うるへ~! 知らね~!
「いや~、食った食った♡」
美味しい料理を目一杯堪能して、ティフォリアはとても満足そうでした。
「やっぱ、太りそう」
ドゥルカがまた言うと、今度は、
「うるへ~! 知らね~!」
開き直ったように返します。食べてしまったものは消せないからでしょう。
女の子としてはあまり好ましい振る舞いとは言えませんが、ティフォリアはとてもいい子ですから、このくらいは大目に見たいと思います。レディとして公の場所に出る時までこれだと困りますけどね。でも、その辺りもわきまえてくれてますから、いいでしょう。
食事を終えた私達は、
「ここには沐浴施設もあるそうだから、そっちでさっぱりしましょう」
「やたっ!」
体を洗ってリフレッシュをと考えました。だけど、それに対してはドゥルカが、
「え~…?」
と不満そう。元々、沐浴はあまり好きではないというのもありますけど、こういう場所の沐浴施設は、男女でしっかりと分けられているので、ドゥルカは一人で入るしかないんです。
「まだ一人で入るのは嫌?」
彼に問い掛けると、
「……うん……」
俯きながら申し訳なさそうに応えました。そんな彼の様子に、
「分かった。じゃあ、桶を借りて部屋で体を拭いてあげる」
私は笑顔でそう言いました。
小さい子供を一人だけで沐浴させるのは危ないので、これは普通のことです。
「それならいいでしょう?」
「うん……」
少しホッとしたような様子で彼は頷きました。
「少し甘いんじゃないですか~?」
ティフォリアはそう言いますけど、
「思いやりを知らずに育った人がさっきの輩のようになるの。だからこれくらいでちょうどいいのよ」
私はきっぱりと言いました。
それにドゥルカは、この年齢で<勇者の息子>としての自覚に目覚めてる。だからこそ彼には人としての思いやりをしっかりと知ってもらわないといけないと私は思う。そうでないと、彼は、勇者から受け継いだ力に溺れ、なんでも力で解決しようとする者に育ってしまう予感があったんです。
それこそ、さっきのならず者達のような。
いえ、勇者の力を持っているからもっと質の悪いのになってしまうかもしれない。普通の人では太刀打ちできないのですから。
私はそんなこと望みません。
あの素晴らしい方の息子をそんな狼藉者にしてしまうなんて、大罪の中の大罪。悪鬼の所業でしょう。
そんなわけで、ティフォリアには先に沐浴をしてもらって、私は桶を借りて部屋でドゥルカの体を洗ってあげました。
ところで、ドゥルカの背中には、
実は。
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