第4話「女サムライがやってきたその2」

 さて、それから僕達はまずシンにいにこれまでの経緯いきさつを説明してミサトさんの事を紹介した。シンにいは俺のいない間にまたそんな事が……とちょっとやれやれとしつつも内心ではとても心配してただろうと僕は思う。

 それからカナちゃんも戻ってきて騎士団の方の話は何とかつけてくれた。

 さて、問題はこれからである。僕は回収してきた黒装束の刺客だった灰の一部をテーブルに置いた。そして魔封の笛を用いて知恵猫シャルを呼び出した。


「よく呼んでくれたにゃニャオ」


「シャル、このテーブルに置いてる灰が例の黒装束の集団が倒した時に出たやつなんだ」


「ちょっと調べてみるにゃ」


 僕はサイズ的に届かないシャルをテーブルに乗っけてあげた。シャルはすぐに灰の調べに掛かった。


「にゃる程にゃる程………」


 それからちょっと経ったぐらいでシャルは灰を調べ終わり、結論に達した。


「僕の知識が間違ってにゃければこいつら人間じゃにゃくて誰かが魔法で作った人形兵だにゃ」


「人形兵?」


「そうにゃ、作った人形を魔術を使って手駒として操ったものにゃ、下手に魔物を操るよりはよっぽど効率がいいはずにゃんよ。多分、今回の場合は倒れたら証拠を消すため灰になるに様にされてたんだと思うにゃ」


「そうなんだ。教えてくれてありがとうシャル」


「これぐらいお安い御用にゃよ……しかし」

 

 シャルはミサトさんの方を見る。そうしたらミサトさんは戦っていた時の威勢は何処へやら………打って変わってガタガタと震えていた。


「彼女は何で僕を見るだけで震えてるにゃ?」


「わ、私は猫が苦手なんだーー!!」


「エェ!?」


 この場にいたみんなが驚いたのは言うまでまでもない。まぁ。如何にもこの中で一番強そうなミサトさんにもこの様な弱点があったとは夢にも思わなかっただろう。

 ただシャルだけは呆れたというか機嫌が悪い様な態度をしている。


「やれやれ……まさか僕ぐらいの猫でもこんにゃ反応する人間を見るとは思わなかったにゃよ」


「お前みたいに二足で歩いて喋る猫がいてたまるかー!!!」


 それは間違いなくミサトさんの心からの叫びだった。


「仕方にゃいから僕はこの辺で失礼するにゃ」


「シャル……何か色々とごめんね」


「いやいや気にはしてにゃいにゃ。それにご主人であるニャオの役に立てればそれでいいにゃよ。それじゃあまたにゃにかあった時に呼んでほしいにゃ」


 そう言い残してシャルは還っていった。


「ーーーミサトさん、シャルは還ったからもう大丈夫ですよ」


「ほ、ほんとか?」


「はい、僕がまた召喚しない限りは……」


「そ…そうかー。いやはや助かった」


 シャルが還った事でミサトさんは落ち着きを取り戻していた。さっきの叫びといいこの反応を見るとホントに猫が苦手なんだなと。


「しっかし、あの化け猫を呼び出したり怪しい奴らに襲われたり私の見た所お前さん達は何か訳わりと見たけどどうなんだい?」


「それは………えーと」


 僕はとっさに口を濁らしてしまう。話しても大丈夫だと思うが赤の他人であるミサトさんも巻き込んでしまっていいのかと考えてしまう。

 成り行きだったといえシンにいやカナちゃん達も気づいたら巻き込んでしまっているから尚の事だ。


「ナオ、この際話してあげてもいいんじゃないのか?」


「シンにい………」


なんと、シンにいから話してもいいと言い出してきた。これには僕も驚いてしまった。


「でも、ミサトさんを巻き込ませる訳には………」


「お前の気持ちはわからなくはない。でもこのまま話さないのも彼女に失礼だろ、それに"後ろめたい"事をやってるわけじゃないしな」


「確かに……」


 シンにいの言葉を受け、僕は少し考えた。確かにミサトさんも既に僕らの周辺の事に巻き込まれている事には変わりがない。寧ろ打ち明けた方が逆に親切かもしれない。

 僕はこれまでの事を全部ミサトさんに話す事に決めた。


「………わかりました、それじゃあ話しますね」


 僕は魔封の笛の事やこれまで何が起こったのかをミサトさんに説明した。


「なるほど。つまりはよく分からない悪い奴ら相手に戦ってるって事だな」


「まぁ、そうなりますよね…」


人様から見たら僕らのこれまでの行動はそう見られるのか。まぁ、王国関係の人から許しはもらっているし結果的には被害を抑える事にはできてるし結果的には守ってる事になってるのは間違いない。

 そしてミサトさんは一瞬、ふっと笑った様な表情を浮かべ、言い放った。


「よし、これも何かの縁だ。私もお前さん達に協力させてもらうよ」


「えっ!?」


 その言葉にこの場にいた全員が驚いた。何しろミサトさんは昨日今日この国来たばっかりでたまたま僕らと一緒にいたから襲われたのであって何も関係もない赤の他人でもあるミサトさんが僕らを助ける理由はない筈だ。


「でも、ミサトさんはこれから一人でこの国を見て回るのではないんですか?」


「何、こっちは飯を奢ってもらった義理もあるし第一あんな輩がどっかでウロウロしてるのも気に食わないしそれに困ってる人はほっとけない性分なんでね」


 カナちゃんの質問をアッサリと切り返した


「それに……自由気ままな旅暮らし、横道に逸れる事なんて幾らでもあるさ」


 とにかくもミサトさんは僕らの仲間になる気が満々である。シンにいは僕に小声で話しかけてくる。


「ナオ………どうするんだ?」


 確かにミサトさんの強さは本物だし本人自ら力を貸してくれると言うのだからここは好意に甘えるべきだろう。

 それに、僕の持っている大地のつるぎと同じ四聖剣でかる疾風はやて太刀たちを持っているのも何かの縁だと僕は思っている。


「本当に……手伝って貰ってもいいんですか?」


「当たり前よ!」


「それじゃあ……これからよろしくお願いします!」


 こうしてミサトさんは僕らの仲間に加わる事になった。住処に関しては空いてる部屋があるのと女同士ならそんなに気を使わないだろうという事でルミナさんの家で居候する事にすんなり決まった。

 だがまだ問題が一つ残っていた………そう、ギルド名がまだ決まってなかったのである。

 ミサトさんもみんなと同様に名前は僕の好きに決めていいと言われますます責任重大になった気もしないでない。迂闊に変な名前をつけてしまったらそれこそ大問題になる。とにかくこれには困った。

 それからある日の事。僕はいつも通り注文された面を問屋さんに卸終えて森林公園で休んでいた時。

 この日もギルド名をどうするかで悩んでいた


「うーん、本当にどうした物かな………」


 と、考え込んでいたその時だった。僕の目の前でたまたま鳥の羽が一つゆっくりと落ちてきた。


「鳥の羽………羽…………そうだ!」


 僕はユーフェス村にいた時小さい頃によく聞かされていた昔話を思い出した。『銀の翼の勇者』と言うお話だ。そこから拝借すればそんなにおかしい名前にはならないぞ。

 "銀の翼"。それが今決まった僕達のギルドの名前だ。




 それから正式なギルド登録を終えて数日後………。ギルド管理局から僕らのギルドに指名された依頼が入ったとの連絡がきた。

 僕はギルド管理局に赴き管理局の人にある一室まで案内される。僕は案内された部屋に恐る恐る入ってみる。すると部屋には見慣れた人がいた。


「ナオ様、よく来てくださいました」


 オリヴィアさんである。どうやらまたお忍びでやってきたとの事だそうだ。


「ギルドの正式登録おめでとうございます。せれと聞いた話によるとお仲間もお一人増えたそうで」


「はい、姫様……じゃなかった、オリヴィアさんも元気そうで何よりです。それで、依頼の内容というのは?」


「実は調べて欲しい場所があるのです」


 オリヴィアさんは持ってきた資料を取り出した。資料には王都の近くにある森が示されていた。


「私共が放った配下の情報によりますとこの近辺で例の仮面の男の目撃されたとの事なのです………恐らくナオ様を襲った方達の仲間と考えこうして依頼したのです」


「分かりました」


 僕はオリヴィアさんの依頼を引き受けた。王家の情報なら間違いなく奴らに関する手掛かりを得る事ができるはずだ。


「それじゃあ、すぐにみんなを集めて調べてみます」


「頼みましたよ、くれぐれも気をつけてください」


「はい!」


 僕はギルド管理局を出てすぐにみんなに声を掛けて行った。果たしてこれから何が待ち受けているのかを僕達はまだ知らなかった。

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