第4話【女サムライがやってきたその1】
王都の港で今日も一隻の外航船がやって来た。そしてその船から1人の女性がこのマリフィス王国に降り立った。和服を着て腰には二本の刀と瓢箪、
「ここが"西の国"かーはてさてこれからどうなるやら………」
そう言って彼女は街の方へ向かって行ったのであった。
「うーん、どうしたものかな」
この前のオリヴィアさんとの話し合いにより、僕とシン
ギルドの方は一応、組合で仮登録をしたものの問題が2つあった。1つはギルド名をどうするかでもう1つはメンバーの前衛がシン
役割分担的に一見、問題がなさそうに見えるがそこでルミナさんにある事を指摘されたのである。
「格闘術と手槍による戦い方がメインのシンだと多人数戦では相手の数次第でまずいんじゃない?」
言われてみると確かにそうだ。この指摘に関してはシン
今日ももう一つの仕事である面作りを終え問屋さんに卸し終えた僕は食堂で昼食を取っていた。今日はカナちゃんも一緒である。僕らは食事をしながらギルド絡みの話をしていた。
「しかし、誰も募集に来ませんね」
「まぁ、活動実績とかないからね……でもその内来ると信じて待とうと思ってる」
「そいえばギルド名はどうするんですか?」
「シン
「それだったら私も手伝いますよ。私もこの後は手が空いてますし」
「ありがとうカナちゃん」
と、話しつつも僕らは食事を終えた。その後少し休んで会計を済ませてカナちゃんと共に店を後にしたその時だった。外でごろつきが3人ほど恐らく旅の人であろう見慣れない衣服を着た女の人に因縁をつけてきた。
「テメエ、俺たちに絡むとはいい度胸だ!」
「おいおい、先に絡んできたのはお前さん達の方だろ」
「うるせぇ!」
ごろつき達はナイフを持って女の人に襲い掛かる。だが女の人は華麗な身のこなしでごろつき達の攻撃をひらりと流しつつも素手で次々と返り討ちする。そして最後の1人に対しては懐から隠していた扇子の様な物を取り出して投げつけた。するとごろつきの1人の頭が刈り取られ軽い禿頭にされてしまった。
「くそぅ、覚えてやがれ!」
そう言って先ほどのごろつき達は一目散に逃げ出して行った。
「やれやれ、まさか"こっち"に着いてそうそうあんなのに因縁をつけられるとは………」
そして女の人もその場を去って行った。あの身のこなし方といい実力といいあの人は只者ではないと僕は直感した。
そしてもうひとつ不思議な事があった。腰にかけている大地の
図書館にて名称絡みの本を読んで調べては見たもののギルド名の案は結局思いつかず、結局この日はすぐに図書館から撤収した。
それから翌日。僕とカナちゃんは頼まれた用事があるのでルミナさんの家兼お店に行っていた。店と言っても何でも屋がメインなので軽く占い屋の内装を模様してる箇所があるぐらいで店内はざくばらんとしていた。僕とカナちゃんは何を頼まれたのかと言うと案の定という家の中の掃除であった。幸いな事にお駄賃は払うとの事と思った以上には汚くはなかったのですぐに済んだから良しとするかなと。
「いや〜2人とも手伝ってくれてありがとねー。はい、これ手間賃ね」
「ありがとうございます」
「なに、家の掃除手伝ってくれたんだしこれぐらいはしてあげないと……ま、大人の嗜みって奴よ」
「それじゃあ私とナオさんはこの辺で失礼し………」
ガサっ、と家の外で何かが倒れる音がした。何があったんだと外を出てみるとそこに人が倒れていた。
「ナオさん、この人は確か……」
「………うん、間違いなく昨日見た"あの人"だ」
そう、目の前に倒れてる人こそ昨日、ごろつき達をあっさり返り討ちにしたあの女の人だった。見た所空腹で倒れたみたいだった。
「な、何か……食べ……物を…………」
このまま放って置くわけにはいかないのでひとまずこの人を保護して手近の飯屋に連れて行く事にした。
それから割とすぐにちょうど開店してた飯屋に入り女の人……改めてお姉さんに食事を与えた。お姉さんの方はどうやら昨日の昼以降ずっと飲まず食わずだったみたいで出された食べ物にはガッツリと豪快に食いついていた。
「いや、すまない。この恩は必ず返す………」
「別に構いませんよ。それよりもお姉さん、この辺りでは見ない身なりしてるけど旅の人ですか?」
お姉さんは一旦食事を止め、箸をテーブルに置いた。
「自己紹介がまだだったね、私はツキカゲ・ミサト。こから遥か遠いシノノメの国から遠路遥々このマルフィスにやって来た旅の素浪人さ」
「すろうにん?」
初めて聞く単語が出て来たので僕はちょっと?となった。
「まぁ、この国で言えば流れの旅の剣士と言ったところになるのかな」
「そうなんですか、僕はナオ・クレイフといいます」
「私はカナ・ムラセフです」
「あたしはルミナ・フェリムよ」
ひと通り自己紹介が終わったところでミサトさんがここ、マルフィス王国まで来たのかを話し始めた。
「でも、国外から来るなんてよくそんなお金ありましたね」
「あぁ、向こうに来る前にちょい一儲けしてね……それでここまで来れたけども昨日の昼飯代で使い果たしてご覧の通りって訳さ」
「それで行くアテはあるんですか?」
と、カナちゃんがミサトさんに聞いてくる。
「それは適当になんとかなるさ、それが自由気ままな旅暮らしのいいところよ」
この人、凄く余裕に構えてるなと僕は思った。これもある種の大人の風格なのかなと。そいえば爺ちゃんこんな気風な時もあったなーと言っても爺ちゃんの場合は何だかんだで婆ちゃんがいたからまた違うだろうなと
それからご飯を食べ終わったミサトさんも一緒に飯屋を出た。お代はルミナさんが立て替えてくれた。
「それじゃあミサトさんはこれからどちらに?」
「それは風の向くまま………と、言いたいところだけど後ろにいるのは分かってるから出て来な」
そう言ってミサトさんは後ろを振り向く僕らもそっちに向くと昨日、ミサトさんに返り討ちにあったごろつき達が姿を現した。しかし昨日とは何か様子が違っている。
「昨日の仕返しに来たとしちゃあ様子がおかしいがさては何かあった……」
ミサトさんがゆっくりとごろつき達の方へと向かうとする。そしたらごろつき達の方がナイフを取り出しミサトさんに強襲を掛けた。ミサトさんは即座に刀でごろつきの攻撃を斬り払った。
「なる程………昨日の時より腕が上がった……というよりこの感じは誰かに力を与えてもらったな」
ミサトさんは刀を構える。
「だけどそれで私を倒せると思ったら大間違いだよ!」
そして瞬く間にごろつき達を返り討ちにした。
「ミサトさん!」
「安心しな、峰打ちだから命に別状はない。しかし誰がこいつらをこんな目に……」
瞬く間に起きた事なのでさっきは気づかなかったが確かにこのごろつき達には以前、ユーフェス村や王都を襲った魔物同様に"濁り"が感じられた。
もしやこの人達もあの仮面の男達の仲間に操られたのかもしれない………そう考えたその時だ。
バッ!バッ!
「な、何よコイツら!?」
「みんな、気をつけろ!」
突如、何処からともなく黒装束の集団が現れ僕らに襲い掛かる。ミサトさんは刀を構え直し
「みんなは下がって!こいつらの相手は私に任せな!」
「でもこの数が相手じゃあ………」
「なぁに、こっちにはまだまだ手は残ってる」
ミサトさんはもう一本の刀を抜いた。そしてその刀から昨日と同様に大地の
「この
ミサトさんは自ら敵の方に向かい襲ってくる相手を一人、また一人と斬っていく。そして斬られた黒装束は倒れてから灰の様になって消滅する。
一方で僕らの方にも黒装束は襲い掛かってくるがルミナさんが何処からともなく杖を取り出し防御魔法で何とか対処してくれている。
「街中じゃなきゃ攻撃魔法でこんな奴らチョチョイのちょいで倒せるのに〜〜」
ルミナさんは得意の魔法が使用できないみたいでちょっと悔しそうである。
「じゃあ、僕に任せて下さい!」
僕は魔封に笛を取り出し召喚の体制に入る。
「現れよ、
魔法陣が現れ、中からカゲマルが出てくる。
「カゲマル!」
「こいつらを倒せばいいんだな?任せろ!」
「うん、それとカナちゃんとルミナさんの事も頼んだよ!」
「応っ!」
僕はカゲマルに2人を守るのを託し、大地の
そして何とかミサトさんの方に駆けつける事ができた。
「ミサトさん!」
「ナオか!」
僕とミサトさんは互いに背中を預ける。そして僕の持っている大地の
「ーーー?ナオ、その剣は………」
「多分、ミサトさんの持っているその
「ああ、わかってる!」
直後に襲ってきた相手をミサトさんは一瞬で斬り倒す。
僕も実力ではミサトさんに及ばないものの敵を倒していった。
「これで最後!」
僕とミサトさん。そして召喚したカゲマルの活躍によって何とか襲ってきた黒装束の集団を倒す事ができた。しかし相手は全員倒したら灰になって消滅したため正体はわからなかったがシャルから念話での連絡があったので灰の一部は持ち帰る事にした。
「ありがとね、カゲマル」
「何、力が欲しい時はいつでも呼んでくれて構わねえよ」
そう言ってカゲマルは送還された。さて、これからが問題である。何故なら人の通る所でのどんちゃん騒ぎを起こしたからである。
「ナオさん、私は父にこの事を連絡します」
「うん、お願いするね」
騎士団への応対はひとまずカナちゃんに任せて僕らはこの場から去り調べ事もあるので家に戻る事にした。
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