第5話【初の依頼は探索の仕事その1】

 オリヴィアさんの依頼を受けた僕はすぐにみんなを集めて依頼の内容を話した。そしてそれならすぐに調べてきた方がいいのでは?となり急いで支度の準備をして目的地のアルムの森へと向かった。

 アルムの森………ユーフェスの王都の近くにある森で奥には洞窟があり昔はそこで鉱石も採れたそうであるが森の中には魔物も棲みついてるいる事もあり護衛をつけたりしない限りは一般の人は近づかない場所だ。

 オリヴィアさんからの情報ではここに仮面の男の目撃情報があったとの事で確かに僕らを襲った仮面の男達は魔物を操る事も出来るのでその能力を使えば確かにこの近くなら隠れ家の一つとして使うことは可能だ。

 僕達は周りを警戒しつつも森の中に入って行く。


「ナオ坊」

 

「なんですか?ミサトさん」


「念の為に召喚獣を1体ほど呼んで周りを調べさせた方がいいんじゃないか?」


「確かに言われてみれば」


 それなりに広いアルムの森を5人で固まったまま調べるよりはミサトさんの言う通りここは召喚獣を呼んで先に調べてもらった方が確かに得策だ。

 僕は雷牙とカゲマルを召喚して森の全体を最初に調べてもらう事にした。そして僕らは雷牙とカゲマルの調査が終わるまでひとまず森の入口周辺で待つ事にした。




 それからしばらく経って雷牙とカゲマルは調査を終えて無事に戻ってきた。調べた所、やはり洞窟の中に何かしらの怪しい気配を感じたとの事である。


「それでは、我らはこれで………」


「うん、雷牙もカゲマルもありがとうね」


 僕は雷牙とカゲマルを送還させる。


「それじゃあその洞窟とやらを調べてみるとするか」


「ささっと片づけて早く街に帰りましょ」


 僕ら一同はすぐに洞窟の方へ向かう事にしたその時だった。突如、周りから魔物と黒装束の人形兵の集団が現れ僕らをとり囲んできた。


「やっぱおいでなすったか」


 僕らは武器を構え戦闘体制に入る。


「ナオ、ルミナ、お前達はカナの防衛とサポートを頼む。こいつらは俺とミサトだけで十分だ」


「うん、2人とも気をつけて」


「それじゃあやつけるとしますか」


 まずミサトさんが刀で相手を一瞬のうちに斬り捨てる。そして続けて襲ってくる相手を次々と返り討ちにした。

 一方でシンにいは相手の隙を突き手槍で仕留める。

 僕はミサトさんとシンにいが捌ききれなかった相手を大地のつるぎで斬る。ルミナさんは攻撃魔法で、カナちゃんは回復魔法や補助魔法でサポート役に回っている。

 そして立ち回っている内に何とか襲ってきた相手を全滅させた僕達5人はすぐに洞窟の方へと向かう。




途中、何度か魔物などに襲われながらもどうにか洞窟まで辿り着くことができた。


「ここがアルムの森の洞窟か……」


「とにかく中に入って調べてみましょう!」


周りを十分注意しながら、僕らは洞窟の中へと入っていく。

 アルムの森と変わって洞窟の中では余り魔物とは遭遇しなかった。しかし洞窟のどこかからこれまでと同様に何かしらの怪しい気配は感じていたので間違いなく何処かで潜伏してるはずだ。

 魔物などを警戒しつつも洞窟の奥へ奥へと入って行ったある時だった。


「!?」


 ルミナさんが洞窟の中で何かを見つけたらしい。


「どうした?何かあったか」


「ねぇ、シン。これを見てもらってもいい」


 ルミナさんが指した場所。その部分の壁だけがよく見ると周りと何かしら浮いてる感じに見える。

 シンにいもこれは怪しいと睨んでその辺りの壁を触り始めた。


「………これは………もしかして!」


 シンにいが壁を押してみたら何と、壁自体がスイッチになっており押してみたら地下から隠し階段が出てきた。


「なるほど、こういう仕掛けな訳ね」


 そう言ってまずミサトさんが先頭に隠し階段へ入っていく。続いて僕、カナちゃん、ルミナさん、最後にシンにいの順で後に続いていく。

 隠し階段を進んだ僕らが待っていたのは隠れ家らしき場所だった。恐らくは例の仮面の男達の隠れ家だと思う。


「さて、さっさと調べて帰りましょ」

 

 すぐにルミナさんが調べに取り掛かろうとする。僕達も気をつけながら後に続いた。しかし思った以上に広く作られていてこれは時間が掛かりそうな気がする。それにしても少し先行してるルミナさんは大丈夫なのだろうか。


「みんなー!何か怪しい部屋を………ってきゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 そしたら予想通りルミナさんの悲鳴が響いた。僕らは急いで声の聞こえた方へ向かう。

 だが阻むかの如く先程まではいなかった人形兵が出現する。


「コイツらの相手は私に任せな!3人は早く!!」


「ミサトさんも気をつけて!」


「さぁ、何処からでもかかってきな!」


 ミサトさんに人形兵の相手を任せて僕とカナちゃんとシンにいは先に進む。




「ルミナさん、大丈夫ですか!?」


 無事にルミナさんの元に辿り着いた僕らはそこでこれまでと同様に仮面の男に遭遇する。リーダー格と思われる赤いフードをしたのとその両脇には青いフードの仮面の男がいた。

 幸いにもルミナさんは無事だった。


「よくぞここまで辿り着けたな……褒めてやろう」


 赤いフードの仮面の男が喋り始める。


「こいつら……喋れるのか!?」


「当たり前だ……と言っても王都やユーフェス村に送ったのは位が下の者だがな………」


「あなた達は一体何者なんですか!?」


 カナちゃんの問いに赤いフードの仮面の男は不気味に笑い出す。


「ーーーふふふふ、どうせ貴様らはここで朽ち果てる運命………なら冥土の土産に教えてやろう!我々の名は邪悪結社ゲンム!!この世を暗黒に包む者なり………」


「邪悪結社ゲンム?」


「そう……そして我らの目的のひとつは小僧!貴様の命だ!」


 赤いフードの仮面の男は僕を指差してくる。


「………僕の……命……!?一体どういう事?」


赤いフードの仮面の男はほくそ笑む。


「どうやら何も"知らせて"ない様だな………まぁいい、知っていようが知っていまいがここで死ねば同じ事だ、やれ!」


 赤いフードの仮面の男の指示で青いフードの仮面の男が僕らに襲い掛かる。まず最初の攻撃は僕とシンにいでなんとか防ぐ。


「みんな、無事か!?」


 何とか人形兵を蹴散らしたミサトさんが合流する。


「大丈夫です!」


「ふむ、あいつらが例の仮面の男か……なる程、みるまでもなくこれまでの奴らと殺気が違う」


「………どうやら思った以上に"デキる"奴らの様だな。よし、お前達は"あの力"を使え」


 2人の青いフードの仮面の男はこくりと頷く。すると2人は雄叫びをあげなら画面が割れ、みるみるうちに姿が変わり獣人タイプの魔物の様な姿へと変貌する。


「な、何よあれ!?」


 ルミナさんが驚くのも無理はない。あまりの出来事で僕は声を出せないでいる。


「やれ!」


 怪物となった2人に赤いフードの仮面の男が命令を下す。襲い掛かってくる2人にミサトさんとシンにいが応戦する。


「死ね、小僧!」


 赤いフードの仮面の男が僕を襲う。


「そうはさせないよ!」


 間一髪のところ、ルミナさんが攻撃魔法で僕を助けてくれる。


「ナオ、ここはあたしがコイツを抑えるからとっとと召喚獣を呼びな!」


「でも、ルミナさん一人で大丈夫ですか!?」


「こちとら昔は凄腕魔術師で名の通った身よ!こんな輩の相手は幾らでもやったわ!!」


「………分かりました、お願いします!」


 そこでカナちゃんも前に出る。


「私もルミナさんのサポートぐらいなら出来ます!」


2人は赤いフードの仮面の男を押さえてくれた。僕は魔封の笛を取り出し召喚の準備に入るが1つ問題があった。

 旅立つ前にユーフェス村でシャルから魔封の笛の使い方を説明した時に教えてもらった事が一度召喚した召喚獣は次に召喚する際にある程度間を開けなければならないのである。従って先程召喚した雷牙とカゲマルはまだ再召喚をする事ができないのだ。これまで召喚してきたガイアゴーレムやガルーダはサイズもあって地下での戦闘は不向きだ。

 ここは一か八か"彼"を召喚してみよう。僕は笛を奏でる。


「現れよ、炎神イフリート!」


 出てきた魔法陣の中から13の召喚獣で炎を司る魔神・イフリートが現れる。


「イフリート、あいつらを倒すのを手伝って欲しいんだ!」


「まかせろ我が主!」


 イフリートはすぐに火炎攻撃を仕掛ける。赤いフードの仮面の男と怪物になった配下2人はすぐに気づいてイフリートの火炎攻撃を回避する。


「ぎゃあ!!」


 しかしそのうち1人はかわし切れずイフリートの炎の直撃を喰らい断末魔の叫びをあげてメラメラと焼死した。もう1人の方はその様を見て動揺を隠せない。


「隙あり!」


 そこをミサトさんは逃さず、もう1人の方を斬る。バッサリと斬られた相手はその場で倒れる。

 残りはリーダー格の赤いフードの仮面の男だけだ。


「ナオ、行くぞ!」


「うん!」


「おのれ!」


 僕とシンにいは同時攻撃に出る。まずはシンにいが手槍で相手の攻撃を受け止め、一旦距離を取ろうとするところで回し蹴りを一発喰らわす。

 そして相手が倒れた所を僕は逃さず大地のつるぎで相手の腹部を深々と刺す。


「ぐぇ…」


 そして剣を抜いて僕は相手と距離を取る。赤いフードの仮面の男は腹を押さえながらまだ立ち上がる。


「これで勝ったと思うなよ………我がゲンムの同胞が必ず貴様らの息の根を止めてくれる!………貴様らに安息の日は無いとしれ!!」


 そう言い残して赤いフードの仮面の男はこれまでと同様に消滅した。

 かくして、ひとまずの脅威は去り、敵の事は分かったものの同時にそれは新たな謎も出たのであった。

 それから僕らは疲れながらもゲンムの隠れ家を調べたが特に目ぼしい物はなく、ひとまずこの場を去った。


 




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