ティフォリア

「ありがとうございました! これで安心して通れます!」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます」

 レーソン街道に現れた魔族の多くを倒した私達は、魔族の出現に困っていた村に戻ると、村長を始めとした人々の感謝を受けました。

「いえ、元とはいえ私も騎士の端くれだった者。困っている方々の力になるのは当然のことです」

 私はそう告げて、村の人々がお礼として用意してくださった品々のうち、2日分の食料だけをもらって、ドゥルカとティフォリアを伴って村を後にしました。

 私達は、<旅人>ですから。


「ママ、村の人、いっぱいお礼用意してくれてたよ。どうしてもらわないの?」

 問いかけるドゥルカに、私は、

「私達はお礼のために戦ったわけじゃないからよ。もちろん、報酬を受け取ることは悪いことじゃないし、だから私も食料だけはもらったけど、他は荷物になるからね。身軽に動けなくなるでしょ」

 と説明します。するとティフォリアも、

「そうそう。私達は体裁上は<冒険者>だけど、それは旅を続けやすくするための方便だしね」

 ちょっとませた感じで言いました。彼女は、私がドゥルカと共に旅に出るきっかけを作った少女です。年齢は、本人曰く13歳。魔法の修行のために旅をしているとのこと。そして、彼女と出逢ったことでドゥルカの<才能>が目覚めたらしくて、それまでは普通の子供だったドゥルカが、自分よりも大きな剣を自在に振り回せるようになったんです。

 ドゥルカの体に流れる勇者の血が、彼女の魔法に刺激を受けて目覚めたんでしょうね。

 それをきっかけとして、ドゥルカにはこの世界を見てほしくて、私はティフォリアの旅に同行する形で、旅に出たんです。

 いくら魔法を使えるといっても、上等なローブを纏って格好だけは一人前でも、この時はまだ12歳だった女の子の一人旅というのも心配でしたし。


 一方、ドゥルカの父親は、魔王を討ち倒し世界を救った勇者です。と言っても、私はあくまで、勇者の血を後世に残すために彼の子を授かった<側室>の一人ですから、彼とは一緒に暮らしていませんでした。また、彼の子を授かったことで陛下から使い切れないほどの恩給もいただきましたし、魔王を倒したことで軍や騎士団の再編成もあり、ドゥルカを育てることに集中するため、騎士を引退。ドゥルカと二人で悠々自適に暮らしていましたけど、平和な暮らしが長くなると、なんだか体がそわそわしてきたというのもあって、そんな時にティフォリアに出逢ったんですよね。


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