第8話家の中に入りたがる猫
8,家に入りたがる猫
翌日、モモ子の散歩の後に犬小屋を覗いてみると
餌はなくなっているので食べたらしい。
おしっこもウンチもしている。
外はまだ雪が残っている。
どうしようかと思ったが長い時間、閉じ込めておくのも可愛そうなので扉を開けてみた。
そっと出てくる。
私が家の中に入ろうとするとそのまま続いて入ろうとする。
「駄目よ」
と声をかけて抱き上げて庭の方に放すがすぐに戻って来て
中に入ろうとドアの中を覗いている。
モモ子が玄関の上り段の上にいて猫の方を狙っていても、
猫の方は平気らしく怖がる素振りもない。
もしかしたら犬と一緒に飼われていたのかもしれない。
あるいは天性のものなのだろうか。
恐いもの知らずのお嬢様育ちとでも言うべきか。
この日から猫は私の姿を見ると自分から駆け寄ってくるようになった。
私は飲食店の仕事をしている関係で一日に二回家に戻って来る。
その時間を知っているかのように猫が待っているようになった。
たいがいは縁の下に居たが時には玄関の陽だまりにいたり、
あるいは隣の家や裏の家の方から出てきたりした。
すっかり私の車のエンジンの音を聞き分けるようになったのだろう。
少し前までは私が車で戻るとインコの桃太郎が「ピー」と大きな声で鳴いて
お帰りの挨拶をしてくれたものだった。
今は年老いて耳が遠くなったのかあまり鳴かなくなった。
止まり木にも止まっていられなくなったのか時々、下に落ちている。
「オハヨウ、モモタロウサンコンニチワ」などの言葉も忘れたかのように言わなくなった。
今はその年老いた桃太郎の代わりに猫が私の帰りを待っていてくれるようになった。
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