モテ方まで勇者級

 案内された三番の窓口で逗留の手続きを済ませると、冒険者ギルドと提携している宿を紹介してもらえました。

 ただ、それまでの間、

「やだ〜♡ カワイイ♡」

「おいくつですか? え? 5歳!?」

「5歳で冒険者なんて、すごいです〜♡」

 受付の女性をはじめ、冒険者の女性達までドゥルカを目当てに集まって来てしまいました。さすがは勇者の息子。モテ方まで勇者級です。

 でも、

「ママぁ〜っ!」

 知らない女性に囲まれて、ドゥルカはすっかり怯えてしまいました。これまでにも女性に話しかけられることは何度もありましたが、これほどの人数に一度にというのは大きい街でたくさんの人がいる場所ならではでしょう。

「もう、ドゥルカってば、魔族相手だと勇ましいのに、人間相手だとてんでダメなんだから」

 私に抱きついてきた彼を見て、ティフォリアが呆れたように口にします。

「まあまあ、まだ5歳だから」

 ドゥルカの頭を撫でながら、私は応えました。集まってきた女性達も、

「ごめんなさいね」

「びっくりしちゃったね」

 申し訳無さそうに言ってくれたので、それでもう良しとします。

「もし縁があったら、またね♡」

「またね〜、小さな冒険者さん♡」

 女性達に見送られながら、私達は宿に向かいました。

 ただ、ドゥルカのモテっぷりを快く思わない人もいたみたいで……


「おい、待ちな!」

 もう少しで宿につくというところで、私達は呼び止められました。

「なんでしょう?」

 実は、冒険者ギルドを出たところからつけられていたのは気付いていたので、特に驚くこともなく振り返ります。

 するとそこには、冒険者ギルドの待合所で見た顔が並んでいました。はっきり言って、<冒険者>というよりはただの<ならず者>にしか見えないようなガラの悪い男達でした。

 そして男達は、

「そんな小さなガキを冒険者にとか、お前ら、冒険者の仕事をナメてんのか!?」

「その身なりからすると、騎士くずれだな? そっちのはお貴族様のご令嬢ってところか」

「お前らみたいなのが遊び半分で務まるほど冒険者ってのはチョロくないんだよ」

「そうそう、お前らみたいのがいると簡単にできそうだって勘違い野郎が軽い気持ちで冒険者を始めるから迷惑だ!」

 と、口々に悪態を吐いてきました。

「なによ! あんた達! 嫉妬とか、ダッサいマネしてんじゃないわよ!」

 ティフォリアが吠えますが、正直、彼女は確かに一見すると貴族のご令嬢のようなふんわりした印象の<お嬢様>なので、全然、迫力がありませんでした。

 だけど、

「なんだお前ら! ママをバカにするのは許さないぞ!」

 ドゥルカも私の前に立って、今度は怯むことなく気勢を見せたのでした。

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