勇者の息子の僕がこの世界を守るから、ママは見守っててね
せんのあすむ
第一章
僕はドゥルカ! 勇者の息子!
「ドゥルカ! 右をお願い! ティフォリアは私と一緒に左を!」
「わかった!」
「はい!」
レーソン街道に現れた魔族を退治するために訪れた私達は、到着早々にオオカミ型の魔族と遭遇。そのまま戦闘になりました。
本来、前衛はドゥルカ。私とティフォリアは彼の援護に回るのが戦い方ですが、今回は数が多いのと、一匹一匹はそれほど強くないので、手分けして当たります。
「うおおっ!!」
そう勇ましく声を上げて、自分の身長よりもずっと大きい剣を自在に振り回して次々と魔族を打ち倒していくドゥルカは、私の息子(5歳)です。
5歳の子がどうしてこんなことができるのかですって? それは彼が、かつて魔王を討ち倒した勇者の血を受け継いでいるからに他なりません。
そういう私とて、仮にもかつては<騎士>として魔族と戦った身ですので、心得ています。
そしてティフォリアは、戦闘力こそ飛び抜けて高いわけではないですけど、優れた治癒魔法の使い手であると同時に魔族の力を弱める魔法も得意としているので、とても心強い仲間です。
だから今も、ティフォリアが魔族の力を弱め、ドゥルカと私が倒していきます。ティフォリア自身も、自身が弱らせた魔族なら一匹や二匹程度であれば倒すこともできます。
こうして私達は順調に魔族を倒していきました。けれど、残り三匹となったところで、逃げ始めたんです。
「まて!!」
ドゥルカがそれを追おうとしますが、
「深追いはダメ!」
「でも、ママ! あいつ逃げちゃう!」
「ダメよ! 私達のチームは追撃しての掃討戦のための編成じゃない! 後は地元の軍に任せるの!」
「……分かった……」
私の指示に、悔しそうに唇を噛み締めながらも従ってくれました。本当にいい子です。血気盛んで無謀なところもあるけれど、わきまえるところはわきまえてくれている。
でもやっぱり悔しそうな彼に、私は、
「ドゥルカ。あなたのお父様は、とても強くて勇敢な方です。だけど同時に、しっかりと自分の力を理解して、できることとできないことを見極める目も持っていました。だからこそ魔王を討ち倒すことができたのです。たとえ勇者と言えど、一人で何もかもできるわけじゃないの。そのために私達騎士団も鍛錬を続けたの。それぞれがそれぞれの役目を果たすことで、最大の成果を得られるのよ」
膝を着き、視線を合わせ、彼の手を取り、丁寧に諭したのです。
「倒しきれなくて悔しいのはママも同じ。でも、私達がここで無謀なことをしてやられてしまったら、それだけ国を守る力が損なわれてしまう。この地を根城にしている魔族の力は削ぐことができた。だから後は、ここを受け持つ軍に任せるの」
その上で、私は、彼に問いかけます。
「ドゥルカ、あなたは何者ですか?」
私の問いかけに、彼は、胸を張り、実に堂々と高らかに応えてくれました。
「僕はドゥルカ! 勇者の息子!」
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