第47話不思議なめぐりあわせ

47,不思議なめぐりあわせ


ある日、不思議な事があった。


商売をしている店の前を近所の顔見知りの会社の社長が


ゴールデンを引いて横切った。


首輪代わりに普通の縄を首に巻いていたのでどうしたのか声を掛けてみる


と迷子だというので預かることにした。


姿かたちの立派な犬だった。


とりあえずその犬を連れて駅前の交番に届けてから車に乗せて


自宅へ連れて帰る事にした。


丁度ランチが終わって休憩時間だったので。


飼い主が見つからなかったらこのまま飼ってもいいと思っていた。


おとなしい犬で嫌がりもせずに引っ張ることもなく付いてくる。


まるで10年も飼っていたかのようであった。


車に乗ってもキョロキョロするわけでもなく後部座席にどっかりと落ち着いて座っている。


どこへ連れていかれるのだろうかと心配する素振りもない。


バックミラーに映るこの犬の顔、どこか懐かしい顔をしている。


うちの犬だろうか。


モモ子の父親犬を産んだレモンという雌の兄弟や姉妹がこの街に住んでいる。


その子たちなら10歳ぐらいになっているはずなのでその子か孫だろうか。


いま、後ろに座っている犬はどう見ても7,8歳ぐらいに見える。


それにしてもいままで飼ったゴールデンの血筋に違いないと思わせるほど似ている。


自宅に着いてモモ子に会わせる。


この雄犬、モモ子と対面した時少し腰が引けている感じがしたがすぐに仲良くなった。


警戒する様子も、無関心もない。


ずっとこの家で飼われていたかのような堂々とした態度に少し驚く。


狭い我が家で2時間ほど過ごしたが仲が良かった。


夕方、犬を連れて店に戻るとすぐに飼い主だという家族が現れた。


話を聞くと脱走癖のある犬だという。


そして、またまたよく話を聞いてみるとなんとモモ子と兄弟だという。


こういう偶然があるものであろうか。


モモ子の兄弟犬が近くに住んでいる事すら知らなかったのに


何という引き合わせか。


顔をみた時にどこか懐かしく感じた事に納得がいったが


私とこの犬は初対面のはずである。


なのにあのずっと前から知り合っていたような犬の態度はなんだったのだろうか。


あまりにくつろぎ過ぎである。


世の中狭いとはいえこんな偶然があるのである。


モモ子は7,8年ぶりに兄弟に会ったことになる。


すぐに分かったのであろうか。


特別臭いを嗅ぎあう素振りもなかったが・・


それにしてもあの顔は一番最初に飼ったゴールデンの雄にそっくりだったと後から気が付いた。






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