これからの予定は?
彼も冒険者であるのであれば宿が同じになることは十分にあり得る話なので、気にしないようにします。
先ほどの様子からしても、見逃せない状況であればついということはあるにせよ、彼としても必要以上に他者と関わることは避けたいというのが本当のところでしょうからね。
そうして私達も宿に入り、部屋で腰を落ち着けると同時に、
「それで、これからの予定は?」
ティフォリアが尋ねてきました。
「そうですね、私としてはこのままレーソン街道を進んで<リアスアリクト>を目指したいと思うのですが、ティフォリアはどこか行きたい所はありますか?」
私の問いかけに、彼女は、
「う~ん、私も特に目的地みたいなものはないから、それでいいかな」
とのことでした。
彼女としては経験を積むことで自身の魔法を磨くことがそもそもの目的だそうですし、無理のない範囲で実戦をこなし、鍛錬にしたいということでしょう。
私としても、無謀なことをしたいわけではありませんので、彼女の望みとも合致しますし、そういうことで行きましょう。
そうして大まかな今後の予定が決まったところで、
「ママ、お腹空いた」
ドゥルカが声を上げました。
「そうね、食堂に行きましょう」
宿には食堂が併設されていて、宿の利用客は、決められたメニューであれば追加料金なしで食事ができるというのが一般的な仕組みです。
念のため受付でも確認しましたが、メニュー表を渡され、そこに書かれているものであれば追加料金はいらないということでした。
ただ、ティフォリアは、そのメニューを見て、
「あ~、この感じか~……」
残念そうに呟きます。正直、彼女の気持ちも分からなくはありません。この手のメニューは、大体決まりきった内容なので、選択肢が少ないんですよね。
だから追加料金を出して自分の好きな物を食べるということも多いんです。
それを『あくどい!』と憤る人もいますが、冒険者ギルドと提携しているとはいっても、宿の経営者らにとっても商売というものですからね。極端な暴利を貪っているのでなければ、あまりあれこれ言うのも野暮というものでしょう。
もっとも、私がそう思うのも、経済的には困っていないからというのもあるかもしれませんが。
私が<勇者の子>を産んだことで、使い切れないほどの恩給をいただけましたし。それをどんどん使えば、民に還元することにもなるでしょう。
そういう意味もあり、
「好きなものを頼めばいいよ。私が出してあげるから」
と告げると、
「やったあ!」
ティフォリアが満面の笑顔になったのでした。
だけどそれに対して、ドゥルカは、
「食べ過ぎると太るよ、ティフォリア」
悪気なく、辛辣な一言を投げかけましたけど。
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