに俺達といるのが嫌なのかよ」

「嫌。凄く嫌」


 真顔で素っ気なく答えるロコをアリアは一瞥すると、振り返りながら「あのっ」と勢いよく手を上げた。


「私からの質問は、報酬の数に入ってしまいますか?」

「アリアのは入れない」


 考える素振りもなく答えるロコに、アリアは目を丸くする。意外だと感じたのはユニリスタも同じだったようで「何でだよ!」と、少し強めにつっこんだ。


「一人くらいそういう人がいないと会話ができないでしょ」


 その言葉にユニリスタは、サッとロコの隣へ移動した。


「おいロコ、見た目に騙されるな。アリアは子供っぽいが中身は――」


 「えいっ」と言いながら、アリアは自身の足をユニリスタの足元へ伸ばした。突然のことで避けられず、ユニリスタは転びそうになる。


「いけませんよマスター。それは乙女の秘密です」

「誰が乙女だよ」

「もちろん……わ、た、し、です」


 わざわざ立ち止まり、頬に手を当てながら可愛く言うアリア。そんな彼女から黙って目を反らすと、ユニリスタは視界に入った店へとそのまま歩を進めた。


「よし、あの店入ろうぜ」

「無視しないでください!」


 さっさと店へ向かうユニリスタ達を、アリアは走って追いかけた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る